現在、(国内だけを見ても)都知事選挙など、興味深い戦いが展開されている。

 

私は、蓮舫さんなど、小池百合子という『古だぬき』と『女同士の戦い』をさせて、『毒をもって毒を制す』という形にするには、なかなか面白い『相手』なのではないかとも思った。あいにく、(特にある年齢層の)男性の間には、(民主党政権に対する反発もあって)到底、『蓮舫など、受け入れたくない』という気持ちの人が多いようである。

(このままだと、小池百合子が『逃げ延び』そうな雰囲気も感じてしまう。)

 

今回は、昨日(19日)行われた、『党首討論』の感想を書いてみたい。

 

この党首討論、そもそものルールが、滅茶苦茶な土台のうえで実施されているので、『勝負』としては、ハナから面白くない。

全体で45分間しかないという建前(実際は、それを10分近く超過してしまったようだが)で、自民党の総裁(総理でもある)の岸田氏とそれと対峙する4野党(立民、維新、共産、国民民主)の4回の討論が成立しうると考える方が、どうかしている。

 

実際、各討論の持ち分の時間は、泉氏(立民)が26分、馬場氏(維新)が12分であり、多少は、討論らしきものをやることが出来たのは、この辺までが限度だっただろう。

田村氏(共産)は4分、玉木氏(国民民主)は3分しか持ち時間がなかった。

 

どうとりつくろっても、このような時間で議論など出来るはずもない(しかも、相手の岸田首相が、『良い討論』となるように心配りしていたならともかく、彼にはそんな『余裕』など微塵もないらしい)。

 

今回の討論を見て感じたのは、野党の足並みのばらつきぶりである。

特に立憲民主党など、自民党に対して『政権の明け渡し(政権交代)を迫る』という状況を演出したいようだが、普通に見て、たしかに、自民党はバラバラになりつつあって、またいわゆる『政治とカネ』の問題を巡る、国民のいらだちは相当なものになっていると思う。

 

しかし、他方では、それぞれの政党の力量や、各政党を支える陣形での熱量の高まり具合を見ると、『およそ、政権交代とは縁遠い』状態であることは、明らかだろう。

そういう状態なものだから、よけい、『有権者のいらだち』は高まっていくのだろう。

 

そして、この『各野党のバラバラ感』は、昨日の『党首討論』を見て、ますます感じられた。

 

一番、象徴的だったのは、『日本維新の会』の馬場共同代表の発言だった。

 

彼は、終始いらだった雰囲気を醸し出していたのだが、『なぜ、そうなったのか?』というと、(彼に言わせると)自民党が裏切った?せいで、『維新』だけが自民党に歩み寄り、挙句の果ては、『とりこまれてしまった』というようなイメージを、有権者に与えてしまった(維新内部からも、『これでは持たない』という反発が広がった?)せいなのだろう。

 

しかし、よくよく話を聞いてみると、『日本維新の会』は、将来的に、新たな『連立政権』の一角に参画したいようである。

 

そのきっかけともなればという『スケベ心』もあって、『政治資金規正法改正』の自民党相手の協議に、のこのこ出掛けてしまったところ、『今後、検討していきますよ』というペーパー(口約束)だけもらって、それで、衆議院段階では、(自民党主導の)『改正案』に賛成してしまった。

 

ところが、(おそらく、『維新』の支持者を含めて)評判が悪く、『何故、維新だけが、自民党の金権政治の延命に手助けをするのか』と総批判を浴びてしまったために、馬場代表としては、『困惑』してしまって、『自民党』特に岸田首相を糾弾しなければ、自分たちが持たない状態になってしまった、というところなのだろう。

 

その結果、(17日の)衆議院決算行政監視委員会のNHKの審議中継を見ていても感じたのだが、『維新』の藤田文武幹事長など、おおわらわの『言い訳』発言を繰り返していた。

(私は、この人の発言など、これまで聞いたことがなかったが、随分、小粒な人間にいつの間にか、この党の幹部が置き換わっていたのだなと感じた。)

 

そして興味深いのは、馬場氏は、(自分自身の『維新』内部における立場の危うさを糊塗するためなのだろう)一方では、自民党の議員たちに対して、悪罵を投げかけていた。

(あんたたち、岸田首相じゃもう持たないとわかっているんでしょう。裏では、『岸田おろし』をやっているじゃないか、『自民党は、ガバナンスがとれていない』などといった調子。)

