James Setouchi

2025.4.11  

 

 4月の視角 入学式に新学期か・・

 

4月1日 新年度。

 日本では明治半ばに会計年度を4月始まりとした。江戸時代以来の流れによるそうだ。実は明治に学校制度を作ったときは、4月始まりではなかった。イギリスやドイツに合わせて9月始まりが基本だった。小学校が正式に4月入学になったのは1890年。高等教育はかなり後まで9月入学。だから『三四郎』(1907年=明治41年の作品)の三四郎は9月始めの暑い日に三四郎池でたたずんでいて美禰子に出会う。『こころ』の「K」と「先生」が房総旅行をした夏休みは、学年が変わるときの夏。高等学校が4月入学になったのは1919年(大正8年)、帝国大学が4月入学になったのは1921年(大正10年)。陸軍が若者を取ってしまう前に学校が取りたい、と考えたそうだ。こうして、官公庁でも学校でも4月にフレッシュマンが入ってくる、という形がメジャーとなった。なお、アメリカの入学式は9月、合衆国の会計年度は10月始まり、州政府の会計年度は7月始まり(違う州もある)。

 

4月8日 入学式。

 桜が咲いて「めでたしめでたし」と言っているが、ちょっと待て。随時入学でなぜいけない? 学年で学び一緒に進級し卒業していく、という「呪い」がここに始まる。卒業せず留年したり中退したりした子が苦しむのも、ここに始まる。

 憧れの志望校に合格した子は今はうれしい。だがそれも1学期の中間テストで打ち砕かれる。そこでいかに立て直す、または適応するか、だ。ちょっとした工夫と努力で挽回(ばんかい)できるかもしれない。または猛烈な努力で挽回するかもしれない。できない場合は? 1番じゃない自分、神童ではない自分を受け入れ折り合いをつけて自分なりにできる努力を続けていく。多くの人はそうしている。それでいいんだ。1番を通せる人なんていない。誰でも長所や短所があって補いながら生きているんだよ。(全国から秀才を集めた開成中学・高校など、普通の子が東大に行くので、一橋大だと落ちこぼれ感があるはずだ。田舎に住んでいる者から見ると、一橋大なんてすごいエリートなんだが・・)子どもはそれで幸せなのだろうか? 心配する。)場合によっては学校を変わる、やめる、という選択もあり得る。学校のやり方が絶対的に正しいわけではないから、やめる方が正解、ということもある。だが、学校はやめても、勉強と人生だけはやめずに続けよう。そのあと思ったよりいいことがある。

 第1志望校に不合格の子はうつむいて第2志望の学校に行く。働く子もいる。本当はそこでこそ新しい人生が開ける。長い人生、学力は要るが、学歴・学校歴は必ずしも絶対ではない。(部分的には関係する。医者になるには医学部でないといけない。医師免許のない人が人の体にメスを入れたら傷害罪で逮捕される。「大卒に限る」職場なら大卒になる必要がある。「高卒や大卒でないといけない」などと頭の古い大人は存在する。実はそれを言う人は学歴差別にあって苦労してきた人たちかも知れない。学校歴で差別する人もある。でもそういう人たちの目が覚める日が必ず来る。)

 

 なお、4月8日はお釈迦様のお誕生日(灌仏会=かんぶつえ、降誕会=ごうたんえ、仏生会=ぶっしょうえ)でもある。花を飾り、釈尊の像に甘茶をかける。釈尊は北インドのカピラ城の王子として生まれた。場所はルンビニー園。生まれてすぐ7歩あるいて「天上天下唯我独尊=てんじょうてんげゆいがどくそん」と言われた。「オレが一番エライ」という意味ではあるまい。「われわれは、あなたもわたしも、どの一人もエライ、尊い。生まれてきて命があってよかった、他のいかなる付属物(地位や名誉や財産、成績や受験の合否や宿題ができているか試合にいくつ勝ったかなど)とも無関係に、あなたやわたしという存在が最も尊いのだ、いまこそ自分を大切にして胸をはり顔を上げて正しい人生、真実の道を歩もう、それがかけがえのない尊貴性を持って生まれたあなたやわたしの使命だ」という宣言ではなかろうか。

 

 新学期。憂鬱かも知れない。(その正体は単なる花粉症かもしれないが・・東京に出たら空気が悪いので花粉症になるのだよ)そんなときはお釈迦様の誕生日でもあったな、と思い出してみてください。愚かな人びとはこの世のことが絶対だと思いこんで目をつり上げて右往左往している。だが、この世のことはこの世のこと。適当に距離をとって付き合ってあげればそれでいいのかも・・・

(ある程度付き合うことは要ります。某カルトのように外界を完全にシャットアウトするのは危険です。世の中には善良な人、信頼できる人もいます。いや、言い直そう。多くの人は、少し善良・利他的で少し利己的で、システムの中でふうふう言いながら生活しているのでは。場合によっては不満や悪意が爆発することもあるが、そうならないようにシステムを組む方がいい。場合によっては利他的な善良さが大爆発してすごいことになることもある。震災ボランティアなどはそうだ。人間にはそういう本能もある。場合によっては生真面目さが大きな不幸を生むことがある。ナチスや大日本帝国がそうだ。そんな悲劇を生まないためにシステムの監視が必要だ。状況にかかわらず立派な生き方ができる人は少し存在する。中江藤樹や宮沢賢治がそうだ。孔子や孟子も。そう言っておこう。)

