21年からここ八ヶ岳でリンパマッサージを習い始めた。リバランシングマッサージと言う。

 

人間生きていれば心身ともにバランスを崩す、そしてその度に新たなバランスを取り戻す。その直る時に施術を通して、より良い質の良いバランスにするのがこのマッサージ。

 

教えてくださるのは女性でキブツ繋がりで知り合った人で、彼女は旦那さんと関西から移り住んでマッサージ教えたり、クライアントさんの施術をしていたが、旦那さんが急に亡くなってしまい、初期のマッサージ受講生と協力して続けている。

 

僕は4期生だった。受講期を終えた後はアシスタントとして今も関わっているし、色々とお世話になっている。その後その場所に少し住む事になるのだが、その話はまだまだあと。

 

そこは実家からも近く、年齢の近いメンバーも泊まりでやってきていて、僕の月に一度の小さなコミュニティになった。

 

2022年の1月、いつものように同期のメンバーと話している時、彼女は「アフリカに行くかもしれない」と言った。

 

まだコロナは真っ最中。ロックダウンという単語を聞き始めた頃だった。

 

「この時期に行けるの?」「アフリカ?いいな!自分も行ってみたい!」

 

そうアフリカと言っても広いのだが僕には漠然とした憧れがあった。人間のルーツ。ブラックミュージックのルーツ。好きな文化の多くの発祥の地。

 

想像しただけでワクワクする。

 

彼女によると東アフリカのタンザニアでエコビレッジを作る計画があり、彼女の友だちが参加するそうだ。

 

エコビレッジという言葉もそのビルダーの銀さん(山納銀之助)という人も初めて聞いたが、僕がだいぶ前のめりで話を聞いていると「サム君も発起人さんに連絡したら行けると思うよ」と言われた。

 

「えっほんとに?」ワクワクで背中がゾクゾクしたのを覚えている。

 

あのアフリカに行ける?

 

もう僕の心は東アフリカに飛んでいった。その後のマッサージに集中できなかったのは言うまでもない。

 

そしてfacebookで近藤ナオという人に連絡した。なにやらタンザニアで事業もやっている人のようだ。

 

エコビレッジというものがなんなのかは知らないが、なんとなくこの八ヶ岳でやっている農業や自給自足、コミュニティ活動などに関係ないことはないなと思った。

 

次の日、マッサージの2日目(毎月一泊二日の受講)のお昼頃、そのナオさんから電話がかかってきた。

 

「このプロジェクトにどういう心持ちがある?」と聞かれた。

 

僕は「アフリカに行ってみたかったんです」と答えた。

 

すると「アフリカなら沢山行けるところがあるし、知り合いもいるから紹介してあげるよ」と思ってもみない返答を言われた。

 

「えっと、そうではなくて、、、その計画に参加したいんです」

 

正直なんでもいいからそういった理由に乗ってアフリカに行きたかった。でもこれが運命の始まりだ。

 

色々考え直して伝えると、彼は質問をしてくれた。彼は以前この八ヶ岳近辺の瑞牆山(みずがきやま)という山のそばにいた事があった。

 

「もし瑞牆山の中腹部で大人3人と暮らすならなにができる?」と

 

僕は咄嗟に考え「三つあります」と言い。

 

「一つは季節にもよるが食べ物を集めてこれる」

 

これは八ヶ岳に越してきて身についた(いや少なからず以前からかもしれないが)スキルだった。

 

春には山菜が沢山生えるこの土地では、散歩しながら沢山採取したものだ。しかも一度見つけられるようになると、面白いほど次々と目に入ってくるのだ。

 

「二つ目は薪が集められて、焚き火をしたり、火を扱える」

 

これも高校生の頃からも焚き火をやっていたし、実家には薪ストーブ、庭では焚き火やロケットストーブを使っていた僕は、散歩に行けば薪になる木も拾っていたほど。なので自信があった。

 

そして最後に「木に登れます」と答えた。

 

幼稚園の頃から木に登っていた僕は小学生になったら、もっと多くの木に登れるようになり、都内だがある公園に生えている木を全て登ったこともある。セコイアという木が好きだ。

 

でも大きくなるにつれ、人目がつくところで木に登るのは難しくなった。ドレッドヘアーの男が公園で木に登ってたら通報されかねない。

 

ラッキーなことに山梨の引っ越したお家には登れるほど大きさのある木が生えており、誰の目も木にすることなく登る事ができた。実際毎日のように登っていた。

 

なので木登りには自信がある。

 

それが何の役に立つかというと、木のてっぺんに行けば地面からは見えない景色が見られる。

 

だからその土地の地形もわかるし、色々なものが見つけられるかもしれない。

 

食べられる実がなっていれば取れるかもしれないし、枝や葉っぱなどの素材も手に入れられる。

 

それと木の上は安全だ、もちろんライオンも木の上で寝ていたりするのを動物園で見たことがあるけど、木の上に逃げれば生存率は上がる。

 

ともかく咄嗟に思いついたこの三つが後々本当に活きるとは僕も思ってもみなかった。

 

そして発起人さんは僕の熱意を感じてくれたのか「パスポートの有効期限が6ヶ月残ってるか」と聞いた。

 

でもちょうど前の日に携帯の中の写真を整理していた僕は、パスポートの写真もコロナで数年は国外に行けることもないだろう、と諦めて消したところだった。

 

「出先で今手元のに無いので、帰って確認します」と言い、ついでに一晩考える事にした。