ヴァイキングの宴といって思い浮かんでくる、酒を大胆にこぼしながら高々と角の杯を掲げる場面。
 
角杯(カクハイ)、ホーンカップとも呼ばれ、1000年前から現代までヴァイキングに愛されてきた本物の角の杯ドリンキングホーン。私自身、マイホーンにはとても愛着があります。
 
漫画や映画やゲームでたびたび見かけるヴァイキングを象徴する杯。実際にはどのように使われていたのでしょうか。
 
 
 
【角杯を飲み干したヨムスヴァイキング】
1000年前に実在したとされる、戦士集団ヨムスヴァイキング。オーラヴ・トリュグヴァソンのサガに記された彼らの記述に、角杯が登場します。
 
デンマーク王との合同葬儀の大宴会。ヨムスヴァイキング達には、1番大きな角杯に1番強い酒がなみなみと注がれたそうです。亡き人を偲ぶ追憶の杯として、彼らは高らかな誓いと共に何度も角杯を飲み干しました。

戦士たちが角杯を掲げる姿、誰かが誓うたびに湧き上がる歓声が目に浮かびます。私たちの期待通りの使われ方がなされていたようです。

宴の様子は、こちらにより詳しく書いています。
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【供儀祭で捧げられる角杯】
ハーコン善王のサガでは、ノルウェーで行われた供儀祭で角杯が使われた記述があります。
 
供儀祭ではあらゆる種類の家畜と馬が屠殺され、宴会の食事として大鍋で煮られました。その宴において、オーディンに角杯を捧げたと記されています。

オーディンの杯、ニョルドとフレイの杯、ブラギの杯、と乾杯するのが習わしだったようなので、同様に角杯を捧げたのだと思われます。
 
写真は、2019年にオールドアロウで開催したユールの宴の様子です。
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【知恵の泉の水を飲む角杯】
ヴァイキングが信じていた北欧神話の中にも、ドリンキングホーンは登場します。
 
ミーミルという巨人は、飲むとかしこくなれる知恵の泉を守っています。彼は毎日そこから角杯ギャラルホルンですくって水を飲んでいるので、オーディンも頼りにするほどの知恵者でした。
 
少し不思議に思うのは、ギャラルホルンは神話の別の場面では、角杯ではなく敵襲を伝える角笛(ツノブエ)として登場することです。角笛は穴があいているのでそのままでは飲むことはできません。もしかすると、実際にも角笛の穴をふさいで角杯代わりにすることもあったのかもしれません。
 
 
 
【戦乙女ワルキュリエと角杯】
伝説上の英雄シグルド(ジークフリード)と戦乙女ワルキュリエのやり取りにも、ドリンキングホーンの記述を見つけました。
ワルキュリエとは、オーディンに仕え戦死したヴァイキングを迎えに来る存在。ワルキュリエは1人ではなく、大勢いるとされています。
 
ワルキュリエのひとりシグドリファにかけられた眠りの呪いを、シグルドが解いて起こした時の話。
シグドリファは蜂蜜酒の満ちた角杯をシグルドに渡し、勝利と雄弁、知恵と医療の心得を得られるよう、祝福しました。
 
また、角杯を潔め飲み物の中にニラを投げ入れれば、蜂蜜酒に災いが混ぜられることはないと教えてくれます。災いとは毒のことでしょうか。興味深い風習です。
 
画像は、スウェーデンの出土品を私が再現して作りました。角杯を持った戦乙女ワルキュリエではないかと考えられています。
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ヴァイキングの乾杯のかけ声は「スコール」。
乾杯を意味する言葉で、デンマーク語・スウェーデン語・ノルウェー語では「Skål」、アイスランド語では「Skál」と綴ります。椀や器という意味の名詞が由来のようです。

低く長く伸ばすのがヴァイキング流です。北欧の乾杯をぜひヴァイキングスタイルで。
「スコォォーーーーーール!!」

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ドリンキングホーンは、天然素材ならではのそれぞれ違った個性があり、長持ちして格別の愛着が湧くものです。私自身も20年使い続けているドリンキングホーンがあります。

私たちのヴァイキングマーケットでは、どんな模様でどんな形なのか、1本ずつ画像を掲載し、大切な1本をしっかりお選びいただけるように心がけて販売しています。
良い1本と巡り会っていただけたら嬉しいです。