James Setouchi 2024.9.24   9.28~29追加修正した

法・政治学 佐高信『反-憲法改正論』角川新書2019年

 

1        佐高信(1945~)

 山形県生まれ。慶応大学法学部卒。高校教師、経済誌編集長を経て、評論家。著書『平民宰相 原敬伝説』『安倍「日本会議」政権と共犯者たち』『わが筆禍史』『上品の壁』『西郷隆盛伝説』『福沢諭吉と日本人』『城山三郎の昭和』『田中角栄伝説』など。共著に『安倍政権を笑い倒す』『戦争と日本人』『激論! 安倍政権崩壊』『自民党解体新書』など。「憲法行脚の会」呼びかけ人の一人。(新書の著者紹介から)

 

2        佐高信『反対-憲法改正論』角川新書2019年

 

 安倍政権下での「憲法改正」に反対する書。12人の護憲派の列伝である。その12人とは、澤地久枝(作家)、井上ひさし(脚本家)、宮沢喜一(首相)、城山三郎(作家)、佐橋滋(通産官僚)、後藤田正晴(政治家。官房長官、法務大臣など)、野中広務(政治家。官房長官、沖縄担当大臣など)、三國連太郎(俳優)、美輪明宏(歌手)、宮崎駿(映画監督)、吉永小百合(俳優)、中村哲(医師、アフガニスタンで水路を作った)。他にも金子兜太(俳人)、大江健三郎、落合恵子、土井たか子などなどの名が出てくる。このうちいくつかを紹介しよう。紹介する地の文や本人の言は、大意は曲げていないつもりだが、引用は一字一句そのままではないので、引用などされる場合は、この本そのものに当たってご確認下さい。(敬称略)

 

(1)      宮澤喜一(自民党の代議士、首相)

 

 宮澤喜一は最後まで護憲を貫いた。石橋湛山(たんざん)を尊敬していた。漢籍にも通じており安岡正篤(まさひろ)の中国理解に疑問を突きつけた。アナトール・フランス(作家)や久保田万太郎(俳人)にも詳しかった。保守とは「主義」ではなくて一つの「生活態度」だと言う。反動に陥ることを避けたいという心構えが働いており、一種の常識主義と言える。憲法について、「仮に国民の90%位が改正しようというならともかく、世論が6対4とか7対3とかそういう分かれ方であれば改正すべきではない。仮に押し切って改正しても、その後の国民生活に到底定着しないだろう」と宮澤は言う。「私は、パワーは濫用され過剰に使われることが多いと思うから、それが怖くて常にパワーというものに臆病なんです」「日本は軍隊を持っていて過去に大変なしくじりをしたのだから、もういっぺんそういうしくじりをしないようにしないといけない」「ドイツのように賢い国が二度も間違ったのですよ。その人たちは二度と繰り返されないために、ヨーロッパの統合をやっているんだから」「そういう国をこんどつくるとすれば、・・あなた方が兵隊になるんですよ。他人のことじゃないんですよ」「憲法をいろいろ改めることにメリットがあっても、そこからくるデメリットが、極めて近い過去にあったわけだから、そこはよく考えて下さいよ」などなど。

 

 1964年の自民党大会に提案された「基本憲章」草案では、石田博英(石橋湛山の弟子)や宮澤喜一が起草したが、そこには「反動主義に抵抗」「少数意見の尊重」「所得の公正な配分」「福祉国家の建設」「絶対平和の世界を志向」などと書いてあった。(すぐには採択されなかったが。)

 

 若手の田中秀征を宮澤喜一は高く買っていた。1985年の党大会では田中秀征が新綱領を提案する。そこには「資源小国、通商国家としての認識に基づき経済協力をはじめ国際社会における平和協力を推進し、核兵器の全廃、全面軍縮の理想を追求し」という文言を盛り込み、改憲の旗をはずそうとした。大物の井出一太郎や渡辺美智雄も共感してくれた。

 

 池田勇人は「俺は宮澤の知識ではなくて度胸を買っているんだ」と言った。宮澤はホテルの一室でナイフの暴漢と一時間近く格闘したことがある。だがそれだけではあるまい、と佐高信は記す。

 

(2)佐橋滋(通産官僚、気骨ある人。城山三郎『官僚たちの夏』のモデル)

 

