この記事の続きだ。

 

 

 

「BIGモーター」を巡る不正事件は、広がりを見せているようだ。

本日(28日)、国交省が全国24都道府県の34事業場に対して、道路運送車両法に基づき一斉に立ち入り検査を実施(自動車整備工場への立ち入りとしては過去に前例のない規模だという)、また関東財務局はBIGモーターの役員にヒアリングを行っている。

 

いずれも『見過ごしているわけではない』と国民からの疑惑を払しょくしようとするかのように、あわただしい動きを見せている。

 

しかし、『過去に前例のない規模での行動』が必要になったのも、BIGモーターが(意図的な車への破損行為を含む)デタラメな整備?でもって、売り上げと利益を拡大するという極端な不正を長年にわたって行ってきたからである。

 

そして、BIGモーターには、「損保ジャパン」の前身である企業(日本興亜損保)に2011年4月~12年6月にかけて、(創業者の長男である)宏一前副社長が在籍していたことに象徴されるように、いろんな「強い者」に癒着し、相互に利用してきたという「黒歴史」があるようだ。

 

損保ジャパンは、多数の出向者をBIGモーターに派遣し続けていた。同時にそのことで、多額の保険契約を獲得する(不正請求によって水増しされたものを含め)ことに成功してきた。

今日、損保ジャパンは、ある種の『共犯者』ではないかと見られているようである。

 

損保ジャパンから派遣されていた多数の出向者が、まともな働き方をしていたら、BIGモーターの不正に対して、全く気が付かないということは考えにくい。

 

むしろ、損保ジャパンからの出向者自体が、この『不正のネットワーク』に加担することで、宏一前副社長などが、発破をかけて推進していた『疑惑の企業内での行為』に対して、『ああ、こういったことは世間で普通に行われているんだ』『会社がおかしなことをやっていると考えたら、自分たちは、飯が食えなくなってしまうんだ』という孤立感、絶望感を(少しでもまともな)従業員たちに抱かせ、ますます不正行為がエスカレートしていくことを許してしまったのだと言えるのかもしれない。

 

以上のことは、必ずしも現時点で立証されているわけではないが、疑惑として取りざたされている点である。

 

 

そしてBIGモーターが、中古車販売の企業としては異例の規模まで拡大し、さらに通常だともうけと結びつかない整備の分野でも、利益追求を行うという、異例の企業拡大を成し遂げていくうえで、(損保ジャパンだけでなく)国交省とか、金融庁などの関係先とも、あるいは各種の裏取引、便宜の図り合い、癒着などを行っていたのではないかとの推測もできうる。

 

BIGモーターが『ブラック企業』だという評価が急速に拡大している現在、各種行政機関は、『そのような癒着をしていない』と身にかかった火の粉を振り払うように、矢継ぎ早にこうした行動をあわてて、とり始めている。

 

BIGモーターのように急速に売り上げ、従業員数などが拡大して、関連企業や取引先などを含めると、相当のボリュームを地域社会、あるいは狭い業界内において占めるようになれば、まさに『井の中の蛙』状態になり、ありとあらゆる『蟻たち』が砂糖を求めて群がってくるのは、容易に推察できる。

 

(株主二人の資産管理会社がすべてをコントロール?)

しかも、この企業の『底恐ろしい』ところは、この記事の前篇でも書いたが、創業者親子の兼重宏行・宏一(前社長と前副社長)の二人の『資産管理会社』=『ビッグアセット』という企業がBIGモーターの全株式を保有して、完全支配している点である。

 

いくら、BIGモーターの組織をいじくったり、あるいは、『役員の報酬の返上』をしてみたりしても、『ビッグアセット』の株主二人が合意して決定すれば、そこに全権があるので、ほとんど意味がないといっても過言ではない。

 

本来、このような『株主二人の会社』が、従業員数が直近では6000名を超え、また売上高も7000億円になるという(見方によっては)『大企業といっても良い』ような企業を裏でコントロールできるということは、はなはだおかしな話である。

 

株式会社の『社会性』を踏みにじりかねない状態なのであって、やたら、『コンプライアンス』とか『透明性』などが強調される昨今、あってはならない状態であるともいえる。

 

しかし、法律上は、このような形態は、日本に中小企業が多く存在していること、またそうした企業の存続・発展を支援するための措置という考え方からであろうか認められてきた(らしい)。

 

だが、今や、こうした裏の仕組み(温存されてきた仕組み)を利用して、BIGモーターのようなことがまかり通ってしまっている。

 

 

その結果、『ビッグアセット』の株主二人は、何でもやりたい放題が出来る。

極端な話、二人のこれまでの儲けの蓄積は、一切、放出しないという形で、ただBIGモーター等の事業会社に対して、損害とか賠償金の支払い義務を押し付け、今度は多額の損失を出してしまったという理由で、従業員の解雇などを行うことも、ほとんど『自由自在』に出来てしまう。

 

今回の一連の不正の責任は不明確にされたまま、『ビッグアセット』の株主である兼重親子は、安泰でありうる(あるいは、その儲けをもとに、また別の事業を開始することも可能であろう)。

 

常識的に考えて、このようなことでは、『社会的公正』を表面だけでも保つことは困難である。

『ビッグアセット』のような資産管理会社が、無傷で事態を切り抜けられるというのは、これまでの『会社法』あるいは、会社の責任と経営者個人の責任のあり方について、『盲点』『抜け道』があったということにほかならない。

 

その点を、早急に埋め合わせるようなことを考えていく必要があるだろう。

また、こうした(事実上の)『脱法企業』に対しては、その実態を見ながら、各種の許認可を無効化する、これまでのような事業を今後は出来なくするような措置が検討されるべきであろう。

 

そうでなければ、『統一教会の事件』あるいは、『故・安倍晋三首相の狙撃事件』ではないが、『法律によっては実現されない・正義の実現のため』と称して、今後、どのようなテロ行為がまん延していくかもわからない。

 

このようなことを、起こさせないためにも、またこれ以上、『不満や鬱屈が充満する社会』でなくするためにも、今回、明らかになったような『ブラック企業の裏に存在している闇』に対しては、徹底的にメスがふるわられるべきであると思う。

(それが、どこまで実現できるかは、正直言って、わからないのだけど…。)

 

その他、この事件には、自動車の整備などの過程で、iPadによる写真撮影に基づく、遠隔からの素早い、『整備の必要性の判断』(これが悪用された)、あるいは、会社において、LINEでの情報交換が推奨され、これが、『従業員が会社の従業時間と関係なく、無制限に働くこと』と結びつき、同時にLINEで、『従業員が相互監視しあう』ことによって、(反逆者に対して)『いじめ』とか『監視』が可能になるという風に、いわゆる『デジタル化』を積極的に悪用していたことが認められる。

 

このように、『犯罪』には『犯罪』としての新しさ、それなりの『新規性の工夫』なども認められるが、これらは『今後の教訓』としていくべき事項であろう。