どうして不動産の相続でトラブルになってしまうのか?

トラブルになった様々な事例を分析していくと、2つの主な原因が浮かび上がります。

それは、不動産を持っていても現金が不足する場合が多い、不動産は分割ができない、という2点。

これは他の財産とは異なる不動産に特有の特徴です。

この2点がなぜ相続でトラブルになるのかご紹介していきます。

 

不動産の二大悪、現金不足と分割の困難さ

不動産の相続をめぐり”争族”になってしまったケースで最も多い例を紹介します。

親は長男一家と同居、主な財産はその自宅

親が亡くなり喪主を務めた長男に対し、葬式後に次男は長男に対してねぎらいの言葉と一緒にこのように告げます。

 

「兄さんたちは親父の家にこのまま住むだろ、だったら俺が相続する権利分は別のかたちで考えておいてくれよ。」

 

親が遺した財産は自宅以外に現金はほとんどない。

もちろん自宅を半分に割ることもできない。

もし弟が相続する分を現金で用立てるなら自宅を売る以外に方法が見当たりません。

まさに現金不足、分割の困難さから長男は途方に暮れてしまいました。

どうして不動産の二大悪が相続トラブルを招くのか

不動産はとても価値ある財産です。

都市部の不動産なら一つあたりの価値は数千万円を下らないでしょう。

自宅であれば多くの方が人生最大の買物として購入、子供たちの教育資金や老後の生活資金で現金は十分に残されてていない場合が多くなります。

収益アパートなどをお持ちの方でも、建設や購入の際の借入返済、税金、管理費、修繕費と何かと支出が多く、あまり多くの現金が手元に残らないことがほとんどです。

 

つまり不動産という価値ある財産をお持ちでも、それ以外に現金は十分にない方が多くいる。

また現金や金融資産であれば相続する人数分で割ることも容易ですが、不動産は分割が困難です。

上の事例のように不動産を誰か一人が相続すると、他の相続人の分をどうやって工面するのか困難に直面する、という事態が多くの場所で実際に起きています。

不動産の二代悪に対してどうやって備えればいいか

この場合、どのような備えをしておけば良かったのでしょうか。

備える方向性として【財産の分け方】【現金の用意の仕方】の2方向から考える必要があります。

 

まず【財産の分け方】から。

相続人全員が平等に近いかたちで相続するなら不動産をもらう人以外は別の財産でもらうことになります。

そのための財産が十分にないなら、どうしても「割りを食う」人が出てきます。

そう言った人に対して「長男は老後の世話をしてくれたから」といったかたちで不平等さを納得してもらえる説明を”親が”あらかじめしておくことが大切です。

親の意思が明確であれば多くのトラブルは防ぐことができます。

 

次に【現金の用意の仕方】です。

上の事例の場合、長男には自宅を、次男にはある程度の現金を残すといいでしょう。

現金を用意するために例えば親に生命保険をかける、という方法が考えられます。

生命保険は親の年齢が高齢になるほど、払込期間が短くなるほど、保険料負担も重くなります。

ですので早く始めるに越したことはないですが、負担が重い場合はその負担を考慮して生活設計を見直す必要が生じます。

少々厳しい言い方になりますが、相続後に相続人が苦労するか、今の内に自分が苦労するか、選ぶ覚悟を持つことこそが必要です。

そしてその苦労も準備が早ければ早いほど楽になります。

まとめ

不動産を持っていても現金は十分でないことが多い。

不動産は分割ができない。

そのため不動産を相続しない人に代わりに何を渡すかが問題になります。

対策としては【財産の分け方】について、不動産を相続しない人が納得感を持てる説明をあらかじめしておく。

【現金の用意の仕方】について、十分な現金を用意できるようなるべく早く準備を始める。

いずれにしてもしっかりとした対策が重要です。

 

 

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