   花御堂月も上らせ給ひけり 一茶

 

4月11日(金)今日は東大の入学式。(2025.4.11)

 ハリー・ポッターのようなガウンを着て総長が入学式をやっていた。東大入学生にニュースでインタビューしていた。「みんなを幸せにする会社を作りたい」と言っている子がいた。結構だ。財務省に入りたい子もいた。エリート、という言葉を使っていた。財務省も結構だが、「エリート」の意味は深く考えて下さい。「彼女を作りたい」と言った子もいた。彼女を泣かせてはいけないよ。責任を取りなさい。「何をしたいか分からないから東大にした」と言う子もいた。なるほど。今から挑戦してみるといいですね。アフガニスタンのペシャワール会はいかがですか。「女子が少ない」と女子学生が言っていた。確かに。だが、男子校から行った男子学生から見ると、「あ、女子がいる」となる。皆賢そうな顔をしていた。多額の税金を投入しているのだから、しっかり勉強して、皆の幸せのために頑張って下さい。東大は、日本でも最も有名な公共事業の一つと行ってもいいのだ。川人博『東大は誰のために』、立花隆『東大生はバカになったか』、UP出版『東大教師が新入生にすすめる本』などもご参照下さい。総長の言葉も読んでみましょう。(東大のHPにある。) 

 ニュースで見ると応援団の人がワーワー言っていた。どこの大学でもそうだが、応援団の人はあれだけワーワー言ってよく勉強になるものだな。「ただ一つ」と歌っていたが、どんなものかしら。「足音を高めよ」という歌の歌詞(平井富夫)がいい。「自由」「平和」「真理」を歌っている。作曲は魚博士の末広恭雄氏だ。聞いてみて下さい。

 最近はクイズ番組に出ている人が多い。随分いろんなことを憶えているなと感心するが、クイズの知識と学問的な知識は違う。ひとびとを幸せにし世の中をよりよくする知識も違う。(どう違うか、言えますか?)あれだけ賢い人たちであるから、クイズをする暇があったら、学問なり人びとを幸せにし世の中をよくするなりの知識を学びまた創出してほしいと私などは思うのだが・・ 

 

3月末~4月末ころの、ある日曜日 イースター(復活祭)

 キリスト教圏では非常に重要な日。毎年日付が変わる。キリストが十字架につけられたのが金曜。これを「受苦日」「受難日」「聖大金曜日」と言う。預言通り3日目に蘇った。これが日曜日で、「復活祭」「復活の主日」「イースター」などと言う。この日から「復活節」が始まる。ユダヤ教の過越(すぎこし)の祭が流れ込み、春の女神の祭日と融合したもので、異教の祭りだ、と言う人もある。またそもそも死と復活は異教にも多くある思想だと言われる。だが、十字架に死んだキリストが復活した、というのがキリスト教のロジックの最大のものであるので、やはり復活祭は大事だ。神はなぜみずから最も惨めで貧しい場所で地上に降り、「エロイ、エロイ、・・」と言いながら最も惨めな形で十字架上に死に、そして復活したのか? それは、この地上で惨めな人生を歩まざるを得ない我らと共におり、我らにとっての慰めと希望になるためだ。この説明を聞いたとき、私は得心した。

 だが、「復活」とはそもそも何か? これは教派によって定義が様々で、私の手に負えることではないので、省略する。

 

4月23日 子ども読書の日 法律で決まっている。スペインのカタルーニャのサン・ジョルディ(聖ゲオルギオス)の日であり、シェイクスピアとセルバンテスの命日でもある。子どもやBFやGFに本を贈ろう、もっと本を読もう、というわけだ。蔦重(つたじゅう)が聞いたら喜ぶだろうね。

 

4月29日 昭和の日

 昭和天皇の誕生日。天長節(戦前)→天皇誕生日(戦後)→みどりの日(平成)→昭和の日、と名称が変わった。

 昭和天皇とは誰か? 昭和20年までのお姿を言えば現人神(あらひとがみ)。「畏(おそ)れ多くも」といった修飾語が出た瞬間に参加者は「気をつけ」をしなければならなかった。帝国憲法でも「神聖不可侵」とされた。昭和20年以降、マッカーサーと並んで写真に収まり、「人間宣言」をし、焼け野原になった国土を巡幸して各地に緑を植えていく、ということをなされたので、「みどりの日」という呼称はぴったりかもしれなかった。(今はみどりの日は5月4日。)海洋生物に詳しい「学者天皇」でもあられた。「あっ、そう」が口癖とされた。(宇崎竜童(ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)に「ア!ソウ」という曲がある。)靖国の宮司の横暴(A級戦犯合祀)には怒っておられた。研究してみて下さい。子どもの目線から言えば、ゴールデンウィークの始まりの日、でもある・・

 日本はイギリスと同じく立憲君主制だ、とイギリスの誰かが言って、NHKのアナウンサーが「天皇は象徴ということで・・」と訂正していた。立憲君主制と象徴天皇制はどう違うか。天皇と国王はどう違うか。天皇と皇帝はどう違うか。「天皇大帝」は中国の道教で北極星のことだ。福永光司ほかの『道教と古代の天皇制』に書いてある。大陸の思想や概念が入ってきて、その影響下で古代天皇制を整備していったことがわかる。おお、「天皇(テンノウ)」はカタカナで音読みだ・・