下村敦史 「同姓同名」(幻冬舎文庫)
6歳の女児が公園のトイレで、28か所も刺されて死亡するという陰惨な事件が発生し、16歳の高校生が犯人として逮捕された
少年法で少年の氏素性は秘匿されてはいたが、現代ではSNS上で直ぐに身元が特定され、瞬く間にソレは拡散し、遂にはワイドショーでも名前が叫ばれ、ソノ名前は嫌悪・憎悪の対象となった
将来的にはJ→世界へヒーローを夢見ていた高校生は、ほぼ決まっていた大学への推薦が閉ざされ、コンビニでバイトをしながら定時制へと通っていた若者・ただアニメが好きなだけの極至って普通のチョッと暗めの中学生・・・
コノ事件は様々な影響を彼らにもたらし、やがて引き返せない事態にまで陥るコトとなる
偶然、自分の名前が女児殺害事件の犯人と同じ『大山正紀』だった為にッ
登場人物は全員【大山正紀】という、奇想天外な超絶ミステリ
500Pを超えるVolだったが、面白くて一気にかなり早いペースで読み進められ読了した
’20に単行本が出て、’22には文庫化・コチラは’23の5刷目となる人気っぷりで、その時は見逃していたのだが、行きつけの書店を変更した為、新たに目立つ帯と共に棚に置かれていたので・という次第
何度もココで下村の作品はUpしているが、彼は1つのジャンル・テーマに捉われずに次々と新作で新しいチャレンジをしている、新進気鋭で期待の若手(と言っても今年43歳になるけど)
で今作では主な登場人物が同姓同名と言う、ナンとも凝った仕掛けを施しており、総勢10名もの「大山正紀」が次々と現れる
モチロン、全員は別人で別の人格と生活と性格を持っている
が、その為に読んでいるコチラ側としては、誰が誰でど~なっているのかこんがらかってくる・言わばTangleモノなのだ
*言わば・とか書いたけど、実際はそんなジャンルはないし誰も言ってはいない
()付けて、そ~名付けたかったんですよネ
こ~した混線し歪んだ世界観の物語は、去年の下の作品でも使っており、今作はソレを更に増やして簡単には解けない様な仕組みとなっている
開かれていながらも閉鎖的で・・・舞台にはピッタリなんですよネ! | みかんjamのブログ (ameblo.jp)
コレも何度か言っているのだが、下村は近年の「乱歩賞作家」の中では、呉勝浩と並んで活躍してる、今後も期待の作家の一人
こ~した新しいモノへの怯みないチャレンジ精神は、もっと多いに褒められるべきで、後は映像化などによる一般への認知度が高まれば、もっとX2売れて人気となるのではと思っている
森村誠一 「凶通項」(角川文庫)
「アレは僕じゃないッ だけど・・・ど~見ても私だ」
TV画面に映し出された顔は、自分と瓜二つであった
地方の素封家の次男坊である万波利行は、出来の良い兄姉に比べ二流大学へ裏口で入り、ナントか卒業した後に、中堅ドコの商社に滑り込んで暮らしている一般人だったが、盛んにTVなどのニュースで流される事件の犯人は、自分にしか見えなかった
しかもソノ事件とは、日本最大の暴力団加島組の組長を襲撃した、対抗組織の大東組の沖山がまるで生き写しだったのだ
加島組からは仇として・大東組からは生贄として狙われる羽目に陥り、しかも新婚旅行先のホテルで妻を凌辱された久連山と、担当刑事の井手下もまた、沖山を追っていた
四方八方から狙われるという絶体絶命の窮地に、人違いの万波は絶望の中、無力ながらも反撃に出るッ
奇抜な設定がスリリングさを高める、ピカレスクロマン
昭和54年にカッパノベルスとして刊行された後に、S58年に角川で文庫化・↑のは翌59年の5刷目となる作品で、森村の作品郡には一連の【凶】がタイトルに付くモノがあるが、テイストとしては似通っている部分はあるが、シリーズと言う訳ではない
また今作は氏の「野性の証明」・「死定席」などとLinkするシーンはあるが、コレもシリーズと言う訳ではなく、あくまで独立した作品である
S59と言うコトは私は高2の頃で、小説では森村にドップリ浸かっていた時期で、前にも書いたが、月に1冊、書店に寄っては漫画と共に棚の森村のコーナーを眺めて吟味しつつ選んでいたという、実に楽しく胸躍る頃だった
で、ココまで森村のでは正統派のミステリを中心に読んでいたのだが、こ~いったチョッと風変りな・スリリングサスペンスなモノは読んでいなかった為に、非常に興奮しワクドキしながら読了した記憶がある
先ず設定が面白い ナニも関係ないヤクザからは狙われ、警察からも手配され、更に見も知らずの他人から一方的に付け狙われ襲われる・・・
という、絵に描いた様な不幸を一心に背負い、逃げ惑いながら徐々に弱力ながらも反撃に討って出る・と言うストーリーのも痺れた
今回、下村のを買った時から関連は森村のコレで決まりだな・と決めていた
ほぼ40年振りに取り出し眺めているだけで、ナンかアノ頃のワクワク感を思い出せて良かったなぁ~という感じがした