前回の記事では、不動産相続の流れを説明しました。
今回はその流れに沿って、より細かく手続きを説明します。
手続きを把握することで不動産相続への不安を解消するのが目的です。
一般的な相続に必要な手続き
相続発生直後
死亡届を提出
【どこに?】市区町村役場
【いつまで?】死亡を知った時から7日以内
年金の手続き
年金受給を停止する手続きをします。
【どこに?】年金事務所
【いつまでに?】
・国民年金の場合:亡くなった日から14日以内
・厚生年金の場合:亡くなった日から10日以内
健康保険の手続き
保険証を返納します。
【どこに?】
・国民健康保険の場合:市区町村役場
・勤め先で加入した健康保険の場合:勤め先
【いつまで?】亡くなった日から14日以内
死亡保険金の請求
【どこに?】生命保険会社
【いつまで?】明確な期限はないが、時効は3年
【必要なもの】保険証券など証券番号がわかるもの
公共料金の引き落とし口座変更
死亡した人の口座は凍結されます。引き落とし口座を変えなくてはいけません。
【どこに?】水道、電気、ガスの供給元
【いつまで?】次の引き落としまで
戸籍謄本の取得
戸籍謄本で相続人を確定する必要があります。
・亡くなった方の出生から死亡まで連続した戸籍
・相続人全員の現在の戸籍
・子供がいない場合、亡くなった方の両親について出生から死亡まで連続した戸籍
がそれぞれ必要になります。
【どこで?】市区町村役場
出生から死亡まで連続した戸籍を集める場合で、本籍地を異動したことがあるなら全ての市区町村役場から戸籍を取得する必要があります。
【なんのため?】相続人を確定するため
【いつまで?】なるべく早め
相続人が確定しないと相続税の申告、遺産分割の話し合い、名義変更のどれも進められなくなります。
出生から死亡までの戸籍を全て集めるのはかなり大変ですので早めに準備を始めた方が良いです。
遺言書の有無を確認
【どこで?】
多くの場合は自宅。弁護士などに預けてあることも。
公正証書遺言がないかどうかは公証人役場に問い合わせる。
遺言書の開封
○自筆遺言
偽造や書き換えを防ぐために、第三者立会いのもとで「検認」という手続きをします。
【どこで?】家庭裁判所
【どうやって?】発見した遺言書を家庭裁判所に提出する
○公正証書遺言
公正証書遺言は作成の時点で本人が作成したことを公的に証明されているので、謄本という写しがあれば開封の手続きは必要ありません。
相続財産の調査
上までは言ってみれば事前準備。
相続財産に何があるのか漏れがないように確認していきます。
・プラスの財産
・マイナスの財産
をそれぞれ確認する必要があります。
プラスの財産
○不動産
・毎年届いている固定資産税課税明細を確認して、どの市区町村に不動産があるかを把握する
・それぞれの市区町村に名寄せ帳を請求して所有する不動産の一覧を確認する
○預貯金、生命保険、株や投資信託などの金融商品、車、これから受け取る年金
マイナスの財産
○借金、これから払う公共料金、これから払う税金、葬儀費用
相続放棄、限定承認、単純承認の選択
前回の記事で説明した、借金の方が多いから相続したくない場合などに相続放棄、限定承認という手続きをします。
【どこで?】家庭裁判所
【いつまでに?】相続開始を知った日から3ヶ月以内
遺産分割協議書の作成
遺産をどう分けるか話し合ったら「遺産分割協議書」という書面にします。
遺産分割協議書には相続人全員の署名と押印が必要です。
税理士、弁護士、司法書士、信託銀行などの専門家に依頼することが通常です。
預金や株式などの名義変更
【どこで?】銀行、証券会社など
【必要なもの】遺産分割協議書と銀行や証券会社所定の書類。多くの場合相続人全員の印鑑が必要。
相続税申告・納税
相続財産を全て確認し、遺産をどう分けるか確定することで相続税の申告書が作成でき、それぞれの相続人の納税額が決まります。
特別な理由がない限り税理士が作成します。
【いつまで?】相続開始から10ヶ月以内
ここまでが一般的な相続に必要な手続きです。
不動産相続に特有の手続き
不動産相続の場合には通常の相続手続き以外にも手続きが必要になります。
相続登記
不動産の名義変更を相続登記と言います。
特に2024年4月1日から義務化されるので絶対に忘れてはいけません。
【どこで?】法務局
【いつまで?】特に期限はありませんがなるべく早く
不動産からの収入がある場合
準確定申告
親が不動産から収入を得ていた場合は確定申告をしていたはずです。
亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの収入と支出を計算して「準確定申告書」を作成しないといけません。
【いつまで?】亡くなった日から4ヶ月以内
賃借人への通知と賃料振込口座の変更
アパートや駐車場などを借りてる人から見れば、貸主が亡くなり、相続人が新しい貸主になります。
多くの場合は「地位承継の覚書」というものを作成して相続人が新しい貸主になったことを貸主と借主の双方で確認します。
また賃料の振込口座も変更になるはずですので、その通知をします。
おわりに
不動産相続の手続きと費用について
- その1(前回記事)では大まかな流れを説明し
- その2(本記事)では手続きをより細かく説明しました。
- その3(次回記事)では手続きにかかる費用を説明します。