~岩明 均のマンガは寄生獣もよいけど歴史モノも面白いっ!~ | 自炊・電子書籍化応援ブログ

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 最近、テレビアニメに実写映画にと『寄生獣』が何かと話題になっていましたが、原作者(マンガ家)の岩明 均(いわあき ひとし)さんの作品の中には、もっと評価されたり話題になってもいい作品があるんですよー\(゜□゜)/

ところで作者の岩明 均(本名:岩城 均)さんとは……
1960年生まれの55歳(僕と同じ歳だぁ~
)、彼が漫画家になったのは講談社が漫画家を目指す人たちのために設けた公募企画【ちばてつや賞】に応募作品「ゴミの海」が入選したことがキッカケだったようです。

…彼は絵に携わる仕事を嘱望していたこともあり、デビューを果たしたことで本人も「漫画で食えるんじゃ~…?」と思い、そのまま漫画家生活に入ったそうです(…僕なんかは漫画で食えると思ったこと自体、この人凄いと思った!)。

彼の作品は人間学といってもいいほどに人の心理状態がどのような行動や言葉に結びついていくのかを描いています。その表現は現代ドラマでも時代モノでもSFでも貫かれており、加えて彼が描く独特の無機質感を漂わせるキャラクター達(登場人物達)が、これらの要素とピタリ合致し読み手を彼の世界観に引きずり込んでしまうのです。特段強烈な絵柄や画法ではありませんが、読後記憶にしっかりと定着してしまう辺りが岩明 均氏の才能なのでは…と感じます。

ところで彼は作品制作の進度が遅いらしく、人気作家にも関わらずデビューから30年経つも作品数は10作に届いていません(巻数はそこそこある)。しかしどの作品も完成度は非常に高く、彼の作品制作がいかに綿密な下準備(資料研究から脚本・設定など…)の基になされているかを伺い知ると言うものです。

そんな彼の短編本に『雪の峠・剣の舞』というモノがあります。
…ここでやっとブログの本題に辿り着いた訳なのですが………この短編本には表題が示す通り2作品が収録されているのですが、そこで内容を少し掻い摘んでお話したいと思います

『雪の峠』

戦国末期、常陸国(現在の茨木県の大部分と福島県の一部)を治めていた大名・佐竹氏は当主:義宣の一存で関ヶ原の合戦を西軍に組して戦かう。しかし結果は徳川家康率いる東軍勝利に終わり、西軍の佐竹氏は出羽国(現在の山形県にほぼ相当)に転封される。転封早々まず居城築城に取り組んだ義宣は腹心で近習頭の渋江内膳に諸事一切をまかせる。…しかし関ヶ原での東軍参加を唱えていた古参の家老達は、義宣の西軍参加による失策に遺恨を抱き続け、また新たな人材として頭角を現し始めていた渋江達一派の失脚も目論み、渋江築城案の選定地・窪田に対し対抗案として金沢の地を提案!、こうして築城の主導権争いから当主:佐竹義宣と腹心:渋江内膳たちの改革派と譜代の重臣:川井伊勢守を筆頭とした旧勢力派の内紛が勃発する。…やがて築城争いが義宣・渋江派に軍配が上がると、渋江の功績を高く評価した義宣は、彼を家老に抜擢しようとする。これには川井達重臣達も怒り心頭し、ついに渋江たちを暗殺しようとする(一説には義宣暗殺も計画されていたらしい)、しかし計画は事前に漏れ川井一派は粛清される。この事件は史実にある「川井事件」であるが、関ヶ原敗戦後の佐竹藩(?)の新たな体制作りを渋江内膳という人物の目を通して人間味溢れる物語としてガッチリ作り込んでいるところに、岩明氏の異才を感じずにはいられない!。短編ではあるが紛れもない岩明作品の傑作の1つである。

『剣の舞』
戦国の最中、ある農家の娘・ハルナは戦のどさくさに紛れ民家を襲う武士たちに凌辱された上、家族を皆殺しされる。…しかしハルナは武士の隙をつき彼らが持っていた碁石金を盗み逃走!、やがて彼女は箕輪城落城と共に放浪の身となっていた元・長野家家臣で当代随一と呼ばれる剣豪・上泉伊勢守秀綱を探し当て弟子入りを懇願する。…ハルナを気に入った秀綱は、一番弟子の疋田文五朗に彼女を任せる。あまり気乗りしない文五朗ではあったが、師匠の命に逆らう訳にもいかず秀綱が考案した撓(竹刀のこと)を使いハルナに稽古をつける。…こうして文五朗がハルナに稽古をつけている最中にも、柳生新左衛門宗厳(後の柳生新陰流の創始者・柳生石舟斎)が秀綱に試合を挑み完膚なきまでに叩きのめされ彼の門弟となる出来事や、槍で有名な宝蔵院の胤栄が新陰流と新当流の試合立会人として登場したりと……。そしてこれらの話しは文献に記載されている史実であり、また上泉伊勢守秀綱と門弟・疋田文五朗の強さと優しさは、まさに理想を具現化した姿でもあり、おそらくその人となりもかなり史実に近いものだったのではと思われる。……ところで、ハルナはどうなったかと言うと、局地戦が行われている戦場に自分を凌辱し家族を皆殺しにした武士たちがいることを知り、文五朗の静止も聞かずに仇打ちに向かう。…そして見事仇を討ち果たすのだが、結局相討ちとなり命を散らすのである。この物語の大半は本当にあったことであるが、唯一ハルナの物語だけは完全なフィクションである。しかし秀綱や文五朗の生きざまを知るにつけ、ハルナが存在していてもおかしくない錯覚を覚えるほどに、岩明氏が細部のストーリー構築に拘っていることが伺える。一般的にはコアなファンにしか知られていない作品だが、彼・岩明均氏の最も優れた一篇がこの「剣の舞」ではないだろうか。

岩明 均氏と言えば『寄生獣』がとにかく有名ですし、実際アニメ化や映画化されるずっと以前から、マンガを読む人なら誰でも名前ぐらいは聞いたことがある作品でした。…また一般的にもかなりの人気を博していました。それゆえ現在連載が続いているアレクサンドロス大王(よくアレクサンダー大王と呼称される)の書記官:エウメネスの生涯を描いた作品『ヒストリエ』や、古代ローマの史実を基にシチリア島の城塞都市シラクサが陥落する前後に焦点を当てて描かれた『ヘウレーカ(アルキメデスが原理を発見した際発した言葉)「見つけたぞ!」という意味』などの素晴らしい作品があるのに以外と知られていないのですよねぇ~

今回は日本の戦国時代を描いた岩明・時代劇マンガ『雪の峠・剣の舞』を紹介させて頂きましたが、機会があれば同じ岩明作品の西洋・古代史マンガ『ヘウレーカ』や『ヒストリエ』についても熱く語りたいなぁー!、と思っています。

岩明 均作品…それは『寄生獣』だけに‘あらず’…と言うことをダメ押しとして本日は終了致しまするぅぅ~~~~
(最後まで読んで下さった方、本当にありがとうございました<(_ _)>