2020年4月、山梨に引っ越すかもしれない流れになった時、自分にも家族にも大きな車が必要になった

 

そしてInstagramに情報を載せたのは5月くらい、何か良いツテはないかと呼びかけた

 

ワーゲンバスやヴァナゴンも良いなと思いつつ、玉数の少ないその車は見つからず、ヴァンといえばハイエースと導かれた

 

そしてディーラーさんに知り合い、頼んで探してもらうことにした

 

条件を聞かれ細かいことを調べていた

 

年式、走行距離、ガソリンかディーゼルか、初めて気にかけることがいっぱい

 

ディーラーさんは大体の条件をもとにオークションに行き落としてくるといったやり方だ

 

でも同じ年式やなんかでも色々な形に色があり、細かいこだわりは飲めないようだ

 

理想を求めてネットサーフィンをしていると、良い感じの物を発見、これと同じものがいいと言ったが、かといってオークションには上がる可能性も低く、かつ更に細かいコンディションは結局ディーラーさんのジャッジ任せ

 

なんでも自分で見極めたい自分は、そもそもこのネットで見つけた物を見に行けばいいのでは?と、後日友達の運転で千葉まで行った

 

それはたった3ヶ月後の8月だった

 

そこには画面越しで一目惚れしたハイエースがあった

 

普通の車と比べとてもデカく長く、エンジン音も力強く、座席も高い

 

これを運転する自分を想像した

 

「なかなか良いんじゃない?」

 

形も気に入った

 

この車は一昔前のモデルで、今のハイエースの、車の規格内ぎちぎちに広げた四角いボディに比べ、スリムで柔らかさも感じられ、顔も優しい

 

車や電車といった乗り物には顔がある

 

近頃の街中に蠢くワゴン車の歯茎丸出しの魚のような不気味な顔にはデザイナーの狂気が感じられて、つくづく顔は大事だと思った

 

しかしこのハイエースは、買うかどうするかと迷いながら、車体をぐるりと観察しながら正面に戻ってくると、なんと笑っているではないか!

 

車がニコニコしているのだった

 

「君に決めた!」

 

感覚だけではと思い、友達に機能面を見てもらった

 

彼は車に詳しく、整備の学校にも進んでいたので頼もしい

 

自分はあくまでデザインと音や雰囲気担当

 

友達は案内してくれた従業員さん(なんとその人は社長だった)と仲良く盛り上がっていたし、良いものだと言ってくれた

 

さて契約に行くと、担当の人はガキが、からかいに来た程度と思っていた様だったが、真剣に買うと言うと態度を変え「飲み物はいかがですか?」と聞いてきた

 

「水で」

 

僕らは知っている、大したものは出ない

 

そんなこと言わずに~と果汁100%ジュースかなんかを持ってきてくれたかすかな記憶

 

その日に乗って帰るくらいのつもりだったが、それはできなかったので端数だけ払って帰った

 

後日ひとりで電車とスケボーに乗り、車屋さんに向かった

 

あっさりと手続きは終わり、鍵を渡された

 

「試運転しても良いですか?」ハイエースの運転は初めてだった、ちょろっと乗って、駐車もやってみていざ帰宅

 

ドキドキとウキウキが混雑しながら長い道のりを帰った

 

車を手に入れた!

 

後は悠に足を伸ばして寝転べるほどで、荷物も沢山乗る、夢は膨らむばかり

 

視界も良好で、むしろ普通の車より安全に運転が出来る

 

次の日はそのハイエースにスケボーを積み、公園へと向かった

 

そして道中、パトカーに停められ職質

 

何かそぐわないのだろうか?ハイエースとマッチしない運転手だったろうか

 

いやそんなはずはない

 

もし自分に本当にフィットする車ならもっとはっきりした色がいいのでは?

 

ハイエースの色はツートーンで白と薄いパープルラメグレーといった色で、悪くもないが100点でもなく、それが原因ではないかと

 

すぐに塗り替えてやろうと思った

 

まずどれくらいかかるのか、車屋で相談

 

するとディーゼルハイエースくらいなら変えそうな値段を言われた

 

うーむ、どうしたもんか

 

じゃあ自分でやる?どうやって?塗料は?

 

と1年は過ぎていった

 

ハイエースはその間大活躍し、引っ越しも、友達の引っ越しも請け負い、佐賀まで走り、別府からフェリーで四国に渡り、淡路島を通って山梨に帰った

 

 

山梨では、農業やなんかで知り合っていった人達の車や農機具を創意工夫とリーズナブルな料金で修理や車検など請け負ってくれる人に出会った

 

その人のガレージに時々修理や点検をしてもらったり、車のことを聞きに行ったりした

 

彼は塗装も何台かしたことがあり、やりたいというと、自分で塗装すれば安く済むよと教えてくれた

 

塗料会社も教えてくれた

 

しかし塗料もマットな質感の上、色も気に入った物が無かった

 

アメリカのクラシックカーみたいな光沢で真っ青がいいなと思うも奇抜な色はなかなかメインの市場には出ないのだ

 

そもそも自分のこだわりが強すぎるのか、と思ったが、それでも安易になれない自分がいた

 

そして2年が経った頃、スケートパークで知り合った人が自分でバイクを塗装している人で、その人に塗料をどこで手に入れているか尋ねた

 

それは山梨にある塗装会社で個人用に塗料の販売もしているとのことで、友達と色見本を見に行った

 

するとそこには沢山の色があり、好みの色も見つけた

 

