今宵ご紹介する映画は
『誰かに見られてる』
マイク(トム・ベレンジャー)は
殺人現場を目撃し、犯人に顔を
見られてしまった美しき富豪女性クレア
(ミミ・ロジャーズ)の護衛を命じられます
クレアにも恋人がいて、、、
それでも恋せずにはいられない
脇甘々の二人に殺人犯の影が忍び寄り
といったよくある話を
監督した人物は、かのリドリー・スコットさん
ただしサスペンスとして観るならば
『ブレードランナー』級の斬新さは
ございません
その代わり、
恋愛シークエンスにおいて
スコット監督ったら思いのほか
男女の機微をついております
主人公であるマイクと
エリー(ロレイン・ブラッコ)夫妻は
仲良し夫婦として我々の目の前に登場します
二人の関係性を
分かりやすく例えるならば
エリーが目の前で屁をこいたとしても
マイクは『おまっ、屁ぇこくなよー』って
一緒に笑い転げるようなフランクな夫婦といえば
わかって頂けます?
(劇中実際には屁ぇこくシーンは
ないですから悪しからず)
ところがアッパークラスで
生まれてこのかた、屁などこいたことが
ないであろうクレアに出会ってしまったことで
マイクは今まで気にも留めなかった
妻エリーのお下品な言葉使いや所作を
疎ましく感じ
『もっと上品に出来んのか?』と
それまで一度もしたことのない
ダメ出しをするのです
それを受け
『あたしを誰と比べてんの?』と訝しむエリー
今亭主が関わっている事件から
別の誰かの存在を感じ取り
演じたロレイン・ブラッコは
今作が映画デビューとは思えない
等身大の演技で
夫を愛し信じていたからこそ
夫の裏切りを許せない妻の怒りを
とっても自然に表現していました
そして
妻をディスりながら
実はその妻とどっこいどっこいの
自分自身の品のなさを恥じていたマイク
それはアッパークラスの
クレアとの違いを見せつけられ
住む棚の違う二人が
結ばれることなどないことに
マイク自身が気づいていたからこそで
こういった
『男女あるある』を分かりやすく
指南したスコット監督に驚く反面
『ブレード・ランナー』における
ディッカードとレイチェルによる
観る側の心を駆り立てるような恋の行方を
以前監督は描いていたわけですから
別に驚くことではなかったのかなと
再見して思い直しましたけれども。
前年に『プラトーン』(1986年)で演じた
卑劣な鬼軍曹のイメージが強かったせいで
わたくしトムさんのファンではなかったんですけど
この時の無骨な恋する男トムさんには
ちょびっとだけ胸キュンしました ←死語やな、、
アレですわ
当時のトムさんは
今で言うところの
トム・ハーディさんのような
立ち位置の方だったと解釈ください
そして
マイクを魅了するクレアに
かつてトム・クルーズ(またトムか)
夫人でいらしたミミ・ロジャースさんが演じ
当時、
飛ぶ鳥を落とす勢いだった
トムクルさんのハートを射抜いただけあって
この頃のミミさんは、後にも先にもないくらい
素敵でした
スコット監督作品の中では
小品に位置するかと思いますが
それでもわたくし
こちらが一番好きなんです
だからレビューも
珍しくスラスラ書けたと言うね
監督の新作『エイリアン・コヴェナント』
のレビューについては、途中で断念したことを
ここにカミングアウトしときます(*´Д`*)
最後になりますが
映画のタイトルシークエンスにて
スコット監督らしさが出ているので
貼り付けておきますね
夜のしじまに鳴り響くサイレンの音
ラグジュアリー・ニューヨークを
俯瞰するカメラワーク
さらにここで、
スティングにガーシュウィン作
『Someone To Watch Over Me』を
歌わせるなんざぁ
やはりリドリー・スコットなのね