2025.3.23
James Setouchi
令和7年3月23日(日)NHK日曜討論会から 高校無償化他
(*私は支持政党なしのいわゆる「無党派層」です。予めご了承下さい。)
各党の教育関係に詳しい方が参加して討論を行った。
全体として、教育は大事、子どもたちの未来は大事、という点は一致している。これは大事なことだ。高校授業料無償化、小学校給食費無償化、0~2歳幼児教育・保育支援などの方向性が決まった。それらを軸に様々な論点が挙げられた。
いくつかコメントする。
・高校授業料無償化について:就学就学支援金制度はすでにあって、世帯年収910万円未満の家庭であれば公立私立問わず11.8万円の支援がある。年収910万円というのは、夫だけならかなりなサラリーマンだし夫婦で910万円でも結構な額だ。それに届かない家庭には支援金を既に支給してきた。これは従来の文部科学省がやってきたことであって、維新が「貧しい家庭にも平等に・・」などと鬼の首を取ったように言うことではない。これを世帯収入にかかわらず支給するようにするのは、もとの民主党政権のやりかたに戻すだけで、これも維新がいばることではない。全世帯に支給してよくなるのは、私見では、①世帯収入を審査する事務員の手間が省ける②急に父親が亡くなるなどして収入が亡くなった家庭が救える、点にある。デメリットは今日の討論会であれこれ言われていた対応が必要だ。
・どうやら、より私立に有利な政策になりそうだ。田舎では、「貧しくて塾に行けない→公立に落ちるので私立に行くしかない→子どもが3人いると大変」ということはあった。それが少しでも助かるなら結構だ。でも「富裕層で私立→今回の政策でもっと贅沢ができる、医進予備校など学費の高い塾に行ける」となるとすると、(?)がつく。
・私立が有利になって公立が定員割れを起こす点。「大阪府では私立に生徒が流れる→大阪府立が定員割れを起こす→統廃合する→大阪府の納税者(特に金持ち)が有利になる」、つまり、国税を投入して大阪府の支出をへらそうという企みである可能性が高い。「公立にしかいけない低所得者層は行く学校がなくなる」という事態を起こす。貧富の格差が広がる。れいわの指摘するとおりだ。
貧富の格差を広げないためには、大阪府は公立を統廃合せず、定員割れしてもしっかりと学校を守っていくことだ。むしろ私立に負けない・少人数教育のメリットを生かして、質の高い学びを公立で実施すればよい。維新にそのつもりはあるかな? 統廃合については有権者に聞こえないように小さな声で言っているように見えるが? そうではなく、外資のつくった私立の月謝200万円(寄宿舎代込み)などという詐欺的な学校を、国民の血税で助けようとしているのだとすれば、これは大間違いだ。大阪の選挙民は怒らないと行けない。
・大阪以外でも同様。地方城下町の名門公立高校は、私立よりも人気がある。定員割れしない。でも、周辺の小さな公立高校や分校は定員割れしている。それらを統廃合せず、学校として存続させる。ローカル交通が消滅しているのだから、地域に自転車で通える学校は要るのだよ。通学時間が長くなると睡眠不足を招く。十代は7~8時間は寝させてやらなきゃならない。(昔の、5~6時間睡眠で頑張った、というのは、誤り。睡眠学の先生のサイトを御覧下さい。)「防災の拠点」とれいわの人が言っていたが、確かに。地域のスポーツ施設としての利用もすでにある。水産高校、畜産高校など、地域密着の専門高校も大事。これは討論参加者もそれぞれ言っていた。「子どもの数が減ったから統廃合」するのではなく「子どもの数が減ったからフィンランド並みに少人数学級にし、質の高い学び」を実現すればいい。
・教員の多忙は解決できていない。残業手当がいいかどうかはわからない。部活動を延々とやって残業手当を貰おうとするのは反対。残業代を出すと決めると自治体の財源がたまらなくなって「部活は平日1時間まで、土日も4時間まで」などと言い始めるだろうか? やりたい部活教師は日曜は8時間以上やっている。生徒が勉強できない。生徒に勉強させなくていいと本心から思っているのでは? それ以外でも多忙。保護者や生徒の相談に乗ると時間無制限になることも。家庭訪問も。
・地域人材を活用してもいい(もうけっこうやっている)が、連絡を取るためにまた教員が多忙化する。それに、あやしげな人が来て生徒をたぶらかしたり学校を引っかき回したりしてはいけないとすると、結局教員や校長OBを呼んできて、変わり映えのないことになる。活用できる優れた人が各地にいるのは事実だろうが・・同窓会の活用は、名門校ならOBにすごい人がいて、講演会をお願いすると、すごいことになる。新設校はOBがいない。
