神戸ポートピアにある医療産業都市を視察する機会に恵まれました。この都市構想のグランドデザインをされた先端医療振興財団の井村裕夫理事長は京都大学の総長を務められた医学博士ですが、私が参議院議員当時、井村先生は日本の科学技術政策の指令塔である「総合科学技術会議」の常勤議員でおられたので、大変ご指導を頂きました。


 日本の科学技術は、生み出された研究成果(シーズ)を実用・産業化に的確かつ迅速につなげてゆく「一貫した研究開発体制」の整備に関し他の先進各国の後塵を廃しています。一方、お隣の韓国などは、北東アジアの知的産業ハブを目指し研究開発シーズをイノベーションにつなげるための産学研クラスターを大邱などに大規模に整備し、自国のみならず世界各国からの優秀なシーズを呼び込みイノベーションを生み出しています。


 一貫した研究開発体制の整備、橋渡し機能の強化、産学研クラスター構築は、日本の成長戦略にとって不可欠な喫緊の課題ですが、日本は省庁の縦割りや国際的競争意識の欠如から、体制整備の重要性への認識は大変低いのが現状です。


 そうした中で、神戸医療産業都市には、医科学研究のシーズをイノベーションにつなげるための一貫した体制が整備され、様々な研究機関や大学、企業が集い交流することのできるクラスター機能が実現されており深い感銘を受けました。

 医療関係施設の後、同都市の計算科学研究機構でスーパーコンピュータ「京」も視察させていただきました。864台のコンピュータが整然と並び静かに演算を行っている様は神々しくもありました。

 「京」は演算スピードでは現在世界第4位ではありますが、実行性能や使いやすさ、故障の少なさなどを総合した実行効率では依然として世界一の機能を有しており、あらゆる分野のシミュレーションに高い成果を上げ、人類の科学技術の進歩に日夜貢献しています。既に世界一奪還を目指し、「京」の100倍の演算能力を持つ後継機の開発もスタートしています。


 医療やスパコンに限らず、あらゆる分野で国際競争をもっと強く意識し、各省や各地方自治体へのバラマキではない、国家戦略的な見地からの政策の実現こそ、アベノミクス成長戦略の要です。それを実行できない限り、日本の未来はないと改めて痛感した視察でありました。