 「軍備は経済的に言えば全くの不生産財であり、人間の生活向上になんら益するところがないどころか、かえってマイナスである。日本の経済発展は、軍備に金をさかなかったからだといわれ、アメリカの凋落は、軍事費の支出に起因するといわれる」「軍事を国家有事の時、つまり戦争のための保険であるかのような説を唱えるものがいるが、とんでもない詭弁である。軍備が戦争を生むことを忘れてはならない。・・アメリカの防衛負担を肩代わりするなどという考えは、軍備についての深刻な反省のない無責任な所説である」「非武装国家になれば、軍備に要した膨大な財源が全く不要になり、国内的には文化国家建設に必要とされる施設に充てられ、対外的には近隣諸国に対する援助が可能になる。脅威に代えて喜びを撒(ま)くことになる」このように佐橋は言う。

 

 佐橋は陸軍に召集されて二等兵生活を体験した。理不尽な世界で、上官に口の中が切れるほどビンタを食らった。中国戦線の行軍で、雪道の中で疲れ果てた兵を思い、上官に「暖を取らせろ」と怒鳴った。上官は「敵前で上官に反抗するか、銃殺だぞ」と脅したが、佐橋は「やってみろ、おれを殺したとたんに貴様はハチの巣みたいになるぞ」と言った。それで凍傷にならずにすんだ。こういう佐橋の非武装論にこそ現実感がある、と佐高信は記す。

 

 日本興業銀行の中山素平は佐橋を支持して、自衛隊派兵・派遣に反対、憲法改正など論外、と言った。佐橋は「非武装は危険と言うけれども、それでは武装をしていれば安全かと反問すると、安全と言う人は誰もいないよ」と言った。久野収(評論家)は、佐橋は岸信介と対抗できるだけの存在だったと思う、と言った。佐橋は通産官僚として最高位まで進んだが、エライ人には頭を下げず、部下のために殉ずることのできる人だった。彼の周りには人が集まった。清濁併せ呑むタイプではなく、常に権力への清潔感を持っていた。退職後どこへも天下らず読書三昧の生活を送った。

 

(3)後藤田正晴(自民党の代議士、例えば中曽根内閣の官房長官)

 

 1987年のペルシア湾掃海艇派遣問題について、中曽根を諫めて止めさせた。2003年(小泉内閣)のイラクへの陸上自衛隊派遣問題についても、「絶対にいかん」と激怒した。「日米安保条約なんて早く日米友好条約にしないといけない」とよく言っていた。憲法改正には反対。「安倍さんとかタカ派の言うこと自体が危うい」「経済は規制緩和でなく規律重視、外交はリベラル、国民生活は国家主義でなく国民主義」「戦犯容疑で囚われておった人(岸信介のことだろう)が日本の内閣の首班になるというのは一体どうしたことか」「(刺客選挙は)強引すぎる。極悪非道なやり方ではないか」1987年度予算編成の「今後の防衛力整備について」では「平和憲法のもと、専守防衛に徹し、・・」と謳った。

 

 戦前最後の沖縄県官選知事・島田叡(あきら)を尊敬していた。島田は米軍上陸が明かな時期に沖縄県知事(内務省から赴任)を引き受け、県民を救おうと懸命に尽力、最後は摩文仁の丘で死ぬ。

 

(4)野中広務(代議士、官房長官など)

 

 「今一番戦前に似ているのは何か」との佐高の質問に対し、野中は「情報統制だ。TVに出ている人は本当に怖い話をしている。厳しい意見を言う評論家などはTVをいつの間にか下ろされている。・・なぜアメリカが始めた戦闘(イラク爆撃)を日本が支持しなければならないのか」と言った。靖国神社公式参拝にも反対だった。

 

 麻生太郎が差別発言をしたとき野中は「実際そう思っているんでしょ。朝鮮人と部落民を死ぬほどこき使って、金儲けしてきた人間だから」と嘆いた。辛淑玉(シン・スゴ、人権活動家)は麻生の発言について「他の先進国でこんな発言をしたら・・一発で首が飛ぶ」と言った。

 

 野中は橋本内閣の時沖縄駐留軍用地特別措置法改正案の委員会の報告で、「国会の審議が大政翼賛会のような形にならないように、若いみなさんにお願いをして・・」と述べた。野中は河野義行氏(松本サリン事件の被害者)にも国家公安委員長として率直に謝罪した。「弱者への限りなく優しい眼差し」のある人だった。

 

(5)中村哲(医師。アフガニスタンで井戸を掘り、水路を作り、現地を豊かにし、現地の人から強く尊敬されている人)

