人類共通のパラダイム(認識方式)には、大別すると3つのパターンがあります。

①部分だけをとる
②違いだけをとる
③過去とつなげてとる

それぞれ、どういうことか、体験しながらみていきましょう。

部分だけをとる

この四角の中の点をつなげて花をかいてください、といったらあなたはどんな花をかきますか。ペンをお持ちの方は実際にプリントアウトして記入してみてください。ちなみに点はいくつつなげてもOKです。

ちなみに他の人がどんな点をつなげて花をかいたかというと・・・













こんな感じでした。


ある人は、花びらがある花を描くでしょうし、またある人は漢字の花を書くことでしょう。なかには葉を付けた花を描く人もいるかも知れません。このように、どの点をどのようにつなぎ合わせるのかによって、できあがる花はまったく違った花になるのです。

この点(星)が事実だとすると、点をつなげてできあがった花(星座)は思い込みや先入観を意味します。

警察では「初動捜査の思い込みは禁物だ」と言われますが、人間の脳は一旦思い込んだことに合わせて事実を解釈する傾向があります。例えば、嫌な上司だなと思い込んだら、部下を育てる為の厳しい言葉も小言に感じるし、愛情をもって接してくれる態度もうっとおしいおせっかいだと認識してしまいます。

例えば、ドラマのような話ですが「火葬場で焼かれて灰と骨だけになった父の遺体のなかから、ハサミのような医療器具が見つかった」「父の手術に立ち会った医師のうち1人が、父の手術後にすぐ医者を辞めている」という事実をつなぎ合わせて、「辞めた医者が医療ミスの犯人だ」と思い込んだ人がいました。その医師を父の仇だと信じて探し出し、殺そうとしたら「実は医療ミスを告発しようとしたら、病院をクビになった」ことが判明し、自分が見ていた世界の認識(パラダイム)が180度ひっくり返されることだってあります。

人は自分が認識した事象だけをつなげて、自分勝手な思い込みの星座をつくります。また、五感覚の限界もあるので、相手の表情・言葉・行動を知覚することはできても、その背景にある判断基準やイメージは簡単には見えません。このようにして、自分の経験したこと、自分が見た・聞いた情報だけをつなぎあわせて、人は思い込みの星座という先入観を生み出し、それを基準に人生を生き、様々な選択・判断をするようになるのです。


違いだけをとる


部屋の奥にあるケーキと手前にあるケーキは同じ大きさなのですが、遠近法からくる思い込みがフィルターとなって奥のケーキが大きく見えてしまいます。同じサイズのはずなのに、周りのものと比較してしまって「違う」ように見えますよね?では、仕組みがわかった上でもう一度図を見てみてください。理解していると同じサイズに見えるでしょうか?

これがまさに脳の機能のひとつで、頭で解かっていても「違って」見えてしまうのです。

こういう錯覚の絵には慣れていらっしゃる方も多いかも知れませんが、現実でも年が近い同僚と比較して部分だけを取り、ちょっとした違いをとって、「あいつの方ができる/できない」と判断することはないでしょうか?仕事以外の面や、影の努力を無視して結果という「部分」だけを見て、自分との「違い」を比較して判断してしまうのが脳が常にやっていることです。


過去とつなげてとる

ある口の利けない人が歯ブラシを購入しようとしています。彼は歯を磨くジェスチャーをして、店員にうまく伝えることができたので目的の歯ブラシを買えました。

次に、ある目の見えない人が、自分の目を隠すためにサングラスを買おうとしています。さて彼はどんな風に表現をすれば、うまく店員に伝わると思いますか。











答え : 彼の場合は口を開けて『サングラスをください』と云うのがよい

この問題のトリックは、2つ目の問いの前提条件に(脳が無意識のうちに勝手に)1つ目の「口が利けない」を入れてしまっていることにあります。お店にきた二人は別人であるにも関らず、勝手に「過去とつなげて」考えてしまうのが脳の認識の癖のやっかいなところです。

例えば、友人に「港区に住んでる女性とは付き合いたくない」という男性がいました。理由を聴くと、「自宅が港区にある女性は、遊び人で軽い人が多いから」とのこと。その理由を尋ねると「これまでに出逢ってきた人が皆そうだったから」「あと、友達の意見も同じだったから」ということでした。彼と彼の友達の観点では過去の経験、相手のイメージとつなげた結果、「港区の女性=軽い」という自己流の論理が「事実」となったようです。もちろん、港区にお住まいの主婦やお婆様全員がそうである訳もありません。

このように、自分が認識した「部分(事実)」だけをとり、他の区に住んでいる同年代の女性との「違い」を比べて、これまでに付き合った人の「過去のイメージ」とつなげて思い込みの星座(本人の認識では事実)を創造しているのが脳の機能的な特徴です。


まとめ
人類共通のパラダイム(認識方式)には3つのパターンがあります。

①部分だけをとる
②違いだけをとる
③過去とつなげてとる

この認識のクセは、脳がもっているクセなので、どうすることもできませんが、人類皆共通です。部分だけとって思い込みの星座を描いてしまうこと、違いだけをみて解釈してしまいやすこと、無意識に過去とつなげてとって判断していることを考慮に入れて、思い込み(錯覚)にはまらないよう過ごしていきましょう。