松岡圭祐 「高校事変20&21」(角川文庫)
週刊誌編集部を急襲し、TV局をジャックした恩河日登美たち・優莉匡太が率いる半グレ同盟は、彼への批判を一切許さず、彼の名前を公にしただけで、無惨にも次々と処刑されていった
そうして言論弾圧に成功した半グレ同盟は、結衣や凜香・瑠那達のバックボーンとなっていた矢幡総理を始めとする政権をも懐柔していたッ
その様な変化の中、彼女らの安全を守る為と称し、半グレ同盟から落伍した者達と一緒に、太平洋に浮かぶ無人島へ隔離され、異例の「林間学校」で授業を受けるコトに・・・
しかし、彼女らを待っていたのは本物の軍隊・自衛隊の精鋭部隊だったッ
瑠那の元を訪れた、青年たち一行は「NPO法人」の面々で、うら若き少年少女が次々と半グレ同盟へと参加し、家出をしているコトを憂い、同盟の本拠地と見做される付近の信仰宗教の施設へのガイドを乞うてきた
戸惑いと困惑する瑠那だったが、見捨てる訳にもいかずに同行し、森深い総本山へ入山する
しかし、待ち受けていたのは年端も行かぬ少年らの、ライフルによる攻撃だった
「地獄のハイキング」の行き先の結末はッ
壮絶な暴力描写と、壊滅的な親子喧嘩を描くシリーズ20&21をまとめてUp
7&8月と連続刊行されたシリーズだが、ようやくココで本当の最終決戦へと進んでいきそうな感じとなった
一時、優莉結衣がメインとなって物語が展開されていったが、実はソレはまだ序章に過ぎず、本当の決戦はコノ後の「3部作」で描かれるようだ
というのは、21の巻末の次回予告で「いよいよ最終3部作の開始」と銘打たれており、22は今月末に刊行されるという・・・*で今日その「22」を購入してきた
と言うコトで今回の2作は、その前触れ・というか準備段階に過ぎないというのだから、も~松岡の胸中で謀られている展望って、一体ど~なってんのか
毎月ですよ・毎月 文庫を書き下ろしって しかもコレからも毎月出すって
で今回の舞台は離れ小島の無人島での林間学校と、半グレ同盟が待ち受ける藪深く未踏の山中でのハイキング
って行事の言葉面だけなら穏やかなのだが、無人島には自衛隊の精鋭部隊が落下傘降下してくるわ・潜水艦とイージス艦が沖合で待機してるわ・最終的にはクラスター弾が投下されるわ・と、も~ホンとの無間地獄が繰り広げられ
ハイキングでは、そこかしこから半グレ少年がアサルトライフルで銃撃してくるわ・大人半グレが完全武装でナイフで・手榴弾で襲い掛かるわ・ドーピングして怪人化した怪物が執念深く追跡してくるわ・・・
コレ迄の展開以上の混乱っぷりの争乱が繰り広げられる
さぁ~も~コ~なったら、行きつくトコまで行かないと終わりはないので、ドコまで荒れ狂うのか、後3作となったシリーズの成り行きを楽しみに待つしかない
森村誠一 「黒い墜落機(ファントム)」(角川文庫)
埼玉県の入間基地を飛び立った極秘訓練の自衛隊のジェットが墜落したッ
場所は南アルプス北部の山間部で、付近には僅か10戸・13人の老人がいるだけの、寂れた山村だった
そしてコノ墜落機には、世間には絶対に知られてはいけない秘密があった
焦る自衛隊幹部は遂に悪魔的判断を下す
機体の残骸回収と全村民を始末するという「サルビア作戦」と命名された作戦は、直ちに開始されたッ
望まれて財界の大物の息子と結ばれた見坊真紀子だったが、夫の異常な性格と重度のマザコンっぷりに失望し、心を寄せる男性教師の反町を出奔したのだった
が、残して来た息子のコトが気掛かりで仕方なかった 夫への愛情は微塵も残っていなかったが、まだ幼い息子には・・・
偶然、二人が居合わせてしまった静かな山村は、一瞬にして戦場と化した
自衛隊の裏の顔と、か細い弱者たちの懸命の奮闘を描くスリリングサスペンス
本作は最初「流星の墓」と題されて連載されて単行本化されたが、S53に文庫化される際に今回のタイトルへと変更された
上のはS61の13刷目のモノ
と言うコトは大1の頃に購入したのだが、時期ははっきりとは覚えていない もしかしたらコノ1年後くらいに買って読んだのかもしれない
森村というと、先ず思いつく題材が「ホテル」「山岳」なのだが、次の多いのが『自衛隊&軍隊・戦争』を扱った作品
以前に書いたが、森村は自身のエッセイで「徹底的な軍隊・戦争嫌い」を公言しており、頑固な「9条護憲派」である
その為、森村の作品の中では自衛隊は、ほぼほぼ圧倒的な悪者として描かれている
昨今の世界情勢や、日本を取り巻く近隣無謀国家の策略・または頻繁に起こる自然災害時に於ける自衛隊の出動や活躍により、コノ頃とは考え方・捉え方は大いに異なってきてはいる
が、コノ当時はまだ自衛隊は嫌われ恐れられ、誤解に偏向に晒されていた
なので森村だけでなく、他の作家にも同様の見方をされた作品が多くあったのだが・・・時代が変わった・というべきだろう
今作に於ける「サルビア作戦」の様なコトを、現在の自衛隊が果たして本当に行うだろうか
と考えると、ある種の荒唐無稽な感は否めない
が、コノ当時は本当に「あってもおかしくない」と思われていたし、だからこそ今作は数多い森村作の中でも、人気を得ている
作中に出てくる「マザコン夫」などは、時代を先取りしていた感もある
また今作でも、森村お得意で大好きな「弱者VS圧倒的な武力を持つ多勢」と言う、対立の構図が描かれ、迫真の・迫力のアクションシーンが展開されている
「社会派推理作家」としてデビューし、以後も精力的な執筆を続けてきた森村が、新たな境地に挑戦し、成功を収め、ジャンルの幅を自ら大いに広げていった作品としても注目したい