「横浜市の奇跡」-全国自治体の中でも最多の待機児童を抱えていた横浜市が、ほぼ3年という短期間で待機児童ゼロを達成しました。
その背景には、「規制緩和」を徹底して行い民間活力を積極的に導入したという事実があります。
安倍首相は、女性の活躍を成長戦略の中核と位置付け、今年度から2年間で20万人、5年間で40万人を保育する環境を整えて待機児童解消を目指すと明言していますが、横浜市が行ったような、独自認証を含めた認可外の活用や民間業者の参入を認める方向へ動いているかと言えば、そうした動きはきわめて鈍いようです。
政府は4月に、待機児童の解消策を検討する「子ども・子育て会議」をスタートさせましたが、そのメンバーは保護者の代表、認可保育所、自治体の関係者のみで、民間の保育業者は選ばれていませんでした。業者保育の最大手企業であるJPホールディングスの山口洋社長によると「民間企業には声がかからなかった」そうです。
田村憲久厚労相も「認可のほうが自治体もお得」と認可外の活用や民間業者の参入には後ろ向きな発言をされています。確かに、認可保育所は国から運営費の補助が手厚いので保育料は安く済みます。たとえば、都が独自で基準をつくった認証保育所ですと月10万円のところ、認可ならば月5万円で済みます。
しかし、そうした補助金や施設建設費用をすべて国費で賄えるほどの財政的余裕が今の日本にあるのでしょうか。現在、日本の財政状況は先進国中最悪で、国および地方の長期債務残高は約950兆円、財政収支の対GDP(国内総生産)比はマイナス9.0%とOECD加盟国34か国中33位(最下位はスペイン)という危機的状況です。
にもかかわらず国は認可外を認めず、子ども一人当たりの保育士の数や面積、定員などといった認可基準を緩めようともしません。北海道でも東京でも、認可基準は同じ床面積を要求される、これではいつまで経っても保育施設は増えません。
こうしている間にも、子どもを預けることが叶わず、泣く泣く職場を去る女性が増え続けています。同時に、子どもが預けられないのなら出産は諦めようという女性も増え続けているのです。
「既得権益」守って国滅ぶ-そんな従来型政治との訣別、そこからの脱却を現政権が目指すというなら、保育をめぐる規制緩和こそ、安倍首相の本気度をはかる試金石と言えます。