 

 中村哲は「歩く日本国憲法」だ。自衛隊派遣は有害無益で、飢餓状態の解消こそが最大の課題だと考えた。平和憲法の下でこそ「どんな山奥に行っても、日本人であることは一つの安全保障であった」と中村は言う。

 

 ペルーの日本大使館公邸人質事件のとき赤十字というゼッケンを付けて権力の銃口とゲリラの銃口の間を何度も往復して医者を連れていき食糧を与えたミニグさんこそ、本当に人質の命を助けた人だ、と辛淑玉は言うが、中村哲も日本国憲法というゼッケン一つを付けて奮闘したと佐高信は言う。

 

 「日本国憲法というのは、本当は戦争の犠牲の上にできたものですよ。それを改憲を言う人はコケにしたんだ。道徳的な心棒もそれでなくなっていく。非常に悪いですね」「職業軍人と一般国民の犠牲の上に平和憲法ができた。それが戦後の原動力だった。それを壊すようなことをしたら、日本の国はどうなるのか」「とにかく軍隊を持てば次には戦争をしたくなるわけです」「指導者はね。軍隊が一つの利権団体でもあることは、どこの国でもあります・・」

 

 中村は一触即発の大地で、丸腰こそが事業達成の最大前提である、と語る。「自衛隊のアフガン介入の予測によって、日本人ボランティアの安全性はいちじるしくおびやかされる」「アフガニスタンにいると『軍事力があえば我が身を守れる』というのが迷信だと分かる。敵を作らず、平和な信頼関係を築くことが一番の安全保障だと肌身に感じる・・憲法9条は日本に暮らす人々が思っている以上に、リアルで大きな力で、僕たちを守ってくれているんです

 

 

→(コメント)

 第一線で奮闘努力してきた人々の言葉だけに、重い。「武器さえあれば守れる」というのが観念論でしかないのがよくわかる。武器があったら使いたくなるし、攻撃対象にもされる。大日本帝国軍隊は最後は国民を守らず、自分たち自身あるいは「国体」という抽象的なものを守ろうとした。満州や沖縄の実例を見よ。しかも他国の武器商人(資本家はどこの誰ですか?)の仕掛ける戦争に参加して米軍の二軍になるために税金を上げ憲法を変え国民(女性もですよ)を兵士に仕立てて日本列島(あなたの家もですよ)を戦場にしようというのか? そんなことは絶対に許されるはずがない。自民党総裁選(R6.9)のさなか、各候補者、自民党の党員・党友のみなさんは(そうでない方も)、この本をもう一度読んで頂きたい。いかがですか?

 

 田中秀征氏は瀬戸内海沿岸某所の私大で客員教授をされ、また著書も多く書いておられる。同じ新党さきがけの武村正義氏は亡くなられた。著書『小さくともキラリと光る国・日本』は昔買って読んだ。三浦銕太郎(てつたろう)も石橋湛山(いしばしたんざん)も小国主義だ。(内村鑑三は小日本主義。)(田中彰『小国主義』岩波新書1999年は勉強になる。)日本は事実上小国(というほどでもないが)になりつつある。将来を見据えると、大国路線ではない道を探る方が現実的だという気がするが・・? 日本列島は森林も多いので国土に対する人口が今は大きすぎる、将来的には6千万人くらいで落ち着くのではないかと誰かが言っていたが? 

 ひとりあたりGDPは高くてもよいが(世界のものが買える)、全国民総額で3位だ4位だにしがみつくのはどうなのか?(総額が大きければ全体として世界のものが買える、貢献もできる、というのはわかるが。)今はひとりあたりGDPがすごく小さくてしかも貧富差が大きい、富裕層・超富裕層が野放しで、中流が下流化し、貧しい人が増えている相対的貧困率が世界でも指折りに高い国にjなっている。

 

 あの国もその国も、ミサイルや核兵器に金を入れすぎて、国民の生活(食糧やエネルギーやインフラ)が弱っている。(かつての大日本帝国がそうだった。)

 どの国も、民の幸福のために、軍需ではなく民需に注力した方がいい。

 

 この本を読み、憲法を守ろう、戦争はするまい、平和主義でいこう、という人がこれだけ沢山いることがよくわかり、勇気づけられた。

 

 (最近嫌なことばかりで不安になっていたが、この本のお蔭でかなり安心することができた。どこの国の人も戦争するより腹一杯ご飯を食べて安全に暮らしたいと考えているはず。)

 

 

 

 以下、あまりよく分からずに書くが、(私は勉強不足だ)

 

 ロシア・ウクライナは即時停戦を。これ以上人を死なせてはならない。だが、どうやって? ハリス氏とトランプ氏の直接対決の時、トランプ氏は「私が大統領になったら、いや、なる前に、1日で止めさせる」と言っていたが、どうやって? だが、ロシアの人ももう嫌だと思っているのでは? 

