「木彫り熊」人気再燃の理由 誕生100年 | ・・・ 瀬戸の夕凪 ・・・

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「木彫り熊」人気再燃の理由 誕生100年、「聖地」で探る

 

<写真>、、、八雲町郷土資料館・木彫り熊資料館の展示室

北海道八雲町で 2024年3月7日、貝塚太一撮影

 

 北海道の木彫り熊の人気が再燃して久しい。

今年は誕生から100年の節目。

発祥の地・八雲町で「聖地」と全国のファンから呼ばれている喫茶店を訪れた。

 

 JR八雲駅前にある「軽食&喫茶 ホーラク」。

扉を開けると、表情豊かな熊たちが迎えてくれた。

夜に酒も飲めるという店内は、八雲の木彫り熊が所狭しと並ぶ。

木彫り熊を「土産物」から「芸術品」に昇華させた故・柴崎重行氏らの作品も数多くあり、客は手に触れることも写真を撮ることも自由だ。

 

 店主の山戸広史さん(65)が木彫り熊を収集し、展示を始めたのは15年ほど前だった。

「木彫り熊を目当てに来るのは若い人が多いし、女の人が多い。

なんなんだべ」と笑う。

 

 特に人気なのが、柴崎氏による木の素材をそのまま生かした抽象的な作品。

「かわいい」との声が多く上がるという。

 

 木彫り熊の喫茶店と認識して訪れる客から聞こえ始めたのが「お土産としてほしい」というリクエスト。

ホーラクの常連客で元花屋の小熊秀雄さん(77)も耳にした。

「何とかしたいね」と山戸さんらと話し、7年ほど前に木彫り熊づくりに挑戦することを決めた。

 

 もともと柴崎氏の木彫り熊のファンだったという小熊さん。

数少ない資料をひもとき、独特の彫り方を研究して独学で彫り始めた。最も重視したのは柴崎氏の「木の個性を生かす」という考え方だった。素材の木をさまざまな角度から何度も何度も見ながら、熊のイメージがひらめく時間を待つという。

 

 小熊さんは工房を開き、木彫り熊を制作、販売する傍ら、2年前から体験教室も始めた。

受講生のほとんどは本州からの観光客で、8割以上が30~40代前後の女性だ。

手順に沿って、顔や耳、足などを削れば、3時間ほどで自分だけの木彫り熊が完成する。

 

 「一彫りミスをしても「それも個性」と話します。

そこからまた木をじっくりと見て、彫り進める。

みなさん、自分の作品に大満足して持って帰ります」。

 

 新婚旅行で八雲を訪れて記念につくる夫婦もいれば、定期的に作品をつくっては千葉県から教えを請うために何度も工房を訪れる人もいるという。

 

 山戸さんも趣味で彫り道具を手にとる。

「継承という大げさなものでもない。まず、木彫りに興味を持ってほしい。自分の熊ができた喜びを知ってほしい。

実際の木に触ること、実際に彫ること。

やり始めたらあっちゅう間に時間たつよ」と話す。

 

 町郷土資料館・木彫り熊資料館の大谷茂之学芸員(38)は

「農家の副業として始まった木彫り熊だったが、副収入を得るだけでなく、趣味を持って豊かな生活をするという意味合いもあった。

木彫り熊は、この原点に返っていくのではないでしょうか」と言う。

 

 過去の職人が生み出した作品の数が増えることはない。

それでも、作品に宿る八雲の先人たちの精神は、木彫り熊づくりを体験した人たちに引き継がれ、広がっていく。その未来が見えた。

【貝塚太一】

   ◇

 

 八雲町の木彫り熊は、町を開拓した尾張徳川家19代当主の徳川義親が1922(大正11)年、スイスから全長10センチ弱の民芸品を持ち帰り、農閑期の副業として制作を推奨したことが発祥とされる。

24年に第1回農業美術工芸品評会で北海道第1号とされる木彫り熊が出展された。

<記事引用>