昨日(28日)のアメリカ大統領選の(バイデン対トランプの)討論会を見ていた。

CNNの生中継で見ていたのだが、あれはボクシングの試合であるとすれば、バイデンは完全にノックアウトされていただろう。

 

(01)バイデンのヨレヨレのシーン

(02)同上

 

その後の様子を見ると、日本のメディアでは、『上品ぶる』あるいは『欧米流の表面的な礼儀作法』に影響されたのか、バイデンの最悪の瞬間を強調する記事などは(比較的)少ないようである。

 

もしかしたら、あの瞬間に下手にクローズアップされると、『日本の安全保障』に関して国民が不安を抱くとまずいという配慮なども、どこかで働いて、大手メディアは『国民に不安を与えかねない写真』はあまり載せないようにしようといった、『裏の協定』というか『申し合わせか何か』をしているのだろうか、という気すらしてしまう。

 

しかし、アメリカではそんなことは言っていられない(そんな余裕はない)ようだ。

『NYタイムズ』など、日ごろ、『リベラル』とか『民主党寄り』あるいは『反トランプ』で知られているメディアが幾つも、『バイデンは、選挙戦から撤退を』と主張しているようである。

(ネットでは、そのような報道を見かけたが、本日の『紙の新聞』を幾つか購入すると、『デジタルとの時差』のせいもあってか、そこまでの報道はほとんどされていなかった。)

(03)

 

そこでネットで探すと、このようなものがあった。

NYタイムズは、『今のバイデン氏にできる最高の公共の奉仕は、再選に向けた選挙戦を継続しない意向を表明することだ』と述べているという。

 

いかにも、高級紙?らしい上品な表現のようにも見える。

おそらく、ネットメディアの論調はもっとストレートだろう。

 

(04)

ただし、その後のバイデン氏の姿はというと、ノース・カロライナ州の予備選に向けてのキャンペーンにそのまま乗っかって、民主党陣営の集会で、『約束する。この仕事ができると心底信じていなければ、再出馬していなかっただろう』と演説したという。

 

『はっきり言って、私は若者ではない』(これは、笑いを引き出すために言ったのであろう。)

『昔のように上手には歩けない。昔のようにうまくは討論できない。』『しかし私には、…善悪の区別がわかっている。そしてこの仕事のやり方をわかっている』と述べたという。

 

しかし、こんなことを『失敗した試験の翌日』にいいわけとして述べる『老人の受験生?』を信用することはできない。

 

仮に全くの身内向けの集会であって、また、現に予備選を戦っている以上、『戦いを放棄することはできない』という事情があったにせよ、あまりにも『哀しい言い訳』に聞こえてしまう。

 

(05)

 

そもそも、昨日の討論の模様を全米で視聴していた数字は、前回の討論会の数字よりも、何割か少ない数字だったとどこかに書かれていた。

(ただし、その数字、どこに出ていたのか、忘れてしまったので、詳細は再現できない。)

 

視聴者は、ハナから、『面白い勝負になりそうもない』と見込んで関心すら低かった模様である。それはトランプのほうが、優勢であるとの世論調査の数字が幾つも出回り、さらに、『バイデンもトランプのどちらも嫌い』という層の存在の浮上、そして、イスラエルとガザの情勢や、アメリカ国内の大学での『イスラエルに傾斜しすぎた資金の受け入れ』に対する学生たちの反発に対して、(トランプもバイデンもどちらも)『弾圧』『排除』を支持していることから、どちらもイスラエル寄りすぎて、そこに『差はない』といった認識が広がりつつあるためだろう。、

 

ある意味では、アメリカ大統領選に対する『あきらめ』(どうせ、トランプが勝つであろう、バイデンとトランプにどれだけの差があるのだろうかといった気分)が広がっているように思える。

 

そういう状況で、昨日のように(ボクシングでいうと)『一方的に殴られ続ける』状態だったのだから、このままバイデン氏が民主党の候補のままで選挙戦に突入すれば、『トランプ圧勝』という結果に終わるのが眼に見えている。

 

しかし、仮に、バイデン陣営が腹をくくって、『選挙戦からの撤退』『もっと、若くてまともな勝負の出来そうな候補』との交代を決めれば、情勢は逆転する可能性もある。

 

実際、共和党のなかにも、共和党がますます『トランプ党』に化していくことに対する不満や不安があるはずである。

 

