19世紀最大の謎とされる
『カスパー・ハウザー』 の存在
突如、ニュルンベルクの街に現れたカスパー
『空っぽ』(empty)の意味を教えてくれた人
それは
自分に向けられた侮蔑と嘲笑
教わらないままカスパーは
後見人となったダウマー教授の下
教育を受け、自伝を書くまでに
急成長します
(今なら○○症とか○○症候群といった
名がつくんでしょうな)
そこに高貴な生まれではないかとの
噂もあいまって、カスパーの存在は
当時の知識人や、ブルジョワを惹きつけ
そんな中イギリス人貴族が、
カスパーのパパになってあげると名乗りをあげ
それがこちらの、ハゲ茶瓶のおとっつぁん
おハイソ軍団からの好奇の眼差し、、、
盛り髪のお嬢様から出た
『穴倉生活は如何でございました』の質問に
答えるカスパーに、恥をかかされたおとっつぁんは
まるで犬や猫を扱うかのように
カスパーを教授の元へと返還するのです
もう、そっとしといてやれよ
とジェーンの願いも虚しく
押し寄せるカスパー研究者たち
カスパーに対し、
唯一父性を滲ませるダウマー教授ですら
キリスト教信仰を押し付ける始末で
そもそもカスパーが
神の存在を理解できたのであれば
僕はこんな気がするんです。
僕という人間は間違って
この世に落ちてきたんじゃないかって
思うはずがないでしょうよ
ありのままでいることが
認められないのだとしたら
地上にいる意味はあるのだろうか?
結局のところ
物事の本質を理解していたのは
学者でもブルジョワでもなく
カスパーただ一人だったというね
今作での
ヘルツォーク監督は
それをカスパーサイドに
寄り添うカタチで撮ってます
と言ってもそこは
奇才であり、鬼才でもある
ヘルツォーク監督ですから
ラストはちゃあーーんと、毒素放出
それは、人が人を
理解することの難しさであり
理解出来ないものに対しては
理解しようと努力するよりも
自分たちの方が正しいのだと
思い込む方が楽なんだと言うね
着地点を示すものでした
そして
カスパー・ハウザーを演じた
ブルーノ・Sもまた
他人から見れば『異形』の人と
呼べるのかもしれません
元々が素人さんですから
ブルーノ・Sで検索しても
情報はわずかなんですが
その中から判明したことは
誕生はナチが政権を執る一年前の
1932年のベルリンであり
母親は娼婦で
父親は不明(母の客)ということ
3歳の時に、知的障害施設に収容され
そこでナチスの障害児に対する実験台に
なっていたのではないかとあります
だとしたら、かなり
厳しい環境で育ったとしか
言いようがありませんが
23年間を施設で暮らした後
街に出て大道芸で生活していたところ
ヘルツォーク監督と出会い
今作への出演となったようです
俳優としては
同じくヘルツォーク監督作品である
『シュトロツェクの不思議な旅』の
二本のみ
何だかとっても気になるお人ですが
残念ながら既に亡くなっていますね
下界に現れたカスパーは
それまで見ることのなかった夢を
見るようになります
彼が最後に見た夢
それは
砂漠を行くキャラバン隊の夢でした
ラクダに乗って
彼は何処へ行こうとしたのでしょうか