『PERFECT DAYS』(日独合作・2023年) | Cinéma , Mon Amour.。.:*☆

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わたしの右脳は洋画で
左脳は邦画で出来ておりまする╰(*´︶`*)╯

皆さま

こんにちは



2024年も

どうぞよろしくお願い申し上げます



そして

此度の地震で

被災された皆さまには

衷心よりお見舞い申し上げます。


、、、


ではいつものように


本日ご紹介する映画は


『PERFECT DAYS』



平山(役所広司)は公共トイレの掃除人


彼は

東京スカイツリーのお膝元に建つ

古いアパートに一人で住んでいる


彼は

毎朝、近所のおばさんが庭先を掃く

竹ぼうきの音を時計代わりに目覚めると

身支度を整え自販機で買った缶コーヒーを手に

車に乗り込み職場へと向かう


彼は

道中、カセットテープからセレクトした

アニマルズの『朝日の当たる家』だったり

オーティス・レディングの『ドッグ・オブ・ベイ』

だったりを聴く


彼は

バディを組むイマドキ青年タカシ(柄本時生)に

『無口すぎて何考えてっか分からない』と

揶揄われるけれど、タカシのことは嫌いではない


彼は

勤務を終えると

自転車で銭湯へ向かい汗を流し

行きつけの店で焼酎と付き出しを夕餉とし

帰宅後は、文庫本を手に睡魔が襲うに任せる


休みの日には

仕事着をコインランドリーで洗い

趣味で撮った写真のネガを焼き増しに

写真店に立ち寄り、古本屋で文庫本を一冊買ったら

歌の上手いママさん(石川さゆり)がいるスナックで


一杯ひっかけ、

そしてアパートに帰る


変わり映えのしない毎日だけれど

時にイレギュラーは起きるわけで

或る夕刻のこと、姪のニコ(中野有紗)が

平山を訪ねてきた


ニコは母親(麻生祐未)と喧嘩をして

家出してきたのだった、、、

 


*・゜゚・*:.。..。.:*・''・*:.。. .。.:*・゜゚・*

 

誰もが快適に使用出来る

公共トイレをコンセプトに

日本財団が企画した『THE TOKYO TOILET』

(今年から東京渋谷区に維持管理等移管)


このプロジェクトのPRのため作られた

『PERFECT DAYS』


今作の肝である

役所広司さん演じる平山という男の

キャラクターでありアイデンティティであり

バックグラウンドであり、に思いを巡らせ続けた

124分、、、


そのライフスタイルから

几帳面で、真面目、そして

孤独を好む傾向が伺えるものの

社会を遮断しているわけではない


行政が絡む手堅い職場に就き

ちゃんと国民の義務も果たしていそうです


人とのソーシャルディスタンスは広めだけれど

関わりを持たないわけでもない


馴染みのホームレスの男性(田中泯)を気懸けたり



仕事中迷子を見つければ

手を繋ぎ一緒にお母さんを探してあげたりもする


例え感謝もされず

母親が平山と繋いでいた我が子の手を

除菌シートでゴシゴシ拭こうとも彼は怒らない

寧ろ微笑んでいたりするのです


読み解けたことは

何度も何度も他者からの攻撃を受け

それを乗り越えて今の彼が有るのではないかということ。


紆余曲折を経てもはや何人も

彼を傷つけることは出来ない、、、

その域に達しているのではないかということでした。


だから惹句に

『こんなふうに生きていけたなら』とあるのかなって。


わたしもね

一人になりたいって思う時がありますよ

妻として、母として、子としての責任を全部ぜーんぶ

うっちゃって自由になりたいなって、、、


でもそれは出来ない

人が一人いなくなるってことは

思うよりずっと、影響は大きいですから

迷惑はかけられないです


勿論、大前提に家族が大切ってことがありますよ


当然、平山にも家族はいるわけで


運転手付きの高級車で

平山の元に身を寄せていた娘を迎えに来た

麻生祐未さん演じる妹が、


『お父さん施設にいてももう昔みたいじゃないから

 会いに行ってやって』と頼んでも首を縦に振らない

平山


父親との間に

何があったかは語られてはおりませんが

二度と会うことはないと肯定したってことは

息子としての責任を放棄したわけです


その分、親のことは妹の肩にのしかかり

それが分かっていながら、兄としての

役目も果たすつもりはないと、


ですからあの、

平山らしくない妹への抱擁は

『不甲斐ない兄貴ですまん、ごめん』

の意味が込められているように思えて


『嗚呼、こんなふうに生きていけたなら』と

責務を放棄した先にはきっと修羅が待っていて


でも多分

それを一番に理解しているのは

他でもない、平山本人であって

公共トイレの掃除人を懸命にこなす理由は

捨てた家族に対する間接的な

『贖罪』の意味もあるのではないかと。


あくまでわたしの感想ですけれどもね


監督はヴィム・ヴェンダーズ


平易に感じるストーリーにも関わらず

で、あるからこそでしょうか


これほど主人公の生き様に

思いを馳せた映画を観た記憶はないです


侮れない監督さんですわ、


きっとこの世界のあちらこちらに

平山のような人物がひっそりと生きていてと、


そう思わせてくれた役所広司さんと

役所さんを評価してくださったカンヌの審査員様に

御礼を申し上げます



ありがとうございました