昨日(1日)は、これまでこのブログで(しばらくの間)書き続けてきたように、『中国共産党創設100周年』の一大イベントが中国で行われた日だった。

中国でのこの間のはしゃぎようを見ると、まるで『東京オリンピック・パラリンピック』に先制パンチを食らわす?ように、『中国こそが、偉大なる中国式社会主義の力で、コロナとの闘争に勝利した』という宣言を行っているような雰囲気である。

もちろん、そもそも『新型コロナ』が中国の武漢発で世界に広がったのも、元はと言えば中国が、生物化学兵器の一種としての役割を考慮しながら、『ウイルス研究』を武漢の研究所で行っていた、そのウイルスが『ミス』によって世界に拡散していったのではないかという『疑惑?』も依然として、根強いのではあるが…。
(まあ、こうしたことは、中国内部の研究について熟知している『中心人物』が亡命とかしない限り、なかなか真実はわからないことであるのだけど…。)


それはともかくとして、中国共産党、特に習近平氏としては、この機に『コロナを中国式社会主義の力でいち早く克服した』ことを世界に発信したいようだ。

 

これこそは安倍・菅コンビが、『東京オリ・パラ』に込めようとしていたメッセージであったはずで、まさに『お株を奪われた形?』と言えよう。

それにこの『100周年イベント』の一環として、北京オリンピックの会場であった場所で、共産党の党史と中華人民共和国建国の歴史を、延々と謳い上げるセレモニーを見ていると、『東京2020オリ・パラ』に先行して、再度の北京オリンピックの『開会式』でも見せられているような気分になってくる。

(まるで大イベントの『先制攻撃』を受けたようで、『二番煎じ』になりかねない『開会式』を是非とも、観客を入れて開催したい安倍・菅組としては、さぞかし苦々しい思いであろう。)


それで、昨夜(1日)はいくつか地上波やBSの報道番組で、『中共100周年』の特集を組んでいたものがあり、そのいくつかを録画済みだが、結局、全部見たのは今のところ、BSフジの『プライムニュース』だけである。


この番組は、2時間近くの時間を基本、一つのテーマにあてて、論者を集めて論争させるというもので、比較的(いわゆる)『右寄り』というか『安倍応援団』に近い人物ばかりを集めて、番組を組むこともあるが、昨夜は違った。


今回は、こういうテーマであった。

この人は、言っては悪いが、まるで『中国の代弁者のような人』である。

たしか、この人は(私の記憶では)前に中国で一時期、『行方不明』と伝えられたこともあり、あるいは中国当局によって、『思想調査』もされた人なのかもしれない。

(もう一度、ネットで確認してみたら、たしかに2013年の7月~9月にかけて、朱氏が中国に帰国した折に、『スパイ?』容疑で当局に一時、拘束されていた模様である。

ただし、佐藤優氏などは、当時、『中国政府の内部抗争が原因か?』といったタイトルで、コメントを書いているようだ。)


そういった経過もあったせいなのか、昨夜は、『中国の代弁者』らしきトーンをこれまでになく高めていた。
(しかし、こういう人の発言は、ある意味では、『中国側の見方』『中国の国内でどのように報じられているのか?』がわかって便利な点もある。)


それに対して、ここ10年ほど前から、メディアによく出るようになった興梠(こおろぎ)一郎という人が、『中国共産党を批判する見解の代表』みたいな形で、議論を述べていた。
(少し、嫌らしい表情の写真を載せてしまったが、他意はない。私としては、これまでこの人の見解を参考にすることが多かった。)
 


この二人と(相対的別個の立場で)自民党の林芳正参議院議員が『日中友好議員連盟会長』という立場を含めて、自分の見解を述べていて、これがなかなか微妙なもので面白かった。


この人は、以前から、(安倍晋三氏と同じ)山口県内の参議院議員だが、(参議院議員では総理大臣になれないという考えから)衆議院議員への転出を図ろうとして、安倍・二階等の勢力とぶつかってきた。

安倍氏としては、林氏は『政敵』であって、決して衆議院議員にさせてはならないという決意のようだ。

 

実際、『桜を見る会』など山口県の政界を舞台に、大規模な『スキャンダル』『不祥事』が相次いだのも、元はと言えば、<安倍対林>という『仁義なき戦い』が背景にあると、以前から指摘されている。

 

