楡周平 「雌鶏」(集英社文庫)

 

ようやく戦後の混乱も落ち着きを見せ始めた昭和29年・赤坂にある最大級のクラブ「ニュー・サボイ」に勤めるホステスの貴美子は、類まれなる美貌を持っていたが、ドコか暗さをも秘めていた・・・

見初めた大立者の鬼頭清次郎の薦めもあり、以前より興味を抱いていた「占い・易」にて生計を立てるコトになるが、ソレは単純な囲われ者と言った話しではなく、スケールも大きく日本の政財界を牛耳る大胆な計画であったッグラサン

破壊略奪横暴がまかり通る終戦直後の混乱期から、朝鮮戦争勃発による特需による復興とサンフランシスコ条約による本土復帰・そして始まった高度成長期といった激動の昭和史の裏で、秘かに蠢く一人の女性と、ソレを操るフィクサーの存在があったアセアセ

呪詛を抱えながら、復讐の念に囚われたとある女性の一代人生記虹

 

 

ナンとも怪しげな雰囲気が漂うカバーの今作は、楡にとっては久し振りな感じのピカレスクもので、カオスな戦後からの昭和史を裏で操り彩った女性の物語となっている

何度もココで書いているが、楡のデビューは衝撃的でHBなクライムもので、しかも計6部作となる壮大な展開が待っていたのだが、あっさりとソチラの方面は放り棄て、企業経済モノやポリティカルエンタメであったり、コンゲームモノや法廷モノなどなど、多彩なジャンルを書いてきた

その中には「戦後昭和史」とも言える、壮大な大河モノがあり、↓の関連でUpする作品もそうなのだが、実に骨太な・でいてスリリングな展開の作品郡がある

戦後の焼け跡から復興を果たし始めていた時、偶然・というか大物フィクサーの目論見に見事マッチした貴美子と言う独りの、強烈な孤独の暗い影を背負った女性が、その元で「抜群の予言率を誇る女占い師」として君臨するコトにより、政財界を操っていくという内容

で、序盤で語られる辛酸を舐めた過去からの復讐が、如何に成されるかが読み処で、「豚は太らせてから喰えッ」との格言(おばけ)通り、陰湿ながらも大きなしっぺ返しが待っている

また戦後昭和史の側面もあり、数々の実在の人物や事件が投影された場面が多くあり、ソノ辺りも「事件ノンフもの」が好きな人は楽しめると思うスター

 


 

「宿命(上下)ワンス・アポンナ・ア・タイム・イン・東京」(講談社文庫)

 

革命を唱え、学生運動に身を投じた有川三奈だったが、現在は多数の病院を抱える医療法人の会長として、日々激務の中辣腕を奮っている病院

そんな三奈の長男で、エリートをひた走る大蔵官僚の崇に、実力派代議士である白川眞一郎の娘との縁談の話が持ち上がるハート

以前燃え上がらせた革命の志を、今は権力に近づき握るコトに変えた三奈といずれ政治の世界への転身を考えている崇の母子にとって、ソレは願ってもいない話しである炎・・・筈だった

30年もの長い年月を経て再会した二人の男女

ソレは呪われた宿命が胎動した瞬間であった爆弾

二世代間に渡る因縁・執念・怨念・そして愛憎が交わる、相克の大河ファミリアロマン

 

3年半に渡り小説誌に掲載された後の’08に単行本となり、’10に「宿命」を加題して文庫化された本作は、↑で少し触れた様に楡の新機軸となるジャンルへの挑戦的な1作となった

HBな路線からは少しズレるがソレでもスリリング且つダイナミックな展開は、読み手の緊張感を些かも緩めないし、次々と過去の・親の因果が子に報いつつも、ソノ子の過ちというか傲慢さが襲い掛かって来る辺りの展開は、楡が本質的に持つ暗めのアイデンティティに関わるんじゃないのかなどと邪推したくなるニヤリ

KO大卒で外資に就職・と言う華麗な経歴ではあるが、幼少期からKOではなく、出は岩手の寒村でソレ程裕福と言う訳ではないという *かといってひどく貧しい家計と言うコトもないそうだが・・・

大学では所謂<エスカレーター>で挙がってきた連中とは、多分一線を画されたのではえーん

そしてソノ怨みみたいな念が後年になって作品に投影されているのではタラー

などというおもってしまうのだが・・・はてさてウインク

’57産まれと言うコトなので、楡も68になるのだが、老けこまずコレからも益々激しい鋭い棘を牙を磨きながら、今後も作品を楽しませてほしいグッ