~沢島忠と【暴れん坊兄弟】~ | 自炊・電子書籍化応援ブログ

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 僕が生まれた年、1960年(昭和35年)は映画産業が下降をたどり始めた頃でした。1958年の観客動員数11億以上を頂点にそのわずか5年後の1963年には、5億人という半分以下にまで落ち込んでいたのです……その最大の要因はテレビの普及でした。

1958年にテレビ中継された{皇太子御結婚}を期にテレビは一般家庭に普及し始め、1964年の{東京オリンピック}中継では加速的にテレビはお茶の間に広がっていきました。
日本の映画産業はこのテレビ普及率に伴い下降し続け、今日でも回復傾向にはありません。

そんな映画産業の第二期黄金時代の残照の中で制作された1本が今日ご紹介させて頂く作品です。
山本周五郎氏の「思い違い物語」を原作に、鷹沢和善氏が脚色を手掛け沢島忠氏が監督を務めた僕の中での傑作時代劇、その名も「暴れん坊兄弟」です

【暴れん坊兄弟・あらすじ】
ある藩にのんびりやで超おっとりとした性格の兄:泰助と、おっちょこちょいで粗忽者の弟:泰三が藩士として江戸詰め勤務をしておりました。兄の泰助は藩主の松平長門守に大変気に入られており、藩主が参勤交代を終えお国入りをするための準備を申しつかります。泰助はのほほ~んとした足取りでお国に戻りますが、お国では殿様不在をいいことに家老達が藩の財政を食いもんにしていたのです(いわゆる公金横領ですねー)。泰助はやがてこの汚職を知り弟の泰三と共に悪家老一派と対決することとなるのですが………

物語は単純にして明快な筋立てなのですが、キャラクターの性格付けが相当に誇張されていて、それが笑えること、笑えること

また演出も抜群で、1960年(昭和35年)当時としては斬新な始まり方!…なんと弟の泰三がスクリーンの向こう側にいる観客に向かって自分のことや兄:泰助のことを説明し出すのです。
今日ならこんな演出、幾らでも見たことあるでしょうが、今から半世紀以上前にこんな手法を使った沢島忠氏には驚くばかりです。

とにもかくにも兄の気楽さ・のんびりさと弟のせっかちさ・粗忽さのギャップがオーバー過ぎるほどオーバーに描かれているのが面白過ぎて、たぶん現代でも十分通用するユーモアとエスプリだと思います。
もちろん話しの柱となっている悪家老一派の退治と兄弟の恋話もありスカット・ワクワク場面もジ~ンとくる場面もしっかり構成されている完全無欠のエンターティエメント時代劇と言っても過言ではないでしょう

僕はこの映画を京都で行われた映画祭で実際にスクリーンで見たのですが、その時ゲストとして沢島忠氏が来られ当時のことを壇上で語っておられたことがとても印象深かったです。

この映画は残念ながらDVD化されていないようで、僕もVHSビデオでしか持っていません。
昨今はテレビや映画でもそれほど時代劇が頻繁に制作されることもなくなったのですが……それならば、せめて東映の時代劇黄金時代の作品をDVDしてくれないかなぁ~と僕などは常々思っているのです