この記事の続きである。

 

 

 

 

昨日(24日)の衆議院における代表質問について書き始めた。

 

どうも国会の代表質問というのは、妙なシステムである。

一方的に、長い原稿を読み上げ、そのなかに何十もの質問が盛り込まれている。

 

それに対して、総理大臣(他の大臣が答えることもある)が、これまた質問に対する答弁だけを羅列した、長々とした原稿を読み上げる。

 

見聞きしている国民に対しては、何も情報提供がなされない。

国会議員は、ヤジを飛ばすのにいそしんでいる人たちも多い。

(そのヤジも、NHK等、わざと音を絞り込んでいるので、何をヤジっているのかもわからない。)

 

国会中継というものを、放送コンテンツとして考えると、恐ろしく不親切で、『どうしようもないサービス』だという気がする。

例えば、将棋の中継なども、ネットなどでやっているのだが、そこでは、『AI』による『有利不利』の判定が一瞬にして表示される(らしい)。

 

これなどは、『将棋ファンに対するサービス』でもあり、『将棋を見る力』(私など、全くと言って良いほどないが…)がほとんどない人たちに対しても、『将棋ファン』として引き込むための、一つの工夫だと言って良いだろう。

 

それに引き換え…。

 

 

この『読売新聞』の記事など、各議員が何を質問していたのかを、それなりに詳し目に報道している。

 

しかし、そこから意図的にばっさり抜いている部分がある。しかも、それが『議員の質問』の一番、肝の部分だったりする。

 

昨日の衆議院での代表質問の三番目に登場した立憲民主党の吉田晴美議員の質問に私は、注目した。

 

この人は、芸能人みたいに上下真っ白の服を着て演壇に登場した。

私は、最近の新しい議員について、あまりよく知らないので、これは『令和新選組』か何かの議員かと、一瞬、思った。

 

話を聞いている内に、(聞きながら、スマホで検索などもしていたので)吉田晴美という人が、どういう人なのか次第にわかってきた。

 

彼女は、東京都杉並区の大半の地域により構成される東京8区から、2021年の衆議院選挙で初当選した議員だった。

もともと、野党間の選挙協力で『野党の共同候補』として選ばれた人だったように記憶する(途中で、山本太郎氏が、この選挙区から出馬しようとしたが、本人ならびに支持者の猛抗議で、撤回させて『比例東京ブロック』に転出させたというようないきさつがあったらしい)。

 

ともかく、ここは、『野党が強い』とされている杉並の選挙区である(そういえば、私の弟は杉並区の住民である。前に、何か『元気の良い人が当選した』みたいな話を聞いたような記憶もあった)。

 

この人の話のつかみの部分は、『自分は、山形の八百屋の娘として育った』という話である。

両親は、朝から晩まで一生懸命働いて、『一円の収入、支出』を大事にしていた。

 

自分たち、子供たちも、物心がついたころから、それぞれの出来る範囲でお店の仕事の手伝い、応援をしていた。

(その後、両親は、病に倒れ、今度はその介護という仕事も加わった。)

 

つまり、吉田さんは、何だか芸能人みたいな『派手ないでたち』で登場していたが、自分は、『庶民の子』であり、『一円の苦労』をし続けた『庶民の気持ち』がわかる、あるいは『庶民の代表』であるという訴えである。

 

しかも、このストーリーを、『世襲政治家の一人』であり、『ぼんぼん』として育った岸田総理には、『おわかりにならないだろう』とやっていたので、考えてみれば、岸田さんの方もたまったものではないだろう。

 

さらに、岸田内閣の政策の迷走、『増税』といったり、『一時的減税』をほのめかしたりして、目くらましをしようとしている、その『やり口』。

そして、その背景に、何としても『支持率を少しでもあげて、延命を図りたい』という事情があること、こうしたことをすべて、まとめて投げつけるような迫力があった。

 

ところが、『読売新聞』も『東京新聞』もそうだが、こうした『個人的なファミリーヒストリー』を含めた話は、すべてカットされている。

 

 

たしかに、こうした『お涙頂戴』『浪花節』的な話を全部報道していたら、キリがないというところはある。

しかし、岸田内閣の最大の泣き所(あるいは、自民党政権の最大のウイークポイント)は、彼らが『世襲政治家』の集団であって、ますます一般の国民と意識が乖離しつつあること。さらには、『不公平な人生の出発点』に立っていることであろう。

 

このような『日本の政治の大きな矛盾点』を政治報道からカットしてしまったら、国会中継に対して、誰も興味を抱かなくなってしまうことも、ある程度、予想できることである。

 

吉田氏の質問は、彼女が、一年生議員で代表質問など初めてということもあっただろう。かなり、とちったりしながら質問を行っていた。

 

彼女の質問の途中から、議員たちが議長席のそばに集められたりしていた。これは、『質問内容に問題あり』ということで、(例えば、埼玉県の『子供放置禁止』条例のことを国会の場で問題にするのはおかしいとか、岸田首相等に対する個人攻撃などを含んだ質問であるとか)自民党などが抗議をしているのだろうと思った。

 

ただし、NHKなども、『何が国会で起こっているのか』全く解説等をしない。

おそろしく不親切な国会中継だと思う次第である。

 

 

たしかに、『冷静に』(あるいは極端に、『中立的に』)ひいて考えてみると、吉田さんも生まれは、山形の八百屋の娘なのかもしれないが、ご本人は、その後、客室乗務員になったり、イギリスの大学の経営大学院で学んだりと、いわば輝かしいキャリアの持ち主として、打ち出せるような面もお持ちである。

(そういうところに、注目すれば、吉田議員の言っていることは、単なる『人気取り』であって、『ポピュリズムに過ぎない』と切り捨てることもできるかもしれない。)

 

ともかく、『国会』とか『国政』に対する人々の注目度を引揚げ、投票率などももう少しまともな水準にまで、引き揚げていくためには、このような(例えば)『吉田議員の面白い質問』などについて、もっと取り上げ、報道し(もちろん、吉田議員に対する批判の観点からだってかまわない)たりすべきなのではなかろうか?