今宵ご紹介する映画は
『死んでもいい』
流れ者の男は
袖降りあった女に引き寄せられ
尾行し
小さな不動産屋に辿り着く
女はそこの事務員で、
左手薬指には指輪があった
店の前で立ちつくす男は
『部屋をお探しですか？』と
机の前で、横顔を見せる女に目をやり
ここで働かせてくれないかと頼む男
そう……この男
行き当たりバッタリ
その言葉を軽く受け流す社長
しかし
『ああいった半端モンは近頃珍しいや』
ニヤリとし、結局男を雇ってしまう
男の名は真（永瀬正敏さん）
女の名は土屋名美（大竹しのぶさん）
社長（室田日出男さん）は名美の亭主だった
ある雨の日、
モデルハウスへ真を迎えに出向いた名美は
いきなり、本当にいきなり、真に乱暴されてしまう
1度目は激しく抵抗した名美
しかしその直後の2度目は、自ら真を手招く……
（モデルハウスだから寝室も御座います）
2人の関係は早々に亭主バレし
真は店をクビになってしまう……
そこで別れときゃいいものを名美は真を訪ね
『どうしてふたりとも、
好きになっちゃいけないの』
真 『殺すか？』
名美『保険金、いっぱい入ってるよ……』
そう言いつつ、亭主と再構築する名美
水面下の後
二度目の裏切り発覚するもののまたしても名美を許す亭主
2人に追い縋り
『奥さんを俺にくれーー』と
絶叫する真
若い間男の叫び声を背に
貴女は一体、何がしたかったの……？
どうするつもりだったの……？？
*･゜ﾟ･*:.｡..｡.:*:.｡. .｡.:*･゜ﾟ･*
昔は魔性のオンナ認定者だった
大竹しのぶさん
超のつく美人でもない
ナイスがつくバディの持ち主でもない
にも関わらず
滲み出るニンフォマニアック感
『この人には
自分のパートナーを紹介してはならない』
と、頭で警鐘が鳴る
何かが、何処かが、わたしたちとは違う
大竹しのぶ様はそんな方
まだまだお肌ツルピカだった永瀬正敏さん
おそらくは不幸な生育歴を持つであろう真の
幼稚さと、未熟さ、語彙力の乏しさは
ラストで成熟した男の達観に変わる
そして……胸が打ち震えるほど
清々しく単純で、痛ましかった室田日出男さん
もう一度このキュートな画像を貼っときましょう
情け深くて、い～い人なんです
じゃなきゃ、流れモンを雇ったりしないでしょ
本来なら日向を歩くべき人……
それなのに
可愛い恋女房を奪われ
飼い犬に手を噛まれても
奥歯を噛み締め、女房を許した結果どうなったのか？
その結末こそ今作が
日本版『郵便配達は二度ベルを鳴らす』と、
評される由縁なんですね
だがしかし、本家ほど話が
突き抜けてはおりません
曖昧な、ファジーな、夢現な幕引きです
もっとも現実に起きる
痴情のもつれなどは、
小説や映画とは違い
計画性などなくて
案外行き当たりばったりなのかもしれないと
石井隆監督作品を観るだに思う
監督のグルーブ感については
好き嫌いが明確に分かれるでしょう
アンタはどうなんだと問われると
この方のセンス
例えば映画のタイトルが好きです
『死んでもいい』なんて
引力ハンパないですもん
（因みに原作は、西村望さんの「火の蛾」）
さらにその主題歌に
ちあきなおみさんを持ってくるあたりも
ジェーンのツボなんですね
石井監督作品のヒロイン
と言いますか、ミューズが
『土屋名美』であり
『ヌードの夜』（1993年）では余貴美子さんが
『夜がまたくる』（1994年）では夏川結衣さんが
そして今作では大竹しのぶさんが
『土屋名美』を演じていました
余貴美子さんも
夏川結衣さんも
わたしは石井作品でインプットされ
好きになった女優さんですが
お二人とも今では随分と
ホームドラマティックにおなりです
夏川結衣さんご出演の
『家族はつらいよ』を鑑賞し
ジェーンは隔世の念を抱きました
石井作品で文字通り
身体を張っていらっしゃった
あの頃が懐かしいです……
そういった女優さんが
減っちゃった気がして
唯一大竹しのぶさんが
『ヌードの夜』の続編
『ヌードの夜／愛は惜しみなく奪う』（2010年）
で、キレッキレのおっかさん役でしたわ
画面が暗かったせいもありましたが
余りにドスの効いた声に大竹しのぶさんとは
わからなかったくらい
歯槽膿漏予防歯磨きのCMに
ご出演されようと
ディズニー映画『インサイド・ヘッド』で
悲しみの声を担当されようと
還暦まじかであろうと
大竹しのぶブランドは健在なり
