日野瑛太郎 「フェイク・マッスル」(講談社文庫)
人気週刊誌《週刊鶏鳴》の新人記者・松村健太郎に課せられた、非常に難しい任務とは、最近、ボディビル大会で3位に入賞した人気アイドルグループのメンバーである大峰颯太に掛けられた疑惑の真相解明であった![]()
僅か3か月のトレーニングでアレ程のボディを造るコトは不可能だッとの指摘があり、ドーピングが疑われていたのだった
健太郎は、大峰がトレーナー&広告塔となっているジムに入会し、トレーニングに励むが・・・![]()
苦心の末掴んだネタは、単なるアイドルのゴシップをも超える特大のスクープであったッ![]()
栄えある第70回江戸川乱歩賞に輝いた、サスペンスフルなデビュー作
と書いた様に、「新人推理作家の登竜門にして最大の栄誉&チャンス」だった筈の乱歩賞で、過去にはソコこそ枚挙に暇がない程の、綺羅星の如き作家の名前が並ぶのだが・・・最近は賞の権威と言うか、威力が落ちてきている様な印象が否めない![]()
実際に、クオリティーの低下が叫ばれているし、受賞作なしの年もあったりする
決してミステリ業界全体の話しではなく、今も次々と新人でHitを飛ばし人気作家へと駆け上っていく者も少なくない
また、乱歩賞作家~も、そ~した人も産まれてきてはいるのだが・・・
ただかつては・であり、現状では「このミス大賞」とかの方が注目されていたりするのだ
ミステリ全体のレベルが逆に上がり過ぎて&登竜門として他の賞などが産まれてきたという状況がある為、必然的に乱歩賞の価値が・と言う感じなのかもしれない
と言う中での今作は70回目の受賞作で、人気アイドルが突如・僅かな期間でのトレーニングでボディをビルドアップさせたコトへの疑惑が浮上し、その真偽を確かめる為に新人記者が潜入秘密取材を敢行するのだが、苦心の末掴んだ証拠とは一体ッ![]()
と言うのが大まかなストーリーで、作中ではメインの松村の視点で主に語られるのだが、次々と語りてが変わり、様々な視点で進んでいくのが面白い
ストーリーが進んでいくにつれ、サスペンス度が増していき、遂には真相がッ
しかし果たしてッ
といった仕掛けもあり、楽しく読み進めるコトが出来た
作者の日野は、ココ3年、毎年最終選考にまでは残るモノの受賞はならなかったのだが今作で悲願のッ
となっていて、今作がデビュー作となる
また経歴は素晴らしく、最高学府の院迄出ているのだけあって、理路整然とした語り口なので読みやすく分かりやすく進むストーリーと、「小慣れている」感があり、新人とは思えぬ落ち着きというモノが感じられた
また近年の流行りである「どんでん返し」系のネタも決まっているし、ボディビル業界といった決してメジャーとは言い切れないが、かといってマイナー競技とも言えない辺りに目を付けた辺りは、ナカナカ「
」であったなぁ~と言う気持ちにさせられた![]()
さぁ~後はこの次の作品が大事なのである
ココで更なる飛躍・注目を浴びなければ、次々と押し寄せる新人作家の波に埋もれてしまうだろう![]()
と言うか、自分の前にいる作家を浚おうとする新しい波の一人であるので
、頑張って目を見張る様な・驚かせる様な作品を仕上げてもらい、楽しませてもらいたいモノである![]()
赤井三尋 「翳りゆく夏」(講談社文庫)
「誘拐犯の娘が大手新聞社に内定ッ」とのスクープ記事がとある週刊誌に掲載された
実際20年前、新生児が誘拐される事件が発生していた
窓際社員の梶は、社名を受けて事件の調査を開始し、犯人の周辺人物や関係者・被害者の近辺・更には当時の病院関係者や事件を担当した元刑事までへも取材を敢行する
すると、当時は明らかにされなかった《封印されていた事実》へと辿りつくッ![]()
第49回江戸川乱歩賞作となった、異色な経歴を持つサラリーマン作家の記念すべきデビュー作
本作は’03に単行本化され、’06に文庫化された作品で、↑のは2か月後の6刷目となるモノ
僅か2ヶ月でコレだけ重版が掛かるのは、作品が優れている&話題性があると言う証左に程ならないが、ナニしろ作者はニッポン放送で記者として働いており、コノ時にはフジテレビで報道局にいる・と言う生粋のジャーナリストだったからだ
本業の傍ら、趣味で小説を書いては賞などの応募していたらしいのだが、今作で目出度くデビューとなった次第であったという![]()
なので主人公が濡れ落ち葉的な窓際記者が、突如社主からの下命により、20年も前の誘拐事件の再調査に取り掛かるといった出だしで、丹念で執拗な取材の末に、隠され封印されていた驚くべき事実が浮かび上がる・・・
と言ったサスペンス調のストーリーとなっている
誘拐事件と言うミステリのある意味王道の事件に、作者自身がある意味投影されたとも言える新聞記者が、ジャーナリストとしての信念に基づき丹念な取材を続けるといった複合的なミステリ作となっている
なので特に記者の梶の描写は、自分が今までやってきた仕事と重なるであろうから、リアリティがあり緊張感に満ちている
当時は「まだ」かの局は時代の寵児であり花形であったのだが、今はオールドと化し批判を一身に浴びていて、最も凋落の激しいTV局となっている![]()
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新聞・TV・ラジオと言った世論をリードし、時代を先取り舵を切っていた業界の当時の勢い隆盛具合なども含めて読むと、現在とに比較ともなって更に面白味が感じられるかもしれない・・・
作者の赤井の作品はコレ以降は目にしていないし、実際に書いて刊行されていたのかも知らないのだが、多分恐らくないと思われる
本業が他にあり、ソチラも激務だったであろうことは想像できるので、新たなネタは準備出来なかったのであろう
その辺りからも、若干の乱賞の権威の低下なんてコトも囁かれる様になっていたし、実際に読むコチラ側も感じてたりしていた![]()
乱歩賞作家となれば、ミステリ界の新人賞としては最高峰であり、コレを獲れば念願の道が拓かれ突き進んでいくッと言った構図がある種「当たり前」だっただけに、淋しさ哀しさを感じたりもしていたのであった
でも、モチロン、以降も受賞後バリX2に活躍している作家も誕生しているので、大いに新人には期待してはいるのである
さて、今回は「乱歩賞作」と言う括りなのだが・・・日野の方の表紙を見て感じられないだろうか
「第70回江戸川乱歩賞受賞作」と言う看板がないのであるッ![]()
最早、この受賞歴が役に立たないとでも言うのであろうかッ![]()
だとしたら、ミステリ好きな読者の一人としては、ナンとも哀しいのであるんだけど・・・![]()