 

 イスラエル・ハマス(&ヒズボラ)も即時停戦を。イスラエルはガザの虐殺を止めるべきだ。レバノンに対しても空爆を始めたが、やめるべきだ。ナチスに虐殺されて苦しんだのだから、自分たちは同じことをしてはいけないはず。イスラエル内の心ある人々は気付いているはず。だが、どうやって停戦させる? ハリス氏は、「これは停戦を」と言っていた。イスラエルと話をするのだろうか。 

 

 戦争を止めて、食糧生産をした方がいい。食糧やエネルギーが乏しく、世界中の人が生活を圧迫されている。「剣を鋤(すき)に、槍を鎌に、代えよ」と旧約イザヤ書(2章4~5)にもある。戦争を止め軍需産業をやめれば小麦も石油もほかの物資も値段が安くなるはず。モーゼは「殺すな」と神の言葉を伝えた。

 

 トランプ氏は「私が大統領であったときはイランに経済制裁をしたので、イランからハマスやヒズボラへの支援がなく、今のような問題は起きなかった、今のハマスやヒズボラの問題はバイデン大統領がイランを豊かにしたせいだ」と言ったが、おかしいようだ。オバマ大統領の成果であるアメリカとイランの核合意から脱退しイランを怒らせたのはトランプ氏では? イランを経済的に追い詰めずに仲良くすべきでは? イランにも人が沢山住んでいる。穏やかに暮らしているイスラム教徒がほとんどだろう。それに中近東で曲がりなりにも秩序を持った国がいまや少なくなってしまっている。この上イランまで崩壊したらもっと大変なことになるのでは? 

 

 このアメブロの中に、イランを旅された方の写真があった。普通の人々が普通に暮らしているようだった。イランの人も、戦争よりも生活、家族でご飯を腹一杯食べたい、と思っているはず。

 

 アメリカのジョージア州の学校で銃乱射事件があったとき、私の聞いたニュースでは、ハリス氏トランプ氏も、まず被害者に哀悼の気持ちを述べたが、そのあと言うことが違っていた。

 ハリス氏は、「私たちの国で毎日(中略)親が自分の子供が生きて帰宅するかどうかを心配しながら子供を学校に通わせなければならないなんて、とんでもないことだ」と言った。

 トランプ氏は、「病んで気が狂った怪物によって、大切な子供たちが私たちからあまりにも早く奪われてしまった」と、投稿した。

 銃乱射は勿論不可だし被害者とその家族は大変辛いが、乱射した犯人について「病んで気が狂った怪物」と断定してしまうのはどうか。生まれてきたときに銃乱射をしてやろうと思って生まれてきた子はいないわけで、彼がそのように追い詰められた社会背景に注目しその解決・改善を目指すことが政治家のやることだろう。「あいつは気の狂ったモンスターだ」という一面的な断定からは、排除と抑圧、差別しか生まれない。日本の政治家はどうかな?

 

 令和6年9月23日(月)に立憲民主党の代表選で野田さんが選ばれた。野田さんは「落ちこぼれが出たら助ける」のではなく、「はじめから落ちこぼれを出さない」社会を作る、と言っていた。これは100%賛成だ。この主張は正しい。枝野さんの「人間を大事にする経済」というのも、目指すところは同じだろう。生まれたときに銃で人を殺してやろうと思って生まれてくる人はいない。社会の何かにひずみがあってそういう所に追い詰められているのだから、ひずみを正し、誰も落ちこぼれず安心して暮らしていける社会を作る。これは政治家の仕事だ。将来に対し安心感があった方が勤労意欲も芽生える。不安しかないとデスペレイトな気持ちに陥る。

 

 孟子は言った、「人にはみな惻隠(そくいん)の心はじめ良き心の端緒(たんしょ)が備わっている」「人の本性は善だ。それを拡充していけばいいのだ。人が本来の善性を発揮できず悪に走ることがあるのは、人為的なおかしな力が人の性質を歪めているからだ」「誰にでも生まれつき良知・良能が備わっている」と。『孟子』 公孫丑(こうそんちゅう)篇第二上、告子篇第六上 尽心第七上(大意)

