『生きる リビング』(イギリス・2022年) | Cinéma , Mon Amour.。.:*☆

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左脳は邦画で出来ておりまする╰(*´︶`*)╯


こんにちは


今日 ご紹介する映画は


『生きる リビング』




*・゜゚・*:.。..。.:*・'あらすじ・*:.。. .。.:*・゜゚・*



舞台は1953年のイギリス


ロンドンへ勤めに向かう人の群れの中に

本日より役所勤務の新人、ピーター君

アレックス・シャープ)の姿がありました


駅のホームに屯う先輩を見つけた彼は

にこやかに挨拶をするも、皆さんの態度は

素っ気なくって、ピーター君たじろぐ、、、



次の駅で乗車する

ウィリアムズ市民課課長さん(ビル・ナイ)に至っては


部下と同席しないばかりか

別車両へと乗り込んでしまい、

しかしそれが出社時の常だそうで(先輩談)


職場でも皆さん黙々と仕事をし

何をすれば良いのか戸惑うピーター君に、

課、唯一の女性職員ミス・ハリス

エイミー・ルー・ウッド)は

何をすればではなく、書類の山を高く積み上げて

(忙しい風を装って)おくことが大切なのよーんと

得々と教えたもうな、いたずらに、、、


と、そこへ、

第二次世界大戦の戦禍で荒地となった広場を

子供の遊び場に再開発してほしいとの陳情書を携えた

ご婦人方がおみえになります


彼女たちは幾度となく来所しては

毎回、各部署をたらい回しにされておりました


それはもう、

新人のピーター君より遥かに

役所の配置に精通しているほどに。


棚上げ上等なウィリアムズ課長も

彼女たちの陳情を取り合わないばかりか

今日は午後から半休を取ると言い出す始末。


滅多にない早退をした理由は

先日受けた検査結果を聞くためで

そこで課長は神妙な面持ちのドクターから

余命宣告を告知されます


打ちひしがれる課長の耳に

舅が帰っていることに気づかなかった息子の嫁の

『早くお義父さんに別居することを話して』の声が

聞こえ、

残りの人生が半年だと告げるタイミングを逃した

ウィリアムズ課長の脳裏には


早世した妻のこと、

息子のためにも後添えを娶れと

気遣わし気にアドバイスをくれた友の顔

そして、まだ幼かった息子の笑顔が走馬灯のように

甦ってきます


愛する息子は嫁の言いなりで

家庭は安らげる場所ではなく


部下からは煙たがられる存在で

職場ももはや、生きる縁(よすが)ではない、、、


翌日から役所を無断欠勤したウィリアムズ課長は

貯金を引き出し、終の場所を求めて彷徨うのですが


彼はこのまま無気力に

朽ち果ててしまうのでしょうか?



それとも、、、



*・゜゚・*:.。..。.:*・''・*:.。. .。.:*・゜゚・*


などと、


疑問形であらすじを閉じましたけれど

今作は1952年に公開された黒澤明監督作品

『生きる』のリメイクですよってに、お話の方は

皆さまも良くご存じでしょう


舞台を日本からイギリスに変えた点を除けば

シナリオはほぼ忠実にオリジナル版を踏襲して

おります


つーか、変えられませんわな


けれど、主人公が死に怯える様を直情的に表現した

オリジナル版に対し

リメイク版の主人公は、死にゆく者の諦観を淡々と

表しているようで


そこが、オリジナルへ敬意を表しつつも

作家としてのカズオ・イシグロ氏が示したかった

独自の死生観に繋がるのではと愚考したのですけれど、


しかし死生観に違いはあろうとも

新旧作どちらも清々しい余韻を残します


それは、主人公が最期に得た達成感を、

我々も共有出来るからだと思います


例えそれが、自己満足だったとしても

一瞬の徒花だったとしても、誰かを幸せに

出来たのだとしたら、それでいい



何もしないよりは、ずっとずっと良い、、、


『生きる』は

黒澤監督作品の中でも好きな一作ですね


あそこに死神フェイスの伊藤雄之助さんを

配役されたってことも大きくはありますけれども。

(着眼点そこでした)


リメイクリスキーを躊躇わず

オリジナリティーも出しつつ

イギリス人の気質も加味しつつ

丁寧に大切に仕上げて頂いた、製作陣の皆さま、

ありがとうございました



主人公を演じたビル・ナイさん、、


ビル・ナイさんと申せば、イノイチに浮かぶこのお姿


そう、、

『ラブ・アクチュアリー』での

忌野清志郎氏と高田純次氏を

ねるねるねぇ〜〜〜る♬したようなロートルな

ロックスター役に、ノックアウトされたジェーン


そんな筈ないと頭では分かってはいても

当のビルさんもそのようなファンキーなおやちだと

思うとりまして←そうであって欲しかったような?


けれど

今作での死期の迫ったイギリス紳士役に触れて

本当は、コチラの方が素に近いのではないかと


そんなことは本業に関係ないのですけれど、、、


とにかく素晴らしい静演でございました




『ゴンドラの唄』に変わり挿入された

『ナナカマドの木』(スコットランド民謡)の

歌唱シーンにも、しみじみと聴き惚れました




今作は何度か観返すことよって

さらに味が沁み渡っていく、、、


そういう作品であると思っております