染井為人 「海神(わだつみ)」(光文社文庫)

 

あの3・11が、全てを変えてしまった・・・波

岩手県沿岸部より船で数分の距離にある「天ノ島」は、漁業と観光で成り立っていたが、震災で島は壊滅状態に陥り、人的財的被害損害は正確には計れなかった

そんな状況下に島を訪れた、体格の良いリーダーシップのある島外の男・遠田とその部下2名により、徐々にではあるが彼らを中心に少しずつまとまり、1歩1歩復興の歩みを始めたお願い

が、時間が経つにつれヤツらの本性が露わになり、震災支援金から4億2千万もの大金が消えていたコトが発覚し、島の地元民たちは沸騰するッ炎

東京の女子大生・姫乃は、3・11とその後の苦難を知り、ボランティアとして島を訪れる

慣れない活動に苦労はするものの、その懸命な姿勢が島の人々に受け入れられ、次第に島のアイドル的存在となり、離れがたくなり気付けば2年の歳月が経過していた

島出身の大手新聞記者の菊池一朗も、遠田の正体に疑問を抱き調査を始めると、おぞましい過去が浮き彫りとなり・・・

現在、人気&評価がの著者が描く、忘れてならじのアノ日とその後の社会派ミステリ

 

 

3・11に関しては、もうすでに様々な形で色んな作品が出ている為、今~だと、少し形を変えて訴える内容・展開にしなければ・と思うが、今作「も」とてもよく出来ていて素晴らしい仕上がりだと思う

基本的には震災による悲劇と絶望・地獄から、住まう人々が少しずつ1歩ずつ歩み始める姿を描いており、中では少しファンタジックでオカルティックなシーンなども散見されるが、ソコら辺りはさほどの違和感は抱かないし、そ~いった部分が苦手な私でも素直に受け入れられ、締め付けられる想いがした

だが、必ずこ~いった「他人の不幸に付け込むクズドクロ」は存在し、群がってくるのもまた事実で、その辺りの哀しい性・というか卑しい本性をむき出しにするのもまた人間というモノなのだろう、と作者は訴えているドンッ

また、こ~したチョッと暗めでDarkなテイストは、染井はお手の物にして大得意オーナメント

そ~した持ち味が今作でも充分に活かされていて、「社会派ミステリ・サスペンス・エンタメ」と呼ばれ、今注目を浴びているのも納得といった所ウインク

様々な「顔」を見せてくれる染井は、今後も要Checkなのだ拍手

 

 

阿井渉介「荒南風(あらはえ)」(講談社文庫)

横浜の暴力団「鶴来組」の事務所に、ふらりと現れた男はこう言った

「砂子さんはいますか」と

元・マグロ猟師の彦地秋郎は、4年間服役→出処したソノ足で事務所を訪れたのには、どうしても確認し、その上で果たさなければならない贖罪を抱えいていたのだ銃

関西系の組織と抗争中の鶴来は、息子の直樹を彦地に【誘拐】させるコトにより、ボディガードとして付け、西へと向かわせたDASH!

彦地の抱えた罪とははてなマーク砂子の正体とは??そして目指す最期の場所は!?

梅雨の末期に吹きすさぶ冷たい湿った強風=荒南風の如き、揺るぎなき信念と情念を胸に、闘いの場へと漕ぎ出す男と少年のハードボイルドストーリーメラメラ

 

単行本が’97で、文庫化は’05の作品で、私にとっては「お初」の作家だった

経歴を見ると、コレ迄にも精力的に作品を刊行しているし、シリーズとなっている作品もある様なのだが、ソレ迄関わりがなかった方

ただ「特捜最前線」でシナリオを書いていた・とのコトなので、もしかしたら気付かないだけで氏の脚本(ホン)のエピを見ていたのだろうとは思う

今作は、本格的なハードボイルドではあるが、犯罪モノでもあり、ロードムービー風な側面もあり、主人公が元漁師と言うコトもあり海洋冒険モノとして捉えるコトも出来る

が、本筋はしっかりとミステリであり、色んな面を備えている辺りはベテラン作家の妙・と言えるだろうグッ

また主人公の彦地は、過去の闇を抱えているがために寡黙で一途な男であり、こ~した造形はHBならでわッという感じがして、HB好きな人には堪らなかったりするハート

とか書きながら、個人的には結局「コレ1冊」で終わってしまった

まぁ~コレもいつも言う様に「縁」というモノで、書店の棚で発売後に平台で見かけてタイトルに先ず惹かれて購入したのだが・・・

充分に面白かったし堪能はしたのだが、過去作を遡及もしなければ新作にもコノ後出会わなかったので、残念な気もするが・・・まぁ~仕方ないですわネショボーン

 

今回は「3・11」関連で・とも考えたが、今回を逃すと阿井のをUpする機会もないかもと思いコチラにした

共に海に関連する<難読単語>という括りで波