なんだ世の中探せばあるじゃねーか

 

ひとまず一歩は進めたが、塗料もそれなりに値段が張る

 

それに塗る工程も自分でできる想像ができない

 

ガレージに行き相談すると、一緒やってあげるといってくれたが、気候条件と、その人のスケジュールを合わせないといけなかった

 

寒過ぎてもダメ、暑過ぎてもダメ、湿度は敵、埃も然り

 

結局時間は過ぎて行ったが、今年に入りついに塗料を注文した、いつまで待ったって次の現実を導くのは自分だ

 

そして気づけば今年の梅雨はそこまで近づいてきた、梅雨明けを待つと今度は暑くなり過ぎてしまうし、予定も埋まってしまう

 

だが、聞けば聞くほどに前に想像していたより作業工程は少なくすみそうだ

 

2人でやれば2日でできるという

 

もうちょっとかかりそうな話じゃなかったかな?

 

なんだか見えぬ力に応援されているようだ

 

ここはいくしかない、天気予報を調べ、スケジュールも合わせた

 

そしていざ当日、まずはサンディング

 

表面の塗装をサンドペーパーで削って落とす、ついでに錆も落としたてもらった

 

たまにハイエースを洗うときは布巾で拭くのが主だが、その時には感じられなかった車に注ぐ愛を感じた

 

そうそれは優しく愛撫するようにボディを撫でる行為だった

 

大きい車体、男二人でもそれなりに時間がかかる

 

初めは電動の機械でヤスったが、手の方が細かいところもできるし仕上げは手でやった

 

何度かぶつけたりぶつけられたりで傷から錆が少し生まれていたので、塗り替えるタイミングで処置した

 

凹みは手をつけないことにした、板金はさらに時間がかかるし、綺麗に戻らないより綺麗に凹んでいる方がいい、そして何より色を塗ることをしたい

 

お昼を挟んでマスキング、これに結構時間がかかった

 

幸いにも窓に差し掛かる所は無く、窓下から上はただ覆えばいいが、入念にドアノブやぐるりと一周した黒いプラスチックのパーツなんかを丁寧に包んだ

 

2人なら2倍の速度は出ていたので順調に進み、車が日陰に入り湿度も程よくなって予定通り塗装開始

 

塗装は前戯がメインだった、塗り始めたらもう止まることはできない

 

生まれて初めてのエアースプレー、刷毛や筆なら自信があったが車の車体はそうもいかない、さてどうなるのか

 

まずやり方を見せてもらった

 

レバーを握ると、エアーと共に塗料が噴射される道具で左右に移動させながら20センチほど車から離して吹き付ける

 

見ると一見簡単そうだが、手が止まるとそこにだけ塗料が多く乗ってしまうので、左右に動かして、端に来たらレバーを握ったり離したりを意識しながらやらないといけない

 

そして意外とエアスプレーは重い

 

腕を休め休め塗ったが、次の日は胸筋が筋肉痛だった

 

仕上げは彼に全てやってもらった

 

辺りは暗くなる中、ヘッドライトで照らした塗料のツヤを均一に整える彼の仕事も惚れ惚れした

 

やっとのことで塗り終えたあとは乾燥を待ちながら休んだ

 

そしていよいよマスキングを剥がす

 

ペリ、ペリ~

 

っと綺麗に剥がれたマスキングの下には真っ白な車体との境界線が綺麗に現れ、そのコントラストが洗ってもいなかった白地がまるで新品のように光っているし、黒いパーツも青とマッチしている

 

2箇所塗り残しがあった、マスキングの場所に挟まれ、目立たなくなっていた

 

ここぐらいいいんじゃね?と頭によぎった

 

「そこは妥協するとこじゃないよ」

 

彼はそう言って今度はエアブラシというもう少し小さな道具を出して塗ってくれた

 

これで一件落着

 

夢が叶ってニヤニヤしていると、ちょうど満月1日前の月が綺麗なブルーの車体を照らしたその時!

 

ハイエースの新しい名前を思いついた

 

ずっと仮の名で「ハイエースちゃん」と呼んでいて、良い名前は降ってこないものか、塗装をした暁には良い名前を付けようと思っていて、当日ガレージに向かう道中、塗った後に名前が決まるだろうなと直感で感じていたら案の定

 

月夜の青いハイエース、名付けて「ブルームーン号」

 

ピンときた

 

ちなみにBlue Moonとは珍しいという意味の慣用句も英語にあり、貴重な思い出、存在にぴったりだと思ったし、月は自分の名前にも入っているのでお気に入りだ

 

そしてこの日は乗って帰ることができた

 

車外はシンナーの匂いが残っていたが、ちょうどいつも寝ていたテントのポールが折れていて、もう車内で寝るしかない

 

朝起きて外に出ると

 

「ん~圧巻!」

 

色はとてもブライトでツルッとした光沢、まるで初めから塗られていたかのようになじみ、不思議と凹みも目立たなくなった

 

ついに3年越し(実は越してはない)の夢が叶った

 

どの工程も楽しかった

 

なぜならこの新しい作業は集中力が必要とされ、その集中してエネルギーを注いでる自分が好きだった

 

夢を叶えるためのエネルギーはすごい

 

いつだって夢を追い続け、想像を巡らした

 

追いつかない想像は誰かの助言や情報で補われ、それをひたすら信じ続け

 

明確にイメージする

 

それが夢を叶えるコツだ

 

意図さえあれば見えない力が応援してくれる、これは近年よく感じる事

 

次は何が叶うかな?