 

さらに、返す刀で、『改憲を今すぐ発議すべきだ』『立民や共産は反対して、憲法調査会の議論をつめると、国会審議をすべて止めるなどといっているが、そんなのに屈する必要はない』などと、野党内部の亀裂をわざと暴露し、自民党内の改憲勢力に決起をせまるような刺激的な発言をしていた。

 

これらは、極めて興味深い発言ばかりだが、つきつめて言うと、『維新』という政党自体が、『ガバナンス』に欠けていて、バラバラな政党であることを吐露しているようにも聞こえた。

(おそらく、『維新』は関東で想像する以上に、関西、あるいは大阪圏で『壁』にぶつかっているのだろう。『関西万博』とか『IR推進』『大阪都構想』などの政策に対しても、住民に不信の感覚が広がっているのかもしれない。)

 

その他の少数政党についていうと、共産党の田村委員長は、時間が限られていることから、『選択的夫婦別姓制度』に論点をしぼって、『先日、経団連より、選択的夫婦別姓制度に対して、肯定的な見解が示されたことに対して、敬意を表したい』と共産党としては、異例とも思えるような切り口で、『なぜ、岸田首相は、反対にこだわるのか』と自民党の『時代にそぐわない?家族観を浮き彫りにしたい』というような思惑もあって、この問題に論点を絞り込んでいた。

 

しかし、そもそも時間が、ほとんどないし、岸田首相のほうは、『そうは言っても、おたくの政党は、男性の党幹部が、実質的に権限を握っていて、本当の意味の女性進出など実現できていないのじゃないの?』と口にしては言わないにしても、それが、透けて見えるような斬り返しをしていた。

(実際、質問には立たなかったものの、田村委員長の隣には、今年の共産党大会で新たに『議長』に就任した志位和夫氏が、いわば『オーナー』然として座っているのが、中継画面では映し出されていたのだから、岸田首相の反撃も、『全く効果がなかった』というわけでもないだろう。)

 

(もう一人の)少数政党・国民民主党の玉木代表は、『今、なすべきことは、潔く総理大臣の職を辞して、リーダーとしての責任をしっかりと果たすべきことではないか』と少し、含みのある発言をしていた。

 

これもやはり、『私は(立憲民主党のように?)既に水の中に落ちてしまった者をさらに叩くようなことはしたくない』などと思わせぶりの発言をしており、岸田氏の政治姿勢如何によっては、『今後、提携することもありうる?』というようなニュアンスを感じさせた。

 

 

これらを含めて考えると、今回の立憲民主党の泉代表の発言は、『野党の全体的な後押し』を得て、岸田内閣に対して『政権交代をせまる』というようなものとは、ほど遠かった。

(むしろ、『ひょっとして、今、ここで岸田首相に、解散でもされたら、まずいことになってしまう』という不安を感じさせるものでもあった。)

 

また、岸田首相からは、『御党は、政治資金パーティ禁止など、言っているが、実際には党幹部が政治資金パーティを実施や計画している例がいくつもあるではないか、それは矛盾しないのか』『美しい理想を述べることは結構だが、それでは、現実を前に進めて、問題を一つ一つ解決していることは出来ない』などと、立憲民主党自体の『内部の団結や統制の欠如』について揶揄されるような発言もしていた。

 

たしかに、岸田首相自身は、自身の政権の延命が難しくなっていることは認識しているのだろうが、『この人は、鈍感なだけあって、意外とくじけない』『妙な<しがみつき力>だけは持っている人なのだな』という印象も受けてしまった。

 

いずれにしても、どれだけ八方ふさがりの状態になったとしても、完全に『あきらめ』を見せることはない、さすがに、あまり『理念』とか『政策』に対するこだわりがないだけに、『あきらめの悪い人』なのだなと改めて感じた。

(これは、立民の泉代表の言っていたことでもあるのだが、『岸田首相というのは、たとえば外交交渉とか、首脳同士の会談の場では、どんなことを言っているのか、理念がないだけに、計り知れないところもあるな』という印象も受けた。

特に『アメリカとの関係』あるいは『原水爆の拡散禁止』などの問題で、全く公式発言からは遊離したことを言っている可能性もありそうな気もしている。)