本日(5月2日)の『東京新聞』を見ると1面の左側に、このような記事が掲載されていた。

 

 

ちなみに、右の面は、こういう記事だ。

 

通常、新聞の割り付けでは、(特に1面の場合)右のほうが『より重要度の高い』記事を掲載するのが普通ではなかったかと思う。

 

以前であれば、『東京新聞』はこの左右の記事を入れ替えていたことだろう。

 

『東京新聞』は、最近、『身近な話題』に対して『より大きく扱う』ということを通して、『できるだけローカル紙、地元紙として購読を継続してもらう』といった『生き残り戦略』を設定しつつあるような印象を受けている。

 

そう考えると、右側に、『東京23区、火葬代なぜ高い』という『23区民であれば、高いのはケシカラン』(この記事では、『23区では、大半が民営の火葬場』であるといったことが、『火葬代の高さ』の根拠と書かれている)といった共通の反応を示しそうな話題が配置されているのは興味深い。

 

 

さて、先ほどの『共同通信世論調査』の記事であるが、もう少し詳しく見ていこう。

 

ちなみに、この世論調査の『詳報』が4面に出ているので、それを見れば、『質問項目』とそれぞれの『回答』の状況はわかるようになっている。

(なお、これは、『郵送方式』による世論調査であることは、まず強調しておきたい。)

 

私は、昔、仕事の一部として、『アンケート調査』の処理とか分析とかを、少しやっていたこともある(まあ、『真似事』的にやっていただけで、本格的な訓練を受けたわけではない)。

 

それで特に、この手の記事が気になるのだが、どちらかといえば、『手前みそ』の記事である(まあ、『憲法改正推進派?』の側においても、同様のことをやるケースが多数みられるのだが…。)

 

 

『世論調査』で一番、重要なのは、『どういう対象』に対して、『どのような表現で質問を発しているのか』、また(回答の選択肢が用意されているケースでは)『どのような選択肢が用意されているか』であろう。

 

 

すると、記事の見出しにもなっている、<改憲論議『急ぐ必要ない』65%、『幅広い合意優先を』72%>という部分に対応した『質問』というのは、実は、『問15』というかなり具体的な質問になっている。

 

これは、<岸田文雄首相は自身の自民党総裁任期である9月までの憲法改正に意欲を示しています。あなたは、国会で憲法改正を巡る議論を急ぐ必要があると思いますか、急ぐ必要はないと思いますか。>、こういう質問になっている。

 

このように、『岸田文雄の自民党総裁任期である9月までの憲法改正』などという、(岸田自身が『建前』としては掲げていたことはあったかもしれないが、普通に考えると)『全く現実性のないたわごと?』みたいな発言を基準として、質問が設定されていると、『急ぐ必要はない』という回答が多くなるのは、当然のことであろう。

 

(そもそも、現時点で、外国からの直接的な侵入、侵略の危機のようなものが、差し迫っているのなら別だが…。それに、このような『差し迫った危機』に対しては、現状においても、安倍内閣の時の安全保障を巡る『法改正』などによって、一定の対応は出来るようになっているはずである。)

 

さらに、<『幅広い合意優先を』72%>という部分が導き出された質問というのは、具体的に言うと、次のような内容の『問17』に対する回答結果を、短くまとめたものである。

 

問17 早期の憲法改正を目指す自民党や日本維新の会などは、国会で条文案の作成作業に入るべきだとの考えを示しています。あなたは、憲法改正の進め方についてどうするべきだと思いますか。

 

 改正に前向きな政党で条文案の作成作業に入るべきだ    24%

 改正に慎重な政党も含めた幅広い合意形成を優先するべきだ 72%

 無回答                          4%

 

 

この質問を見ただけで、こういう内容であれば、『改正作業に前向きな政党で条文案の作成に入るべきだ』と回答するのは、せいぜい自民党支持者(の一部)と日本維新の会支持者(その他、改憲を急ぐことに熱心な政党や団体の支持者含む)くらいだろうと見当がつくことだろう。

 

ましてや、この調査結果は『3月5日に調査票を発送』『4月15日までに届いた返送総数は2061』と書かれているので、この『世論調査の分析結果』をまとめたのは、その後である。

 

もともと、明日(5月3日)の『憲法記念日』前に発表することを意識して、計画されたものなのかもしれないが、それにしても、いろいろなことを前提にして、設定された質問項目ではある。

 

 

なるほど、新聞記事自体のほうではじっくり見ていくと、前提となる質問についても、比較的詳しく説明がなされている(だから、嘘が書かれている訳ではない)。

だが、多くの人は、記事の見出しとか、記事に付けられている<世論調査の主な結果>の数字などを中心に、中身を判断していくことだろう。

 

そうすると、このような調査結果の報道では、『憲法改正』に関する世代間の意識の差とか、それぞれ、何を問題にしているのかといったニュアンスが必ずしも伝わり切らず、(一定の世代を中心とする)『平和憲法が変わってしまうのは嫌だな』といった感情(もちろん、それはそれで、尊重されるべきであろうが…。しかし、他の観点からすると、『解釈改憲』ばかり繰り返すのも不健全であるし、それはそれで、『憲法自身の空洞化』を内側から推進することにもなってしまう。そのようなデメリットがあることも、考える必要があるだろう)が『(憲法改正が)あるか、ないか』、つまり、それぞれの『こうなるといいな』という価値判断にとって、『都合がいいか、都合が悪いか』だけでもって判断されてしまうような記事になってしまうのではないかとの危惧を感じる。

 

また、この手の『世論調査結果』は、『クロス分析』(ある設問に対して、一定の回答をした人たちが、他の設問にはどのように回答しているかの分析。これでもって、回答者の『胸の内』というか『真意』が浮かび上がってくる可能性がある)なども行ったほうが、良いと思うが、そうしたことはなされたり、公表されたりしているのだろうか?

その辺も、気になるところである。