以前、原作漫画の描き手であった、芦原妃奈子(あしはら・ひなこ)さんが12月末に衝撃的な自殺を遂げてしまった『セクシー田中さん』(小学館の雑誌に連載、日本テレビで放送)のドラマ化を巡る混乱が話題になっており、これなども、そのうち、責任のある形での中間報告などが、小学館あるいは日本テレビ(もしくは、その両者の共同で)なされなければ、とても収まり切れないと見ている。

(私自身も、このブログで何度か取り上げてきた。)

 

実際、この問題とどれほど関連があるのかわからないが、こんな報道がなされている。

 

日本テレビが、小学館の漫画が原作で4月から放送予定だった連続ドラマの制作を見送ると3月22日になって発表したというのだ。

 

 

このドラマは、ムロツヨシさん主演のドラマ『たーたん』。西けい子という漫画家が小学館発行の『ビッグコミックオリジナル』に連載している漫画を原作にしているそうだ。

 

この原作本自身がうたっている、この漫画のコンセプトは、<童貞×JC(女子高校生のこと)≒父娘?>だという。

 

それを解説するような粗筋が書かれている。これも原作本から。

<15年前、全く冴えない28歳の童貞男だった上田敦は、友人から赤ん坊を預かる。その友人は、殺人を犯し刑務所に入ったのだ。

赤ん坊の名は鈴。敦は鈴を娘として懸命に育てた。

 

娘は父を「たーたん」と呼ぶ。父は出生について何も話していない。鈴は何も知らない。ワケあり父娘の心ヒリヒリコメディ!>

 

こんな宣伝の仕方がされているのだが、なるほど、実写ドラマの原作を漫画に求めることが、最近とみに流行っているらしい『テレビドラマ界』が飛びつきそうなストーリーである。また、実写化すれば、さまざまな問題が出てきそうなことは、容易に想像できる。

 

このドラマ、しかも、『セクシー田中さん』のドラマを実現したチームが『再タッグ』を組んで手掛けたのだとも報道されている。

(どの程度の『再タッグ』なのかは、調べていない。)

 

具体的に何を巡って今回、『とん挫』したのかわからないが、何しろ、4月期放送のドラマを、今頃になって、『製作中止』したというのだから、相当な混乱ぶりということは明らかであろう。

 

 

このことに象徴されるのは、日本で『ドラマ』とか、『漫画』『アニメ』が日本の強みだとか誇らしげに言う人たちもいるが、それがいかにひ弱な土台の上で、咲いている花なのかということである。

 

そして、ここからが本題なのだが、テレビドラマ化がされて、地上波で放送された(されている)という意味で(『セクシー田中さん』などとも)共通しているのが、『不適切にもほどがある』(TBSテレビ系金曜ドラマ枠で放送中、初回は、2024年1月26日、主演阿部サダヲ、宮藤官九郎によるオリジナル脚本、プロデューサー 磯山晶ほか)である。

(このドラマは、最近の流行で、『ふてほど』と略称されている。)

 

これは、はっきり言って、『傑作』『快作』である。

ストーリーというのは、意外と単純で(これも面倒なので、ネットの情報を活用してしまおう)次のようなものである。

 

 

そして、このドラマで、人々の共感を呼んでいるのは、『昭和男』の小川市郎が『令和の世界』に持ち込む、数々の昭和の『不適切用語』と『不適切な習慣』である。

 

例えば、『ケツバット』とか『連帯責任』(体育教師で、部活で野球部の顧問?をやっている小川一郎は、部員たちをしごくのを、無上の喜びとしている。)、あるいは、『女のくさったような奴』とか、『ブス』等々の発言。

 

さらに、彼は(妻に先立たれて、今はシングルなのだが)『エロビデオ』を見るのが大好きで、生徒が持っていたのを取り上げて、自分が鑑賞する。

 

他方で、高校生になった娘に『男の虫が付く』ことは異様に警戒していて、しかも『チョメチョメ』等々、放送禁止用語を乱発する。

 

では、なぜ、このような『時代錯誤』(昭和の時代からやってきたのだから、ある意味では『当然』だが…)の『ハラスメントだらけ』『コンプライアンスとは縁もゆかりもない男』の言動が、笑いを呼んでいるのだろうか?

 

普通に考えると、滅茶苦茶、世間に叩かれて、『放送中止』に追い込まれ、宮藤官九郎は(何か理由を付けられて逮捕され、『業界から永遠に追放』されたとしてもおかしくない(そのような展開も十分、ありうるような)ドラマなのである。

 

それが、どうしてそうならず、むしろこれを機に、いろんな『反省』とか『考察』『見直し』などが始まっているようだ。

 

ここに、むしろ、『令和』という現在の時代の日本が(特に)抱え込んでいる矛盾(というか、一種の病いでもある)の姿が露呈している。

(つづく)