 

 野田さんに苦言。日米同盟を基軸として米軍が東アジアにプレゼンスするようにする、太平洋憲章のようなものを作る、といった内容のことを言っておられた(正確ではない)が、言外に憲法を変えて自衛隊(自衛軍)が米軍の二軍になって戦うようにするおつもりなら、ちょっと待って下さい、本当にそれでいいのですか? と言わざるを得ない。これまで縷々(るる)述べてきたとおりだ。

 *ここで「二軍」とは、米軍の下請けをして命令一下危険なところに行かされる、という意味。大英帝国は前線にインド兵を置きイギリス兵は後方にいたという。ロシアは前線に傭兵や刑務所から来た兵を置き正規軍は安全な所にいたという(正確には知らない)。そういう目に日本の自衛隊(私やあなた、また私たちの家族や友人で構成されている)が遭ってはいけない、という意味。

 

 中国も、超大国を自称する中国のために言うが、民を大事にすべきだ。そもそも「人権」という言葉が前面に出てこないのも妙だなと思うが、中国の「社会主義核心価値観」「人民共和国」の名においても、本当に民を大事にしていると言えるのか? 漢人自身の「自由・平等・公正・法治」はどうか。貧富の差が大きすぎるし、公害は多いし、天安門事件一つ語れない。チベット人やウイグル人やモンゴル人、また朝鮮人や日本人に対してはどうですか? 貿易や留学などで中国に滞在する外国人(日本人も含む)の人権も大事にしないと諸国から相手にされなくなる。積年の反日教育はやめた方がいい。為政者自身、これは無理だな・・とすでに気付いているのでは? 歴史的事実は事実として明らかにする研究はやればいいし、東アジアで共通の研究をし共通の歴史教科書を作る努力をしてもいい。(ドイツとフランスはやった。)(日本には、大日本帝国と安倍さんはダメだ、とはっきり考えている人がたくさんいますよ。その意見表明の自由もある。)実は超大国主義はつまらない、と中国もそろそろ気付くべきだ。あの大英帝国時代でも、大英国主義と小英国主義の両方の意見が存在した。軍事などの大国になるよりも民生の充実を。

 

 広東省の日本人学校のあの事件(R6.9.18)はなぜ起きたのか。(6月にも蘇州で事件があったが、このときは中国人女性が身を挺して防ごうとして亡くなられた。外務省の言うとおり、崇高で献身的な行為で、尊敬の念を抱かずにいられないが、亡くなられたことは本当に残念で痛ましい。)だが、さらに、そもそも外国人(ここでは日本人)に対して差別・暴力を振るおうとする人が出現するのはなぜか? を問うべきだ。事情は知らないが、想像では、彼は、中国社会でまず幸福でない・疎外されている、などの感覚があって、それに積年の反日キャンペーンが加わって、攻撃を日本人に対してぶつけたのではないか? 中国社会の格差や疎外などに解決すべき大きな課題があるのでは? また、戦前はともかく戦後78年間大多数の日本人は戦争をせず平和を愛好してやってきた事実を、中国の皆さんはどれ程知っているのか。留学や旅行などで日本に来た多くの人たちは知っているに違いない。若者は平和主義でアニメとアイドルとゲームを楽しんでいる。では、中国政府の積年の反日キャンペーンにやりすぎがあったのではないか? 未来志向で平和を愛する国民を育てるべきでは? 為政者はこう思念をめぐらすべきだろう。

 

 (R6.9.22(日)のNHKの総裁選討論会で、水産物の貿易問題で高市さんが上の話題に触れたとき、何人かがそれに引きずられる中で、石破さんは「貿易問題とこの問題は別だ」と直ちに言った。石破さんは賢い、さすが考えておられる、と私は思った。高市さんはわざと出したのか、混乱しているのか?)

