前回、武田邦彦工学博士で、公害対策に市民運動が大きく関わったなりの果てを「敵を作る市民運動」で書き起こしてみた。
武田先生の論説を裏付ける各種資料を拾い出してみた。
 

まず、水俣市と四日市市の現状を「Google Map」の航空写真で比較してると、一目瞭然だと云えよう。
 
イメージ 1
水俣市の市街とチッソ工場跡地 (Google Map)
 
国鉄、肥薩線(現、肥薩おれんじ鉄道)の水俣駅(写真下端)の駅前に広がっていた日本窒素肥料株式会社(現、チッソ、JNC)だが、現在はJNC水俣製造所が一部に残るだけだ。画像上は、北西方向に八代海を望む。
 
イメージ 2
四日市市の工業地帯(Google Map)
 
近鉄名古屋線、海山駅方向から東方向に伊勢湾を望む。200mの超高煙突が林立するコンビナートは、地域発展を下支えしているのだろう。
 
地域偏差もあるだろうが、画像を見れば、2つの市の発展度合は、言わずもがなと云えよう。
 

武田先生の話にもあった「工業製造品」について、経済産業省「平成26年工業統計表 市区町村編データ」、「農林畜産品」については農林水産省「平成27年市町村別農業産出額(推計)」からデータを抽出しました。
 
従事者(就業者)1人当りの生産額
  工業製造品 農林畜産品
出荷額等
(万円)
従業者数
(人)
1人当り
(万円/人)
産出額
(万円)
就業者数
(人)
1人当り
(万円/人)
四日市市 317,992,223 32,313 9,841 837,000 2,556 327
水俣市 6,864,344 1,778 3,861 253,000 601 421
まず工業製品の従業者1人当りの出荷額は四日市市が9,841万円に達している一方、水俣市は3,861万円と大きな差が解る。
 
地域偏差を考えると、農業畜産品の産出額も併せて比較してみた。水産品の比較もしたかったのだが、市町村別の統計が出ていなかった。
金額から見ても工業生産高が指針になることは間違いないだろう。
 
人口1人当りの生産額
  出荷・生産額計
(万円)
人口
(人)
1人当り
(万円/人)
四日市市 318,829,223 311,031 1,025
水俣市 7,117,344 25,411 280
工業製品出荷額と農林畜産生産額を合計して全人口(法定人口)対比にすると、四日市市は1,025万円、水俣市は280万円と4倍近い格差になった。
 

1956年(昭和31年)水俣病公害問題には、水俣病被害者互助会、チッソ水俣病患者連盟、水俣病不知火患者会、水俣病被害市民の会など、およそ27団体が関わって、2017年現在も未だに闘争が続いている。国内有数の大企業が膨らみ続けた賠償金もあって、遂に2000年4月に上場廃止になった。
 
1967年(昭和42年)四日市喘息(ぜんそく)問題は、日本社会党や日本共産党など革新勢力が加害責任を熱心に追求する一方で、四日市市議会は、積極的に脱硫装置の普及、より硫黄分の少ない原油への切り替えなどにより大気汚染を改善した。
通産省(当時)、経団連と関連企業は、硫黄分の少ない原油の輸入を増やすと同時に脱硫装置の開発を研究した。
 
その町に暮らしている本来の市民の利益、幸福を考えれば、どちらが良かったのか?
 
市民の声は大事に保護されるべきだが、様々な思想信条や既得権益が入り込んで、実際に住んでいる市民と、かけ離れてしまうと、極めて不幸なことだろう。
 
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