・学教法1条校ではない学校の扱いは別に議論になる。
・TVを見ていると芸能人がやってきてギャーギャー騒ぐ番組がある。国民の血税を投入しても、あんなことしかしないのではつまらない。愚民化政策・反知性主義の罠にはまっている。しっかり勉強する学校にしてほしい。「学力とは何か」と投げかけた参加者もいた。文部科学省はすでにそれを言っている。でも内実はPCでインターネットサーフィンをしているだけだとするとつまらない。ファシリテーターが大事だ。だから少人数学級・ティームティーチングが有効だ。ああ、せめて現行日本国憲法と前の帝国憲法の違い、ワイマール共和国がなぜナチスに乗っ取られたか、オスマン帝国ではユダヤ教徒イスラム教徒キリスト教徒が平和的に共存していた、くらいは知っていてほしいが・・「暗記はイラナイ」と大きな声で言うんじゃない。大事なことは暗記も要ります。貴方の名前、暗記しているでしょう? その上でどう問題意識を持つか、になります。
・港区は全中学生にシンガポールに修学旅行に行かせるそうだ。なぜシンガポールなのか。あそこは見た目は綺麗だが実質は階層格差のひどい社会だ。アジアの富裕層が税金逃れのためにそこに住む。思想信条の自由がない。「明るい北朝鮮」と言われている。15歳でそこへ行って、「将来自分もそこに移住して日本国に税金を納めないでいいようにしよう」ということを学ばせてしまっているとすれば、おかしなハナシだ。港区は富裕層が多いからそうなるのか。富裕層こそ貧しい人のために奮起できる学びを(noblesse oblige)。せめて渋沢栄一や田中正造の爪の垢を。まだロンドンやパリの方が、貧富の格差が見えて勉強になるかも。14歳で海外に行けると聞くと羨ましいようだが、本当にいいかどうかは検証してみた方がいい。日本とは違う世界を肌で感じるのであれば東京は既にそうなっている。英語で暮らしている人がいることを実感できるので英語学習のモチベはあがる。海外海外と言い出して地に足がつかなくなる危険性はある。日本を馬鹿にし始めるのだ。特に日本の田舎をますます非可視化してしまうだろう。それより、港区の子は、三多摩辺りの田舎の民家に泊まりに行って山仕事を手伝ってみてはどうですか?
・大学までタダにできればいいが。フィンランドのように。ただし、フィンランドはみんなが大学に行くのではない。大学に行かず職業教育を受けてすぐ働けるようにしている。失業してもまた職業教育を受けてすぐ働ける。そういう仕組みだ。日本もそうするか。日本で大学に半数どころか7割も行く時代が来たが、その全員が背広を着てオフィスワーカーになれるわけではないと知るべきだ。工業高校を出て手に職がある方がいいかもしれない。他方で普遍的な人文学・社会科学などは、全ての人に(中卒だろうが高卒だろうが理系大卒だろうが)学んでほしいと私は願っている。(それでこのブログも書いている。せめてきっかけになればいいと思って。)
・6歳未満の未就学児の教育や保育が大事だと誰かが言っておられた。その通り。虐待をされず十分なケアのもと育てられる。周囲の人を信じられる。生きていていいと思える。努力することに価値があると思える。そういう子どもを育てるためにコストを投入すべきだろう。先生も育てる。父親も母親も育児休暇が取れる。詳しく研究している人がたくさんいるので、諮問委員会に招集すればいい。
・給食費は小中とも無償に。ただしアレルギーの子は要配慮。量と質は充実を。家でご飯を食べていない子もいるので、沢山食べさせてあげるといい。
・小中高校に行けていない子もいる。長欠者、中退者、進学しなかった子。そこもいつも意識してほしい。誰もが劣等感を持たず未来を信じて顔を上げて暮らしていけるように。
・学用品、ヘルメット、制服や体操服や就学旅行代や野球応援代や模試代やその他その他も高いが、いきなりそれらまで無償化せよといっても実際には無理で、今は売り込む業者が喜ぶだけなので、知恵が要る。学校で、生徒・保護者・先生が賢くなって、お金を使わずいい学びができるようにすればいい。私見では全国大会に行かなくてよい。いい部活動は大会戦績とは無関係。勝ちに行って実績を数字で出して進学に使おうという邪心(じゃしん)がある間は部活動で人間が育っているとは言えない。私見では服飾デザイナーのデザインしたブレザーのような制服を使ってもお金の無駄。そういう学校は結局定員割れしているのではないか? 大事なのは学び・育ちの中味だ。それを見抜いて学校を選択できる若者を育てるべきだが・・?