大正7年創業の駅そば店・日栄軒、
丼からはみ出す巨大穴子天が話題
<写真>、、、どこか歴史を感じさせる日栄軒の外観
店にはひっきりなしに客が来る
横浜市神奈川区のJR東神奈川駅3、4番線ホーム
JR東神奈川駅(横浜市神奈川区)の立ち食いそば店「日栄軒」の穴子天そばが人気だ。
丼からはみ出すほど大きな穴子天ぷらがSNSで評判となったのがきっかけという。
寒さが一段と厳しくなる季節、温かなそばが身も心も温めてくれるようだ。
衣をつゆにくぐらせ、崩しながら食べるのもおすすめ=JR東神奈川駅の日栄軒
カウンターに5~6人も並べば満席の日栄軒。
営業は午前6時15分から。
朝のラッシュ時やランチタイムは次から次へと客が入ってくる。
50代の会社員男性は「できあがるまでの時間が早いし、量もある。しかもおいしい」と言う。
同店によると、1918(大正7)年の創業以来、続いている自家製つゆも自慢という。
カツオだしを利かせた、濃いめの関東風つゆ。
これがまた、天ぷらの衣とよく合う。
「インパクトのあるメニューを」と2005年ごろに穴子天を始めたが、当初は珍しがられるだけで、いま一つ人気がなかった。
だがここ数年、「インスタ映えする」とSNSなどで取り上げられたことがきっかけで注文が続出。
以前は1日20杯も売れればよかったが、いまでは100食以上売れる日もあるという。
穴子天は地元の天ぷら店に製造を依頼している。
もちろん、かけのほか、コロッケやいか天も人気メニュー。
最近はトッピングのネギを増量で注文する客も増えたため、30円の追加料金で対応している。
「ネギを汁にたっぷり浸して食べる人が多いですね」
と日栄軒の従業員。
JR東日本横浜支社によると、東神奈川駅はJR横浜線の前身である私鉄・横浜鉄道の始発駅として1908(明治41)年9月に開業した。
日栄軒の創業は、横浜鉄道が国有化された17年の翌年だ。
関東大震災や横浜大空襲で駅は大きな被害を受けたが、店の歴史は絶えなかった。
最近は女性客を意識し、スタイリッシュに改装した店も増えている駅そば業界。
テナント料を稼ぐ「エキナカビジネス」として鉄道業界も魅力を感じているという。
だが、ホーム上での立ち食いそばを続けている店は全国的にも減りつつある。
大正、昭和、平成、令和……。
外観からも長い歴史がにじむ日栄軒。
堀江千賀子社長は言う。
「「おいしかった」「ごちそうさまでした」と、笑顔で言って下さるお客様の言葉が励みです。
この味を守り続けていきたい」
(編集委員・小泉信一)
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関西の人が関東の駅そばを食べて驚くのは、つゆの濃さだろう。
関東はカツオだしを利かせ、濃い口しょうゆで味付けすることが多いが、関西は薄口しょうゆが主流。
コンブやサバ節なども使うことが多い。
東西の境界駅はどこか。
「東西「駅そば」探訪」(交通新聞社)の著者、鈴木弘毅さん(50)はJR東海道線なら関ケ原駅(岐阜県)としている。
薬味も東西で違う。
「つゆの濃いめの味付けに合わせるため、東では薬味のほとんどが白ネギだが、西では甘いぬめりのある青ネギが多い」
「月見そば」も関東では割った生卵をそばにのせ、夜空に浮かぶ満月のように見せるのが多数派。
関西では丼に盛った麺の中央あたりに生卵をのせ、その上から温かいつゆを注ぐ割合が高いという。
「白身がうっすら凝固して半熟状になり、関西人好みのまろやかな味わいになる。見た目は「おぼろ月」のような感じでしょうか」
<記事引用>