 

 さらに、(討論会でも少し出たが)中国では、外国人に対する刑事事件があったとき、ちゃんとした法に基づき対応し、秘密主義ではなくきちんと情報を公開しているのか。世界各国で外国人への刑事事件自体は(あってはならないが)ゼロではないが、その後ちゃんとした国家の当局は法に基づききちんと対応する。刑事訴訟法があり、法に基づいて動く警察がいて、検察がいる。裁判もちゃんとする。報道も含めて情報を公開する。基本的に秘密主義・隠蔽主義ではない。問題点があれば批判を封殺せず改善しようとする。自由な言論が保障されている。おかしなケースがあれば世論や野党が批判する。それが健全に機能する国がいい国だ。アメリカも問題だらけとはいえ、問題があるということが国民にも外国にも見えるようにしている。大統領のダメなところをオープンに批判する自由がある。西欧もそうだ。なぜ人々はアメリカや西欧に行って住みたいと思うのか? シリア難民はどうして歩いてでもドイツに行きたがったのか? 北アフリカの人はどうしてフランスに行きたがったのか? 結局の所西欧が物質的に豊かなだけではなく福祉が充実し言論・精神の自由も含めていい国・社会だからではないか? 現実はそう簡単ではない、でも問題があればその情報がオープンになるし、それを受け止めて改善しようとする姿勢が欧米にはある、ということだろう。なぜ多くの人々が香港から逃げ出したのか? 中国の為政者は考えてみるべきだろう。

 

 今の中国はどうか。北朝鮮は。ロシアは。あるいはあそこは。ここは。

 

  日本は、かつて大日本帝国時代、「日本は西欧とは違う、独自の価値観を持っているのだ、西洋近代を超克しよう」などと言った挙げ句に、世界から孤立して独善的な戦争をやらかして焼け野原になってしまった。戦後は改めて西洋近代(西欧やアメリカの達成したもの。自由、平等、個人の尊重など)に学び直すことで、復興を遂げた。戦後、角川文庫発刊の辞で角川源義は言っている、「明治以来80年間西洋近代の文化を学んだつもりだったが本当には学べていなかった、このたびの敗戦は、軍事力以上に、文化力の敗戦なのだ、私たちの文化は戦争に対して無力だった、文化を再構築しないといけない」(大意)(1949=昭和24年)と。さすがである。中国の人もこの言葉を聞くとよい。心ある人なら分かるであろう。

 

 政権に都合の悪い情報は隠蔽・統制し、また政敵を秘密裏に暗殺・粛清するような国は世界から信用されない。当然企業・資本も逃げ出す。民が逃げ出す。旅行客も行かない。オーウェルの『1984』(近未来ディストピア小説。情報統制の全体主義国家を描く)を禁書にしたと記事にあったが、まずは禁書を止めて解禁し、この本を読んでみてはどうですか?

 

 だがまずは我々は日本では日本をよくしよう。韓国では韓国人自身が韓国をよくする努力を続けてきた。今の日本はどうか。今の総裁選の候補者たちはどうか。

 

 

 孟子は言った、

「仁政を民に施し、刑罰を省き、税を軽くし、生産活動をさせ・・としたならば、小国でも軽武装でも軍事超大国にも負けない国になる。

 軍事超大国は、民から収奪し、民の生産活動を圧迫し、家族を離散させ、飢えさせるから、民の心が為政者から離反し、仁政をする王に統治して貰いたいと思うようになる。

 ・・これを仁者は敵なしと言う」と。 

             『孟子』第一巻「梁の恵王章句 上」(意訳)

 

 

 司馬遷の『史記』にある。

 漢の高祖(劉邦)の腹心の部下だった樊噲(はんかい)は言った、

「秦(しん)は虎や狼のような残忍な心を持って、数え切れないほどの人を殺し、また処罰を与えていた。天下の人々の心は皆これから離反した」と。

 各地に反乱軍が起こり、秦はたちまちのうちに滅亡した。

 

 

(政治学、法学)

