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漁港が港じゃなくなった…能登半島地震で壊滅した漁業の

再興を考える 「新たな港」か修復か

 

<写真>、、、地盤が隆起し、干上がった黒島漁港

1月29日、石川県輪島市門前町で、本社ヘリ「まなづる」から

 

<写真>、、、地盤が隆起した富来漁港

1月27日、石川県志賀町西海風無

 

 能登半島地震から1カ月。海底隆起などで甚大な被害を受けた漁港や漁船はほぼ手付かずだ。

復旧・復興には政府の支援が不可欠だが、高齢化と人手不足が進む北陸の漁業再生の道筋をどう描くのか。

東日本大震災の経験は生かされているのか。

(山田祐一郎)

 

◆ 石川県の60港が損壊・地盤隆起、富山や新潟でも被害

 

 「熊本とは違った対策が必要だ。漁港の隆起はあまり前例がない」。

先月23日、坂本哲志農林水産相は、2日前にヘリコプターで上空から視察した漁港などの印象を述べた。

 

 農水省によると、今回の地震で最も被害が大きかった石川県は30日現在、69漁港のうち60港が損壊や地盤隆起の被害を受けた。

 

 転覆や沈没、座礁などの被害を受けた漁船は230隻以上。

荷さばきなどを行う水産業共同利用施設や漁業用施設は50カ所以上で損壊が確認された。

能登半島の漁業は停止状態だ。

 

 富山県も、岸壁や護岸が沈下したり、道路が破損したりした漁港が10カ所。

給油施設などの共用施設35カ所が傾いたり破損したりした。

新潟県では、3漁港の道路が破損したほか、共同利用施設7カ所が液状化の被害を受けた。

 

◆ 支援「東日本大震災と同様」でいいのか

 

 全国漁業協同組合連合会(全漁連)は15日、生業復興への支援を政府に要請。

大日本水産会も同日、被災した漁業者や水産加工業者の再建支援を要請した。

 

 政府は26日、被災者支援の政策パッケージをまとめ、予備費を財源に1553億円を支出することを閣議決定。

水産業など1次産業についても、復旧費用補助や設備資金の貸付限度額引き上げ、5年間無利子化などの支援を盛り込んだ。

 

 水産庁の担当者は「金融支援は東日本大震災などと同様の対応だ」と説明するが、支援は十分なのか。

 

 「被災前に戻すだけではだめだ。その先を見据えた支援が求められている」と話すのは映像プロデューサーの田中敦子さん(81)。

東日本大震災で被災した宮城、岩手県の水産加工業の経営者を10年以上にわたって取材し、ドキュメンタリー映像にまとめた。

 

 取材した業者には、再建に成功しても二重ローンの返済や業績悪化に苦しみ、倒産したケースもあったという。

「当時は建材価格が10倍に高騰し、融資がさらに膨らんだ。今回は万博も重なり、もっと深刻となるのでは」

 

 人口減少が顕著な東日本大震災の被災地。

「再建できても、今も事業を続けられているのは半分程度。政府はどこまで検証して、今回の災害に対応しているのか」

と疑問を呈する。

 

◆ 復旧までの支援、担い手の高齢化…多くの課題

 

 今回、とくに目立った漁港の損壊。

水産庁の担当者は「漁港はインフラであり災害復旧事業として国が支援する。今回は隆起というこれまでに経験したことがない被害が生じており、まずは実態調査を急ぐ」と話す。

 

 元の状態に戻すのか、新たな場所に移すのかは「地元自治体や漁業者の意向を踏まえた上で決めることになる」という。

 

 被災した漁港を調査した金沢大の青木賢人(たつと)准教授(地理学)は「コストはかかるが、しゅんせつや掘削工事である程度は復旧は可能だろう。

 

 輪島市の鹿磯(かいそ)漁港では海底が最大4メートル隆起しており、新たな港が必要になるかもしれない」とみる。

それ以上に大きな問題として

「復旧まで漁業者をどう支援するか。ハードを復元すればいいという話ではなく、そもそも高齢化している奥能登の漁業の再編も迫られる」

と指摘する。

 

 その上で漁業復興に向けて行政にこう求める。

「今後、すべての港を復旧するのではなく必然的に選択と集中が行われることになる。

それには地元漁業者の合意形成が必要。

まずは早期に政府や県が、復興に向けた基本的な方針や時間的な見通しを示すことが重要だ」

<記事引用>