本日(27日)は、昨日、報ぜられた台湾の映画監督・侯孝賢(ホウ・シャオシェン)さんがアルツハイマー病のため、『もう映画を作れない』状態であること、つまり事実上、『引退した』ことを家族が発表したことについて書こうかと思っていた。

 

何せ、ホウ監督は、76歳で現在75歳の私とほとんど歳の変わらない人である。

それに、この監督の映画もだいぶ、見てきた。

 

ところが、本日になって、もっと驚くべきニュースが飛び込んできた。

 

 

中国で、今年の3月まで10年間にわたり、首相(国務院総理)を務めた李克強(リー・クーチアン)氏が本日未明(0時10分とのこと)、突発的な心臓病のために亡くなったと、中国国営新華社通信が伝えたというのだ。

 

昨年10月に開催された共産党大会では、会議の途中で胡錦涛前国家主席(当時79歳)がいきなり連れ出されたかのように見える映像が世界に発信されて、驚いたものだが、今度はその胡錦涛氏ではなく、彼の腹心であったともされ、党大会の際には、最後に胡錦涛氏がポンと肩を叩いたようにも見えた李克強氏のほうが亡くなったというのだから、驚きだ。

 

しかも、テレビなどの伝えているところによると、中国の国営中国中央テレビの伝える訃報というのは、極めて簡単なものだったようだ。

(放送の順番も、ずっと後だった。)

 

早速、外国人記者たちも中国共産党のスポークスマンを務める女性の記者会見の場で、『亡くなったいきさつ』とか『共産党による追悼行事の予定』などを質問したようだが、極めて事務的な回答しかなく、『今後の発表に注目してほしい』と述べるのみだったという。

 

別に根拠なく、『粛清された』などというつもりはないが、それにしても妙なタイミングである。

 

 

最近、このような中国共産党の有力政治家の失脚、解任などのニュースが相次いでいた。

おまけに、ウクライナ情勢とか、イスラエル・パレスチナ情勢なども緊迫化し、この機会に『台湾海峡情勢が緊迫化している』との話もある。

 

このように、『何か、まずいことが起きるのではないか?』と人々が懸念を示している、まさにその最中に、李克強氏が『突発の心臓病を起こし、静養先の上海で突然、亡くなる』というのは、十分に憶測を呼びそうな状況である。

 

私などは、一瞬、そのニュースを聞いて、(文化大革命のなかで)命を落とした劉少奇(元国家主席)のことを思い出した。

彼は、1898年11月24日の出生で1969年の11月12日に亡くなったことになっているので、亡くなった時は、まだ70歳ということになるのだろうか?

 

何しろ、『党内に潜んでいた敵の回し者、裏切者、労働貴族』などのレッテルを貼られ、さんざん紅衛兵たちに暴力的につるし上げられ、さらし者にされ、挙句の果ては、河南省開封市においてまともな治療も受けられないまま、倉庫のような場所に放置されて死に至ったと言われている。

 

その劉少奇が亡くなって、50年以上が経つのだが、毛沢東の地位の復活を求めているかのような習近平氏の治世のもとで、なおかつ、さまざまな矛盾の存在が指摘されている現在の中国である。

 

 

『習近平によって殺された』などと軽々しく断定することは出来ないが、どうにも怪しげな雰囲気が漂っている。

さまざまなうわさが流れたり、あるいは李克強を追悼する民衆の動きが生じたとしても不思議ではない。

 

ますます中国(あるいは台湾)を巡る情勢は、混とんとして来ているという気がしている。

(なお、侯孝賢監督のことについては、今後、書くつもりだ。)