この記事は、昨日(19日)書いた次の記事の続きのような話である。
【台湾からの電話】カミさんが忘れていたこと 日本語のレッスン 新型コロナの急増  | 北京老学生・台湾から日本に本帰国 (ameblo.jp)
(照ノ富士の相撲の話を間にはさんでしまったが…。)


台湾で、新型コロナ感染の拡大が伝えられている。
これは、18日付の『東京新聞』に掲載された共同通信の記事。

17日現在の数字として、累計2017人の感染確認、うち15日以降が727人を占め、ほとんどが入境者以外の感染だったと書いている。

つまり、これまでは、感染者はほとんどなく、あったとしても『入境段階』(空港等の検疫)で発見したものばかりだった。
いわゆる『市中感染』と称されるものは、『ない』に等しい状態だった。

それが、この間(航空会社のパイロットらの感染が突破口だったとされているが)、いつの間にかこの『検疫体制』が突破されて、感染力の強い変異株というせいもあってか、あっという間に、台北市とか新北市など台湾北部を中心に広がってしまっているという。


実は、私は、こうした『再度の感染』というのは、十分あり得ると思っていた。
というのは、台湾は、(ある意味では、日本より先行した形で)外国人の介護労働者などの人材をあてにした状態にある。
(フィリピンやインドネシアの外国人労働者が、台湾の病院やら家庭やらで広く介護労働などに従事している。
そして、フィリピンやインドネシアなどでは、新型コロナの感染がかなり広がっているといわれてきた。)

これまでは、恐らくこうした外国人労働者たちに『我慢』をしてもらいながら、感染の拡大を阻止してきたのだけど、それにも限界があるのではという気がしてきたのも、事実である。

ところが、日本では(私の見ている限りでは)、『台湾は素晴らしい』とかもてはやすようなニュースばかりが消費されているようだ。
中には、『台湾は、日本びいきだから、新型コロナの拡大を防止出来ているのだ』と言わんばかりの、日本人の『自画自賛』に近いような情報も拡大していた。

ところが、台湾は台湾で矛盾を抱えている。
だからこそ、空港等でPCR検査等を厳しく実施し、『陽性』と判明したものは、その人権を一部、制限してでもその拡大を防止してきた。

また、感染が判明した場合は、誰のどのような動きが感染拡大につながったのか、その『感染経路解明』については、徹底して調査しているという印象を持ってきた。
(日本の場合は、『人権尊重』とか『個人情報保護』を名目として、極めて中途半端なことしかやっていないのは、これまで言われてきたことである。)

そのように厳しい措置をとっても、今回のように『突破』がされてしまっている。
つまり、それだけ『新型コロナウイルス』というのは、容易に(短期間で)克服することが難しい『難敵』『強敵』であるということなのだろう。


今回、気になるのは、例によって中国が台湾の人々の『人心混乱』を狙ったような動きをしていることである。

残念ながら、台湾政府はこれまで『コロナ感染拡大阻止』がある程度、うまくいっていたため、『ワクチンの確保』について出遅れてしまっていたようである。

それに対して、中国は<「台湾同胞は血を分けた親戚」として中国製ワクチンを提供する準備があると表明した>と報じられている(『東京新聞』19日付記事)。

中国に対して、『良い人々』『良い国家』『良い指導者』というような幻想を抱いている日本人の中には、『こうした好意は受けても良いのではないか』と素朴に感じる人たちもいるかもしれない。

しかし、中国の現在の指導部は、『台湾は中国の領土の一部』『台湾独立を志向する台湾政府は、売国奴』と見做しで、いざとなれば、『台湾に武力侵攻し、台湾政府の幹部の斬首作戦』を実行することを躊躇しないと公然と言い放っているような勢力である。
(かつて、存在した中国共産党における、比較的穏健で広い意味での『民主化』を志向する勢力も現在は、一掃されているようだ。あるいは残存していても、自身の『潔白?』を証明するために率先して、過激な言動に迎合しているようである。)

 

当然、台湾における『親中勢力』を増大させ、台湾の総統選や国会議員選挙等において、蔡英文を始めとする民主進歩党を追い詰めるために、このような『好意?』を名目とする作戦が提案されるに決まっているのだ。



(先に述べたような『幻想』、つまり)日本人が長く、ある種の『良識』として信じてきたもの(といっても、日本は同時に、外部において『弾圧』や『虐殺』が実行されるのをいわば黙認してきたのだから、その『良識』も『ダブルスタンダード』に基づくものに過ぎなかったという側面があるが…)は、今日では、よっぽど眉に唾をつけて話を聞かないと、とんでもないことになる。
(他方、日本政府は、『経済』というか利益のためには、『こうもり』のように動くという情けない評判を、『天安門事件』以降、国際的に勝ち取っている?という現実も忘れてはならないだろう。)



そして、厄介なのは、『台湾はとても大事だ』と叫ぶ人たち(ほとんどが、日本の戦前の台湾統治を丸ごと肯定する人たちだが…)のなかでも、逆に、『台湾のため』と称しながら、台湾における緊張激化を、自分たちの勢力の『存在』を宣伝する好機と見做しているような人々(安倍前首相や彼を支持している勢力などが代表例)もまた存在しているということだ。

この両方に対して『警戒感』を持つ必要がある。
本来、日本が台湾を支援するためには、日本から『ワクチン』を台湾に提供することこそが、望ましい措置であろう。

ところが、日本は、自国民のためのワクチンすらろくに確保することが出来ないでいる。
にも、かかわらず、(何のためなのか、はっきりしない)『東京オリ・パラ開催』を至上命題にしているかのような、矛盾とデタラメに陥っている。

日本は、自らの力(外交力、経済力、技術力、軍事力)等について冷静に見定め、それにふさわしい戦略を構築していく必要があるのだろう。
そのために、上に述べたような『2つの偏向』と戦いながら、『日本は何ができるのか』『日本は何をすべきなのか』を冷静に考えていくべき時期なのだろう。

『新型コロナ』というドサクサに紛れて、『今の憲法では何もできない』などと自らの愚策を棚に上げて、『憲法改正さえすれば、何とかなる』などと考えるべきではない。
と同時に、『憲法の改正(改悪)さえさせなければ、現状の良さ?を守ることが出来る』と考えてしまうのも、あまりにも現在の矛盾を見ていない恐れがあるような気がしている。