黒木亮 「アパレル興亡」(集英社文庫・上下)

 

山梨の貧農産まれの田谷毅一は、昭和28年に高校を卒業した後、折角決まっていた地元の就職先を断り、単身上京するDASH!

頼った先は同じ村の出身で、既に神田で婦人服メーカーを興していた池田定六の【オリエント・レディ】の所だった

持ち前の馬力と負けん気・そしてガムシャラさを発揮して、小さな会社の中でも頭角を現していく田谷

やがて時代は高度成長期を迎え、戦後から完全に復興し豊かになったことを背景に、アパレル業界も空前の発展を遂げ、急成長していくアップ

やがて池田の死後、会社の後を継いで社長となった田谷は、更に会社を大きくしようとアクセルを踏み続けるが・・・昭和の時代が終わり、膨らんだバブルは弾ける爆弾

しかし、停滞を嫌い強引に商売を拡充し続け、ワンマンで傲慢に振る舞う手法に疑問符が浮かび、遂に「物言う株主」コト、強欲ファンドが乗り込む事態にッダウン

戦前から戦後混乱期から始まり、昭和~平成と移り変わる時代をファッションを舞台に語る、リアリティ溢れるエコノミカルストーリースカート

 

 

とんとファッションなどのアパレル業界には疎い私でも、例えば最近の「ユニクロ」だとか「ZOZO」などは知っているし、昔なら「ラルフローレン」とか「バーバリー」などの名前には馴染みがある

そ~いった実在の固有名詞が登場するのが今作で、主役は「オリエント・レディ」という婦人服メーカーなのだが、モチロンこれには現実もモデルがある

多分詳しい好きな方なら読めば直ぐに分かるようなのだが、「東京スタイル」がソレで、主役の田谷毅一も同社の中興の祖と言われた高野義雄氏がモデル

と言われても・・・実は私は氏もだしメーカー名を言われても未だにPinと来ていない汗うさぎ

そんなメーカー ありましたっけアセアセ ってな感じで読了した

*一応、このブログにも女性のフォロワーの方がいらっしゃるので、皆さんなら直ぐに分かるのかなはてなマーク

が、まぁ~そんな状態であっても作品自体は楽しく興味深く読み進めるコトが出来た

ソレはファッション史でありながら、経済・歴史・流行史ともなっていたからで、その時その時の事件や世相・背景など共に描かれているからで、ソチラの面については好きだしソレなりに知識もあるんで、噛み合わせで面白く読み進められた

当然、メインのアパレル業界の内面やソノ暗黒史・歩調を合わせて発展してきた百貨店史とも重なっているので、昔、最初に就職した先が「流通グループ」だった私としても他人事ではない、共感を伴っていた *尤も私の配属は「鮮魚部」で、ファッションと無関係だったんですけどネウシシ

ストーリーも、昭和の時代からたった今の現在までも追っているし、丁寧で膨大な取材には定評のある黒木の作品なので、リアリティもイッパイ

ファッション・経済・世相モノと、色んな面で楽しめる作品に仕上がっていたのがクラッカー

 

 

「トップレフト 都銀VS米国投資銀行」(祥伝社文庫)

剥きだしの欲望と莫大な金銭が動く国際金融ビジネス界に於いて、たった1つの勝者とソノ↓に蠢く無数の敗者が存在している

ジリ貧状態の大手都市銀のロンドン支店長・今西に、巨大な投資案件が持ち込まれた

日系自動車会社がイランに工場を建設するというモノで、他に欧州・アラブの銀行団を率いてディール獲得を目指すが、かつての同僚で現在は米国投資銀行に勤める龍花が立ちはだかってきたッ

ソコへ世界を揺るがす様な巨額の<敵対的買収(TOB)>が仕掛けられてきたガーン

名誉で栄光の主幹事・トップレフトの座を掴むの果たしてドコだッ!?

スリル満点のエコノミカルサスペンスが堂々の登場音譜

 

単行本が’00で、’02に文庫化された今作が黒木にとってのデビュー作で、ソレがこれ程までの完成度と興奮度を以ってして送り出されたのは衝撃的であった

だが、黒木の経歴を見ればソレも納得で、当時は現役の総合商社の金融部長職にあり、ソノ前の経歴もピッカピカに輝き眩しい光を放っている

更に尚、学生時代には「箱根駅伝」でランナーとして路を駆け抜けていた・というのだから・・・ゲッソリ

そんな華麗な経歴と経験を元にして描かれた、国際金融スリラーの本書は、唯一勝ち抜き栄光のトロフィーを掲げた1社と、決して表沙汰にはされない裏と闇の世界の駆け引きと、積み重なった死屍累々の敗者との、虚々実々で生き馬の目を抜き生き血を啜る壮絶な世界を・ただ一つ信じる≪$≫を武器に闘う者たちのドラマがビビッドに描かれている

コノ黒木を読む少し前から、経済モノを読み始めていて、高杉や江波戸を貪っていた時期なので、書店で見かけて直ぐに購入した

上記二人の様に全部を直ぐに・と言う感じではないが、見かける度に・興味を惹かれる度に購入してきた

最近はチョッとご無沙汰気味ではあったが、↑のを見かけて購入したコトで、こ~して快心のデビュー作も関連でUp出来たコトは良かったと思っている

過去作を追うコトは多分しないんだけど・・・また新作が出ていたらきっと買うだろうなぁ~と改めて感じた作家・作品だったウインク