シンジュク御苑

 

駅を出ると、相変わらずの人の多さだが、今日はいつにも増して混み合っている。雑多で入り組んだ道には、どこかのサイレンとクラクション、そして様々な言語が飛び交い、少々耳障りだ。とはいえ、すぐに慣れる。いつの間にか、そうした音を聞き流す術が身についているのだろう。

 

騒音を受け入れ、人の流れに身を任せてたどり着いた広場には、この時期ならではの光景が広がっていた。

ここは、天然の桜が見られる数少ない場所だ。

 

人々は桜に魅了され、酔いしれる。感嘆の声と、すでに出来上がって陽気にはしゃぐ声。そんな人の思いを知ってか、桜は花びらを散らす。あるいは、この騒音をうるさがっているのかもしれない。

 

奥へ進むにつれて人はさらに増え、やがてひときわ人の集まる場所に出る。手すりのついた柵の先を見て、思わず息を呑んだ。

すり鉢状に開けた空間の底まで、桜が敷き詰められている。上層から下層へと、淡い色が流れ落ちるように続いていた。

ひらひらと雪のように舞う花びらを眺めていると、すっと喧騒が遠のく。この光景は、いつからここにあるのだろう。この先も、続いていくのだろうか。

ふと、そんな思いがよぎる。

 

「おおい!こっちこっち!」

喧騒が戻る。振り返ると、場所取りに来ていた仲間が手を振っている。

……そうだな。これからも、こうして場所取りをするんだろう。

 

花よりなんとやら。腹減った。