さりとて、『民主党や共和党以外の候補を』という気分があったとしても、『第三の候補』として最も名前が売れているロバート・ケネディ・ジュニア氏(ケネディ元大統領のおいにあたるというが、69歳である)の存在がある。

 

しかも、第三党の候補として投票用紙に名前を載せてもらうためには、高いハードルが存在している。おまけに、彼は、ある種の『陰謀論』者で『移民問題』についての対応の考え方は、トランプに近いともされている。何を考えているのか、よくわからない人物でもある。

 

こうしたなかでは、私は、『反トランプ』の立場からの(ほとんど)唯一の解決策というのは、『民主党の候補からバイデン氏を、よりマシで若い候補者に差し替える』ことではないかと思う。

 

たしかに、いろいろ、事情があって、(これまでバイデン氏に投票するということを想定して、各州で、民主党支持の『大統領選挙の投票人候補』が選出されてきたのだと思う)州のレベルから積み上げる形で、大統領選挙戦が戦われているアメリカの選挙制度において、『前代未聞』の形になってしまう可能性がある。

(あるいは、合衆国憲法とか各州の憲法などに触れないかどうかの検討も必要であろう。)

 

しかし、それこそ『高齢のため』大統領討論会においても、まともに機能することのできない人物が、あと4年間、ストレスが多く、高度な判断能力が問われる『アメリカ大統領職』という激務を、きちんとこなせるかどうか?、そのことについて『疑問の余地』が出てきた以上、民主党として、バイデン氏をこれまでの『延長線上』で党大会において、『民主党の正式な大統領候補』として選出するのは、大いに疑問が残る。

 

もし、そのようなことをしたら、恐らく、『民主党支持者』であっても大統領選をボイコットしてしまう有権者が多数出てくるであろう。

 

また、11月の本選挙において、『トランプ』が『バイデン』を打ち破る可能性はさらに高まっていくことであろう。

 

この『マイナスの連鎖』を逆転に持ち込むためには、あえて『バイデン降ろし』という荒業を行使せざるを得ないという気がする。

 

これまでのアメリカ大統領選の慣行からすると、『異例』『前代未聞』であろうけれど、そのようなことをしなければ、『トランプ』を打ち負かすことはできない。

 

逆に、このような状況に持ち込めば、次は『現在78歳、大統領任期終了時点で82歳』になっているはずの、トランプの『健康状態』『判断能力』『大統領としての資質の適格性』が問題とされるであろう。

 

今回の討論会においても、(たしかに)『力強く、しかも躊躇のない発言』であったかもしれないが、トランプ大統領の発言内容は、滅茶苦茶なものばかりである。

 

彼は、自分の気に入らない状況になれば、(部下に対して)『お前はクビだ』と叫び続けることしか能のない人物である。

 

『芸能人』としては優れていて、面白いかもしれないが、『世界の不安定さ』をプーチンや習近平、金正恩などとともに、深化させるだけであろうという可能性が非常に高いと感じる。

(彼は、『福音派』であると自称しているのかもしれないが、キリスト教徒で彼を嫌う人が多いのも事実である。『不倫口止め料支払いで業務記録の改ざん』を行った事件では、その陪審員裁判で、異例なことに(34件の罪状全てに関して)『有罪』とすることに関して、12人の陪審員たちの『全員の合意』による表決がたったの2日間で下された。

 

これは、陪審員たちのそれぞれの『政治的傾向』『宗教的傾向』を超えて、トランプが『有罪』とされたということになる。

 

たしかに、ニューヨーク州の地裁における裁判だが、このような結果が出たこと自体、『トランプに対する忌避感、不信感』が高まっている傾向と合致しているのだろう。

 

こうした動向を考えると、『アメリカ大統領選からのバイデン氏の名誉ある撤退』が成功すれば、今度は、トランプ氏に対する『疑惑・反発・不信・嫌悪』の感情に対して、トランプが向き合わなければならなくなるという公算が大である。

 

ここで、有権者たちの関心も一挙に高まり、大統領選は大いに熱気を取り戻すことだろう。

それでも、トランプが勝つか、負けるかは、予想の限りではないが、このような状況になれば、(9月に実施されるという)次の大統領候補の討論会も、大いに盛り上がることになるだろう。

(私自身の『希望』『期待』に沿うようなことばかり、書いてしまったが、仮にアメリカ大統領選において、『逆転現象』が起これば、それは世界各地の運動に対して、『良い影響を与える』可能性があるのではと感じる。

少なくとも、事態が『より面白い展開』になっていくことだけは、たしかだろう。)