『虎ノ門ニュース』というインターネットの番組がある。
DHCという会社がスポンサーになっていて、いわゆる『愛国人士』と自称する人たちが勝手な放談をするという番組らしい。
 

 
1月28日に発信されたこの番組で、百田尚樹氏が安倍首相を大いに?批判しているという話をツイッターで聞いたもので、『本当なのか?』とかなり半信半疑であったが、いちおう、確認のために、この番組をユーチューブで探し出して、昨日(1日)視聴した。

 


 
この日のゲストは、例の(いつも『お騒がせ』の)百田尚樹氏と石橋文登という人。
 
石橋文登氏は、『産経新聞』の政治部長だったが、(経営不振で実施している)『早期退職優遇制度』に応募して、いわば『独立』したということである。
今の時代、ジャーナリストといえども目立たないといけない?ということで、『黒シャツ』姿をキャラにしているようだ。
 
 
ツイッターを見ていると、この日の番組(全部で2時間もあった)のなかで、安倍首相が習近平国家主席を国賓待遇で4月にも招待していることに関して、百田氏が強く批判し、石橋氏が安倍首相を擁護したので、『叱りつけた』というようなことがネットに出ていた。
 

 
これは、1月31日の『産経新聞』に出ていた、習近平来賓待遇での来日に反対する署名運動の呼びかけ。
(『頑張れ日本』というような名称で、いわゆる『右翼運動』を展開している人たちが主力のようで、呼びかけ人たちはそれほど『安倍応援団』のなかの多くを占めている人たちでもないようだ。)
 
このような『呼びかけ』が(『安倍応援団』を読者の基盤としているはずの)『産経新聞』に出ていたので、『さては、安倍支援母体が崩れていく兆しか?』とやや期待してこの番組の動画を探し出して視聴した。
 

しかし、結論からいうと、さほどのことはなかった。
 
まず第一に、百田氏が石橋氏を叱りつけたという場面が、どういうわけか、私の見たコンテンツでは含まれていなかった。
(もしかしたら、番組の最後の『おまけ』みたいな時間帯での場面なので、その後、『まずい』というような判断でカットしたのかもしれないと思った。)
 
ただし、次のような百田氏のツイートが紹介されていたので、安倍批判のトーンをにおわせていたのは確かではある。
(もっとも、百田氏というのは、しょっちゅう『もう作家はやめた』『小説を書くのはやめる』『ただし、今度発売される次の作品がヒットすれば別』などといったことをツイートしている人なので、かなり割り引いて話を聞く必要がある。)
 
 
今回の話のメインは、中国の武漢発とされている『新型肺炎』に関する話だった。
 
ここで、私が面白い?と思ったのは、百田尚樹氏がネットでの未確認情報をいろいろ紹介しながら、かなり怪しげな話を何の躊躇もなくしまくっていたことである。
 
私も中国政府の発表する内容は、常に『眉に唾を付けて』聞かなければならないような情報ばかりだと思っている。
さらに、中国の台湾に対する『武力侵攻』を含む『統一』に向けたシナリオを考えると、習近平国家主席を今の段階で、『国賓待遇』で訪日を求めるというのは間違った政策であると考える。
 
だが、それと『デマ』みたいな話をいつでも、どこでもばらまいていいということではない。
 

番組のなかでは、このような百田氏のツイートも紹介されていた。
 
元の『武漢には新鮮な食糧がある』という情報が、どのような内容のものか確認していないので、それの真偽のほどはわからない。
ただ、百田氏の言うことを聞いていると、どうもこの人は中国にはあまり行ったことはないようである(北京や上海には行っているのかもしれないが、地方の都市などには行っていないみたいだ)。
 

 
 
百田氏は、人口1000万の都市ということで、武漢市を東京都の23区と比較していた。
それで、東京都23区を『封鎖』すれば、人口1000万人の食糧(特に野菜など)は途端になくなってしまうはずということで、『中国のウソ』を告発していた。
 
だが、私は武漢市には行ったことがないが、(中国に住んでいた時に)四川省の成都市とか特に東北部の都市にはいろいろ行った経験がある。
また、上海の近郊の浙江省の市に住んだ経験もある。
 
そのような経験からすると、まず、中国の『市』というのは、とんでもない広さだったりする。
また、『市』というと都会的なイメージがあるが、ほとんどの場合、『農村部』的な性格を持った地域が、含まれている。

上記にあげたのは、武漢市の地図と、東京都の地図である。
 
まず、武漢市の面積(8569平方キロメートル)は、東京都の面積(2188平方キロメートル)の4倍近くもある。
百田氏の指摘した東京都23区でいうと、621平方キロしかないから、武漢市は東京都23区の面積の13倍強もある。
 
 
しかも、左(上)の地図で示された武漢市の地図を見ると、武漢市は13の区に区分されているようだが、そのうち、最も都市的な様相を呈している区域は、中心部の1から6の数字がつけられた区だという。
その区の周囲に、非都市的な地域と見られる7つの区が取り囲んでいる。
(この7つの区の合計面積のほうが、はるかに大きくなっている。)
 
それに対して、東京都の場合は、23区とその他の区域の比率は、図に見るとおりである。武漢市の場合とは大きく異なっている。
(ただし、東京の23区のなかにも、例えば練馬区など農業が盛んな地域も意外とあったと記憶している。)
 

このようにざっと見ただけでも、武漢市と東京都とは事情が異なっており、『武漢封鎖』というのは(実態としてどこまで『封鎖』しているのかわからないが)、日本でいえば、例えば『東京都、埼玉県、千葉県』を合わせて封鎖したくらいの話ではないかと思う。
(もちろん、千葉県などは海に面しているので、武漢市の場合とは事情が異なってくるだろうが…。)
 
ともかく、言いたいことは、その地域の実情をあまり知ろうともせずに、ネットやテレビで憶測をばらまくのは、『作家として、想像をたくましくして、小説を書く』ということなら許されるかもしれないが、それとは別次元の話になってしまう、ということである。
 
まあ、どちらにしても百田氏の書いた作品については、特に『ノンフィクション』めいた体裁のものなど、いろいろ民事裁判で敗北しており、最高裁で敗訴が確定したものもある。
百田尚樹氏は、いわば『お伽話』のストーリーテラーとして、とらえておくべきであろうと、改めて感じた。
 
それにしても、当初、百田尚樹氏との対談をまとめた『共著』を、自身の『著作物』として世間に発表していた、安倍首相というのは、一体、どういう総理大臣なのだろうかとも(改めて)思う。