石井光太 「近親殺人 家族が家族を殺すとき」(新潮文庫)

 

日本に於ける殺人事件のおよそ半数近くが、家族を中心とした親族・家庭内で起きているのはご存知だろうか・・・

同居していた床に臥せっていた母親を放置して衰弱死させた姉妹

夫の愛情を独占していると、我が子に嫉妬し憎悪し、マンションの最上階から放り投げた母親

元看護師という立場から、一人で夫の介護をしていたが遂に限界を超えてしまった妻

などなど、現代社会の歪みから生じた7つの事件から、生き地獄の様をレポートする衝撃作

引きこもり・貧困・精神疾患・虐待・DV・そして被害者家族でありながら、加害者家族ともなってしまった悲しみと絶望に、如何に私達は立ち向かわなければならないのか・・・波

 

 

取材しココに記されたルポは、全て実際に起きた事件であるだけに、迫りくる迫力と言うか怖気・狂気は他人事ではないだけに、非常に芯に震えるモノがある絶望

特にこのテの事件報道は、近年とても多く聞くし眉を顰めてしまうのだが、基本的には各家庭という閉ざされた・閉じられた狭い封鎖空間で起きているので発覚が難しいし、公的私的を問わず外部の力を借りるのも難しく、解決が困難であったりする

その為に最悪の結果を迎えがちであるのも、とても悲しかったりする

ただ、やっぱり家族内の問題を・特に精神的な病気だったりすると『外聞を慮る』為に、更に悲惨な結末に陥りやすいという・・・

例え専門家でも、外部から結果だけを見てアレコレ後から言うコトは出来るが、当事者や関係者にとっては袋小路に追い詰められてしまっている心境・心理を理解するのは難しいのだろうなと感じさせられた

 

個人的に言えば・・・

ウチから10Mも離れていない家にも同様の事件が起きていたのだ

オジサンとオバサンに一人息子のTさんのSさん一家

近所ってコトで私らの子供の頃から知っていたし、組合とか行事でも顔を合わせていたし仲良くしていた

が、長じて数年前からTさんが精神的にチョッとオカシクなってしまいDVが起きていた

オジサンもオバサンも共に傷だらけだったし、Tさんの飼い犬も虐待を受けていた

なので毎晩と言う訳ではないが、夜10時頃になると怒声と騒音が響き渡るようになっていた

結局、ソレが原因と一概には言えないが、オバサンが先に逝き、オジサンも後を追う様に続き、紹介者があって結婚したモノの直ぐにやはりがお嫁さんに向かう様になり離婚して、虐待を受けていた犬も団体の方が引き取って・・・

遂に独りになってしまったTさんは病院に入院し、今もソコにいるし、家は売りに出されてたままで・・・

と、↑で紹介されたような悲惨な事件にまでは至らなかったが、直ぐ傍で同様のコトがあったので、今作はホンとに他人事とは思えない恐怖を感じてしまったネガティブ

 

と言うコトで・・・Upしておきながら言うのもアレですが

「今作はお薦めしません・・・」ショボーン

 

森村誠一 「致死家庭」(角川文庫)

二人に罪悪感は全くなく、ただ虫けらを殺すかのように、少女を川に突き落とし溺死させた少年・波多野と的場ガーン

コノ罪に問われもしなければそもそも事件としても扱われなかった共犯者は、三十数年後偶然街で再開した

近況を語り合う内に、的場は驚愕の告白をする

「時折、無性に誰でも構わないから人を殺してみたくなるんだ」と

ソコで波多野は、家族はモチロン、本人も死を望んでいる末期がん患者を紹介すると、的場は自殺を偽装し、目的を遂げた

同時期、波多野は、荒れ狂う息子・荘介の家庭内暴力にほとほと疲れ果てていた・・・

そして悪魔的発想で、息子を的場の生贄として差し出そうとする

現代社会の問題に鋭いメスを斬り込む異色の長編サスペンスドクロ

 

本作はまず’83に文春文庫として刊行された後、↑の角川文庫にLine Upされたのが’94のコトになる

なので現在より40年も前に、今日的な社会問題を推理小説に取り入れたコトになっていて、その辺りの森村の視線・感覚は鋭かったと言える雷

またコノ頃(’83)は、ベストセラー作家として人気を得ていたし、当時発表されていた「長者番付」でも常に上位にランクインしていた

なので筆は奔り、ノリに乗っていた時期と言え、創作活動にも一段と熱が籠っていた頃ではないだろうか上差し

私は基本、森村のは≪角川文庫Only≫で集めていたので、存在自体知らなかったのだが、今作は【致死三部作】の中の1作で、角川では最後に刊行されている

森村自身の「あとがき」があるのも嬉しいし、テーマも現在でも通用する・現在の方が研究も・(悲しいかな)事例も増えている為進んでいるし、更に顕著化してきている

そ~した行為・行動にも「○○症候群」などの病名も膾炙するようになってきている

ソレが日本の・社会の進化と解釈していいのか、それとも・・・泣くうさぎ

 

 

 

*今回のサブタイトルはある映画からの1シーン・台詞からなんですけど・・・

分かる方,いらっしゃいますかネにやり