丸山真男『日本の思想』、石田雄『平和の政治学』、加藤節『南原繁』、高橋源一郎『ぼくらの民主主義なんだぜ』、橋場弦『民主主義の源流 古代アテネの実験』『古代ギリシアの民主政』『賄賂と民主政』、湯浅誠『ヒーローを待っていても世界は変わらない』、イェーリング『権利のための闘争』、樋口陽一・小林節『「憲法改正」の真実』、木村草太『憲法の創造力』、太田光・中沢新一『憲法九条を世界遺産に』、青井未帆『憲法を守るのは誰か』、加藤晋介・監修『今さら他人には聞けない日本国憲法』、『マガジン9条』編集部『みんなの9条』、伊藤真『憲法の力』、佐高信『反-憲法改正論』松元雅和『平和主義とは何か』、高橋哲哉『沖縄の米軍基地 「県外移設」を考える』、伊勢崎賢治『日本人は人を殺しに行くのか』柳澤協二『自衛隊の転機』林信吾『反戦軍事学』、岩下明裕『北方領土・竹島・尖閣、これが解決策』、石破茂『国防』、兵頭二十八『東京と神戸に核ミサイルが落ちたとき所沢と大阪はどうなる』、中島武志・西部邁『パール判決を問い直す』、田中森一『反転 闇社会の守護神と呼ばれて』、長嶺超輝『裁判官の爆笑お言葉集』、読売新聞社会部編『ドキュメント検察官―揺れ動く「正義」』、原田國男『裁判の非情と人情』、秋山健三『裁判官はなぜ誤るのか』、志賀櫻『タックス・ヘイブン』『タックス・イーター』、富岡常雄『税金を払わない巨大企業』、斎藤貴男『消費税のカラクリ』、水木楊『東大法学部』、大下英治『小説東大法学部』(小説)、大岡昇平『事件』(小説)、川人博『東大は誰のために』、川人博(監修)『こんなふうに生きているー東大生が出会った人々』、佐藤伸行『ドナルド・トランプ』、三浦瑠璃『「トランプ時代」の新世界秩序』、池上彰『世界を動かす巨人たち<政治家編>』『世界を動かす巨人たち<経済人編>』、堤未果『政府はもう嘘をつけない』『日本が売られる』、山田正彦『売り渡される食の安全』、植草一秀『25%の人が政治を私物化する国』東京新聞社会部編『兵器を買わされる日本』適菜収『自民党の大罪』、宮沢喜一『21世紀への委任状』、武村正義『小さくともキラリと光る国・日本』、田中彰『小国主義』などなど。 

 

 

(続き)R6.9.28加筆 R6.9.29再加筆

 

 R6.9.27の総裁選で、高市氏と石破氏の決選投票になり、石破氏が「逆転で」新総裁に決まった。(決選投票で「逆転で」なった方には、石橋湛山、池田勇人など、そうそうたる方がおられる。)

 

以下、あくまでも私見だが

 

・長年安倍派・麻生派によってひどい目に遭わされてきた(と報道で読んだ)ので今回報われて良かったな、と私は感じている。(少し涙を拭っておられた。)だが、これからが大変なのだ。

・誰が背負っても大変な仕事だと思うが、石破さんは経験豊富な実力者で、穏当な判断がおできになるだろう。スタッフも優れた人を揃え、うまく舵取りをするだろう。私は期待したい。(中途で倒れないようにお願いしたい。)

・石破さんの挨拶は、「国民が楽しく安全・安心に・・」というところは本当にそうだと思った。(実は涙が出た。)

・後のニュースでもUSスチール・新日鉄問題でアメリカ相手に直言しておられたので、ちゃんと「誠意と論理」を持って言える方だと改めて感じた。(そのニュースも、当選したら流すようにTV局が仕組んであったのかも知れないが・・?)(最終的に買収がベターかどうかは私にはわからない。アメリカは、大統領選での労働者の票を見ているのか、それとも安全保障を見ているのか? 今や日本企業もかなり中国資本に株を持たれていると聞く。)

 

・石破さんは、高市票もかなりあったことをよく覚えておき、その上でうまく運営していくことを当然考えておられるだろう。

・高市さんは、予備投票では勝っていたし、決選投票でも安倍派と麻生派が味方したから、圧勝を期待していたのに、決戦で敗れたのはなぜか? 派利派略で敗れたに過ぎない、と考えるのは従来の派閥選挙の思想から逃れられていない人の発想だ。それ以上の何かがあったかもしれない(あったのだ)、と自らを反省し、改めるべきは改めていかれるとよろしいでしょう。もし本当に将来を嘱望されてこれからの仕事もおありにある、ということであれば。

・高市さんは、「予備投票では1位だった」ばかりに注目すべきではない。予備投票でも、過半数が取れないばかりか、全体での得票率は実は低いのだ。「高市さんではダメだ、高市さん以外で」と考えた人が党員党友に多く、議員にも実は結構いた、ということは紛れもない事実だ。このことに謙虚になれないといけない。すぐ近くの応援団は高市さんにいいことばかり言ってご本人の目をくらませてしまうかも知れないが、そういう事態に陥ってはならない。(安倍さんはそういう事態に陥ってしまっていた。)(「王様の耳はロバの耳」と言ってくれないゴマスリの人ばかりがとりまいてくるのだ・・)派閥の力学をうんぬんする人がその後もいるが、まずは派閥で票を稼いだのは高市候補その人だった。