これまで、私は林氏の名前を知っていても、この人の中国とか国際情勢に対する見解は知らなkあったが、なるほど、聞いてみると安倍氏などとは相当、異なるようだ。なかなかユニークな見解で、これも面白い。

(安倍氏よりは、中国事情について詳しいようだし、意外と中国の指導者と対面したら、『中国について詳しい』が同時に、『はっきりと忠告を述べることの出来そうな人』と言う印象も受けた。)

 

ただし、安倍氏寄りの人が、この番組を見ていれば、『林は、中国に対して妥協的すぎる』と思う可能性もあるとも感じた。

(なお、この番組で、司会進行役の反町氏から、しつこく『衆議院選挙に鞍替えで出るのは本当か?』『二階幹事長は党の決定に反して出馬を強行すれば、除名等の処分もやるようなことを言っているが…』等、林氏は聞かれていたが、終始、『近いうちに記者会見を行う予定である。それまで待ってほしい』と繰り返していた。

 

たしかに、林vs安倍・二階の騒動が山口県を舞台に勃発すれば、『自民党内の抗争』は、次の段階にステージアップしていくことだろう。

山口県内だけでなく、中国地方全体を舞台とする『仁義なき戦い』になる可能性もある。

もっとも、自民党は、いつもどこかで、『信じられないような妥協』をすることもあるので、そればかりを期待すると裏切られそうだ。)


議論のなかで、中心になったのは、習近平氏が昨日、天安門で行った1時間あまりの演説の中身の評価(そして、そこに示される習近平指導部のこの間の執政について、どう評価するか)という点である。

この番組では、その中からこういう部分を取り出していた。

 

 

この演説あるいはそれに向けての習近平の一連の行動について、興梠氏は、現在、日本で一般的になっている、習近平は『毛沢東に並んで、中国の王朝における『皇帝』に自らがなることを模索している。

そのため、台湾に対しても、香港に対しても『強権』を発動し、そうしたことにより生み出されている(米国を中心とする国際関係での)緊張関係の中で愛国心を喚起し、次の目標である(中国建国100周年である)2049年に向けて、『自らの権力の延命』をはかっているというような分析の仕方だった(もちろん、2049年段階では、果たして習近平氏が『存命なのかどうか』も不明ではあるのだが…)。


ところが、これに対して、朱氏はいくつかの点で『異論』を述べた。
第一は、中国は、あくまでも『反覇権』の立場であり、『米国に変わって世界の覇者となる』ことを目指しているのではないのだと言う。

中国が、世界の『人権思想』に反対しているかのように、興梠氏などは主張するが、最近のロシアとの間の共同声明等でも、中国は、何も中国式のやり方を押し付ける気はなく、世界の最先端の知識、見識に学ぶと主張している(といった)。

第二に、中国が台湾や香港について述べていることは、以前からの一貫した主張で、中国の一部である台湾や香港の統治について、外国から『上から目線』でどうこうせいなどと言われる覚えはないということに過ぎない。
中国が外国に対して、欧米の列強のように『植民地』にしたりするようなことは、これまでなかった。

第三に、習近平指導部は、この間、官僚の腐敗と戦い続けてきたから、中国の人民からも支持を受けているのであると主張。

第四に、中国内部の『貧富の差の拡大』などと批判派はいうが、ようやく現在の状況で、『絶対的な貧困水準』から中国のほとんどが脱しえた状況である。
 

また、『貧富の格差の拡大』の問題については、中国の指導部もその問題の存在を認識していて、最近の論説でも、『巨大な中間層を建設していく』ことの重要性を強調しており、むしろ、かつての『日本の成功』から教訓を得ようとしていると言える。

それから、第五(くらい)に、批判派は中国内部で人権がない、自由がないなどというが、それは間違いであり、もし仮に中国内部ががんじがらめで、『自由な発想』が一切圧殺されているのならば、今日の中国で科学的な発明とか重要な論文とかが、多数発表されていて、そうした(イノベーションの)面の国際水準でも、どんどん伸びてきている、その理由の説明がつかないではないか?
こんなことも言っていた。

これらは、すべて頭から『反論』しようと思えば、できないこともない主張ではあるが、たしかに『一面の真理』をとらえているところもある。
(同時に、林氏が、これらのいくつかのついては、『同意』をしているらしいことにも、私は注目した。)

ともかく、今日の中国は、果たしてどの程度の『矛盾』に直面しているのか、もう少し丁寧に見ていく必要があるのではと感じた瞬間もあった。

(つづく)