昨日(13日)、台湾で4年に1度の総統選と(1院制の国会)の立法委員(国会議員)選挙が実施された。

 

私は、日本と台湾とは、共に民主主義国家であると自負しているが、対極的な選挙システムになってしまっていると思っている。

 

台湾では4年に1度の総統選挙は、与党の都合で時期の変更はできないのだと思う。ところが、日本では、(国会議員のなかから首相を選出するという)間接投票、間接民主主義のシステムであって、しかも衆議院選挙の時期は、『解散権』を事実上、首相が自由に行使しており、自分たちにとって一番、都合のいい時期に設定できるという、(いいかげんな)システムである。

 

これだと、現状のように、自民党がほとんどの場合、政権を手放すことなく、『半永久政権』を誇ることが出来る。おまけに『二院制』であるから、『参議院選挙』(や衆議院の補欠選挙)などを含め、しょっちゅう選挙をやっておれば、国民の『ガス抜き』のほうも自由自在である。

 

それに対して、台湾のように、総統選挙も直接選挙であって、さらに(最近では)立法委員選挙も同時期に行うということであれば、たった一日の選挙で、国の権力者をひっくり返して、『特権者』から『ただの失業者』に転落させることが出来る。

極めて、投票しがいのある選挙だとは言える。

(これだと、台湾の選挙を注視しているはずの中国の人民達も、次第に、本心ではうらやましくなってしまうのではなかろうか?)

 

 

これは、4年前の総統選の時の、現地の新聞だ。

投票日直前の各陣営(特に蔡英文陣営と最大の対立候補であった、韓国ゆ陣営)の決起集会の盛り上がりかたを伝えている。

 

そのころは、日本と台湾を行ったり来たりしていたので、ちょうど総統選に向こうに滞在できるように予定を調整して、選挙を見に出掛けたりした。

 

とはいえ、台湾語も中国語もまともに出来ないから、大した情報入手はできなかった。

この時の選挙では、蔡英文氏が得票率57%の817万票を獲得して、韓国ゆ氏(国民党)の得票率38.6%、552万票を圧倒して勝利した。

(その他、親民党の宋礎ゆ氏が立候補していた。)

なお、韓国ゆ氏とはこのような風貌の人である。

その後、しぶとく生き残っていて、今回も立法委員(国会議員)に当選。新議会では立法院長(国会議長)の要職に就任するとみられている。

 

これは、今回の選挙結果を報じる、『東京新聞』と『読売新聞』。

 

これだけでは、わかりにくいが、『東京新聞』のほうが、『台湾有事』をきっかけに『日本が戦争に巻き込まれること』を嫌悪する読者層意識してか、『台湾の総統選』のニュースの取り扱いが(他の記事と比べても)小さい扱いになっている。

(私は、こういう『巻き込まれ』型の発想では、日本は世界の中で、『アメリカの従属国』的なポジションから脱却できないと思っている。)

 

今回総統選は、結局、上記のような確定得票に終わった。

なかなか微妙な数字ではある。

第一位の頼清徳氏の得票は、4年前の蔡英文氏の得票から259万票(40%)くらい減少している。

第二位と第三位の候補の数を合わせると頼氏の得票を大きく超えてしまう。

 

しかし、そもそも、野党の候補者統一が実現できなかったからこそ、(民進党が引き続き総統を送り出すことを前提に)ある意味では、安心して批判票を第二位の(国民党の)侯友宜候補、第三位の(民衆党の)か(木偏に『可』)文哲候補に投票したものと受け止めることも可能であろう。

 

それに4年前の票と比べると、民進党の票は減ったが、しかし、その分は、国民党の侯友宜候補に上積みされることなく、むしろ、国民党をパスして、民衆党へと向かった。

 

結局、いつものことながら、中国共産党が国民党候補を勝たせようとして、いろんな工作を行うが故に、それを嫌って(一種の『逆効果』として)国民党は再び敗北したのだとも言えそうだ。

(民進党を勝利させた、第一の功労者は習近平氏であり、第二の功労者は元総統の馬英九氏だともいえそうである。彼はまた選挙戦の最終盤で、『習近平氏を信用できないのか?』と発言して、パペットぶりを発揮し、国民党陣営を大慌てさせた。)

 

テレビのニュース解説などを見ると、民進党と国民党の対立を嫌って、このようなことになったのだと言っているものもあるが、基本的に、『生活』とか『経済』などを考えると、『中国とうまくやる』ことは出来ないのかという発想はあっても、『台湾の今のポジションを捨てて、中国にすり寄る』というような選択は嫌だという気分が強いようである。

(また、『生活のために、中国にすり寄る』といったことが受け入れられないと考える層は、そのような状況になったら、『中国と戦う』という選択肢はとらないにしても、むしろ『台湾から逃げ出す』のではないかと思われる。)

 

今回のもう一つの注目点であった『立法委員選挙』のほうは、こんな状況だという。

これだと、頼清徳総統が5月に就任しても、国会での予算の可決が必要となりそうな案件は、すべて停滞してしまう、あるいは少なくとも第三党の『民衆党』の賛同を得なければ、実行することができなくなってしまう。

 

ここから先は、『民衆党』がどのような判断をするか、あるいは、今後、今年の11月には決定する『アメリカ大統領選の勝者が誰になるか』(トランプの再選がありうるのか?彼がどんな政策を選択するのか?)によって大きく状況が変わるといえそうだ。

 

ともかく、台湾の民衆にとって、迷うことの多い選挙だったのではなかろうか?

一時は、『民進党が今回は敗北するのではなかろうか?』という見方が、かなり強かったのに、最終的に『民進党の政権の継続』を決定づけた要因は何なのだろうか?と思う。

(それにやはり、投票率の高さには、眼を見張るものがある。今回は、国民党候補への投票をうながすために、中国政府が、大陸に在住している台湾からの事業家等に、運賃の補助を与えながら、『帰国をうながす』ような動きさえもあったらしいが…。)

 

まだまだ書きたいことはあるが、この記事の続きは、『後篇』としてまとめることにしたい。