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睡眠の質を改善するにはどうすれば? 

医師が教える快眠できなくなったときの対処法

 

 なかなか寝つけない、眠りが浅くて途中で起きてしまう──。

そんな睡眠の悩みを抱えている人もいるだろう。

健康的な生活には「よい眠り」も大切な要素だ。

快眠するために、どのようなことに気をつければいいのか。

アンチエイジングクリニックを開院した医師・満尾正氏の新著「ハーバードが教える 最高の長寿食」(朝日新書)から一部を抜粋、再編集して解説する。

* * *

 

 睡眠については、科学の進歩によりさまざまなことがわかってきました。

体の発育や修復を担う成長ホルモンは睡眠中にしか分泌されないということが知られていますが、もう一つ、睡眠中に脳細胞の隙間がわずかに拡張し、隙間が広がったところに脳脊髄液が流れ込み、起きている間には処理することができなかった老廃物を洗い流していることも明らかになりました。

 

 つまり、睡眠とは脳のクリーニングタイムであり、質の高い睡眠が十分にとれないと、脳の老廃物がたまってしまうのです。

健康的な生活はまず「よい眠り」からと言っても過言ではありません。しかし、現実には「寝つきが悪い」「眠りが浅くて途中で目が覚めてしまう」といった睡眠の悩みを抱えている人が多く、睡眠の質も年齢とともに低下すると言われています。

 

 睡眠の質を改善するには、一つは生体リズムに沿った生活をすることです。

これには誘眠ホルモンと言われる「メラトニン」が深く関わっています。

メラトニンは人間だけではなく、植物から動物までほとんどの生物が分泌しているホルモンで、それほど根本的な生命活動に関わるホルモンと言えます。

 

 メラトニンは毎朝、起きて太陽の光を浴びてから14~16時間後に増え始めるようにセットされ、だいたい午前2~4時ごろにピークに達します。

朝になると減少し、日中は少ないまま、夜になると徐々に増加していき、眠気を誘います。

 

 このメラトニン分泌のサイクルが正常に働くように、睡眠・覚醒のリズムを毎日、規則正しく刻むことが大切です。

他にも日中に適度な運動をする、日光を浴びるなど睡眠の質をよくする工夫はさまざまですが、栄養状態も睡眠に影響を及ぼしています。

 

 メラトニンの原料は、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」です。

トリプトファンというアミノ酸を原料としてセロトニンが作られ、最終的にメラトニンに変化します。

そして、メラトニンが体内で産生されるためにはビタミンB6を必要とします。

 

 メラトニンは、睡眠を助ける作用以外にも、抗がん作用心不全の予防・改善骨を強くするなど、さまざまな効能があることがわかっています。

強い抗酸化作用もあり「不老長寿のホルモン」とも言われています。

 

 メラトニンをサプリメントで補充する方法もありますが、残念ながら日本国内での販売は医療機関からのみ認められています。

服用を希望する場合には、アンチエイジングクリニックや睡眠専門クリニックなどの医師にご相談されることをおすすめします。

 

 「グリシン」というアミノ酸にも睡眠をサポートする働きがあることが知られています。

グリシンは、ホタテエビなどに多く含まれており、甘エビの甘さの正体がグリシンです。

神経伝達物質として働くほか、骨や筋肉、皮膚を構成するコラーゲンの材料となります。

 

 グリシンには、深部体温を低下させて入眠へ導く効果があることがわかっていますので、就寝前にグリシンを摂ることで睡眠の質をよくすることが期待できます。

また、コラーゲンの生成に欠かせないビタミンCも合わせて摂ることで、骨、血管、皮膚などを強くする作用も期待できそうです。

 

 メラトニンの分泌を妨げてしまう生活習慣には、就寝前に大量のアルコールや甘いものを摂ることなどがあります。

良質な睡眠をとるためには、就寝の2~3時間前には食事を終えておくことが望ましいと言えます。

また夕食には血糖値を上げる糖質中心ではなく、良質なたんぱく質を中心に摂るように心がけましょう。

 

■ 週3回、20~30分の日光浴習慣

 

 メラトニンを分泌し、夜の睡眠をサポートするためにも、朝、日光を浴びるということが重要です。

睡眠のリズムを改善するには「早寝早起き」ではなく、朝の光を起点に「早起き早寝」に変えてみてください。

「明日の夜11時に寝たいので、夜7~9時にメラトニンが分泌されるように朝6時に起きる」というように逆算して考えるのです。

 

 もう一つ重要な太陽の恩恵は、太陽光を浴びることでビタミンDを作れることです。

ビタミンD骨を強くするだけでなく、免疫力の調整認知症予防動脈硬化予防糖尿病予防など、多方面に力を発揮するスーパービタミンで、ほとんどの日本人に不足しています。

 

 紫外線を必要以上にカットしすぎることもビタミンD不足の一因ですので、一定程度は日光を浴びるようにしましょう。

適度な日光浴であれば皮膚がんの心配はありません。

 

 年齢、体型、肝臓の機能などによって、同じ時間紫外線を浴びてもビタミンDの血中濃度は違ってきますが、一般的には夏の期間であれば、半袖半ズボンで昼間の太陽を20~30分ほど、週3回浴びることで、十分なビタミンDを補充することができるとされています。

 

 秋から冬にかけては日照時間が減り、当然、体内で作られるビタミンDの量も減ってきます。

意識してサプリメントなどで補う量を増やすほうがよいでしょう。

また、高齢者の場合、同じ時間、紫外線を浴びても若年層と同量のビタミンDを作ることはできませんので、意識的に食事やサプリメントから補充する必要があります。

 

 太陽光を浴びることの健康に対する影響は計り知れないものがあります。

昔から日本では「朝日を浴びることは健康の礎」「日の出を拝めば寿命がのびる」などと言われてきましたが、米国でアンチエイジング医学を学んだ恩師のクリニックにも、英語で同じような標語のようなものが掲げられていました。

生命活動の基本は、どこの国も同じなのです。

 

● 満尾 正(みつお・ただし)

 

満尾クリニック院長・医学博士。日本キレーション協会代表。

米国先端医療学会理事。日本抗加齢医学会評議員。

1957年、横浜生まれ。

1982年、北海道大学医学部卒業。

内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療に従事。

ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、2002年、日本初のキレーション治療とアンチエイジングを中心としたクリニックを赤坂に開設、2005年、広尾に移転、現在に至る。

主な著書に「世界の最新医学が証明した長生きする食事」「食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術」(アチーブメント出版)、「世界最新の医療データが示す 最強の食事術」(小学館)、「医者が教える「最高の栄養」」(KADOKAWA)など多数。

<記事引用>