・もしかしたら、高市さん(危ない)では野田さん(首相経験者で、大人としての信頼度が高い)に勝てない、と自民党議員の多くが考えたのか。石破さんなら野党に拮抗できる、と。

 

 

・党員・党友票を見ると、奈良県では高市さんの圧勝、鳥取県では石破さんの圧勝、であったのは、それぞれ地元だから分かるとして、愛知県・福岡県では高市さんが大きく勝っている。なぜか? 愛知県ではトヨタの系列の人が高市さんに入れたのだろうか? 福岡県ではなぜ? ワカラナイ。

・だが、党員・党友票は、上位3人が多いとはいえ、他の人も、併せればかなり取っている。これは、一人の人気者にポピュリズム的に票が集まったわけではないから健全なしるしだとも見える(全体主義の国では全会一致になる)。上位3人も自分がすごく支持されているわけではない(批判票も多い)ということを心に銘じ自戒の材料とすると良いだろう。

・高市さんは安倍派と麻生派と統一教会が応援していて、なんだ、前と同じじゃないか、自民党はダメだな、と見られ、総選挙で敗退する危険性がある、と判断した人が多かったのだろうか。

・日韓関係も今せっかくうまくいきかけているので、タカ派と見られがちな高市さんだと今のいい方向を壊すかも知れない、それよりも、経験豊富で良識ある判断のできると見られる石破さんの方がいい、と判断した人が多かったのだろうか。韓国の人もホッとしてるかも。

イスラエルを見よう。ネタニエフは強硬派が支持基盤なのでたえず強硬なことをやり続け、戦争を止められず、周辺国に迷惑をかけ、世界中から孤立しつつある。国富を失い、ついにイスラエルは弱体化してしまう。おや、戦前の日本もそうだった。焼け野原にされて初めて止まったのだ・・同じことをしてはいけない。高市さんだと危ない、と良識があれば判断するだろう。

・もし高市さんになったら、高市さんだとどうしても安倍派・麻生派・統一教会・裏金キックバック・靖国というマイナスイメージがついて回るので、選挙で大敗し、自民党が大分裂する危険性があった。このように良識ある人が考えたとしてもおかしくはない。石破さんから高市さんが離反しても自民のダメージは小さいだろう。石破さんのもとでもし仮に自民党が選挙で小敗したとしても、それは石破さんのせいとは言えず、むしろあれだけのマイナスイメージを背負いながらもこれだけの傷ですんだ、というべきだろう。

 

軍隊は軍隊しか守らない国民に銃を向けることも多い。ミャンマー軍事政権や中国の天安門事件を見よ。大日本帝国でもかつてはそうだった。軍隊が暴走しないようにするには? 大事な視点だ。

・参考までに、NHKの「調査報道」か何かでやっていたが、ミャンマー軍事政権は、日本国民の税金から出たODAで中国から燃料を買い、ミャンマー軍が民間や避難民キャンプを空爆する。国民が沢山死ぬ。こういう事態になっているそうだ。NHKはすぐれたスタッフを揃え、いい番組を作っているのだ。菅さん、よろしいですか?

 

 

老子は言った、「そもそも武器というものは不吉な道具であって、人々はこれを憎む。ゆえに徳の高い者はそこにはおらない。・・武器は不吉な道具であって、君子の使うべきものではないのだ・・」(意訳) 老子道徳経31

 

また老子は言う、「堅強なるものは死の仲間、柔弱なるものが生の仲間だ。武器が堅強なる場合は相手に勝てない・・強大な者は下位になり、柔弱なものが上位になる」(意訳) 老子道徳経76

 

 あまり得意ではないが、『孫子』からも引いておこう。

孫子は言った、「・・滅んだ国は再興できず、死者は再び生き返らせることはできない。先見の明のある君主は戦争を慎み、よい将軍は戦闘を慎む。これが国を安んじ軍を保全する道だ。」(孫子13章火攻篇)(意訳)

 

「軍事力を運用する原則としては、相手を保全したままで勝つのが上策で、相手を撃破して勝利するのは次善の策にすぎない。・・百戦百勝は最善のやり方ではない。戦わずに相手の軍隊を屈服させるのが最善の方策だ。」(孫子3章謀攻篇)(意訳)