大崎梢 「バスクル新宿」(講談社文庫)

 

新宿に新設された巨大なバスターミナル「バスクル新宿」には、昼夜を問わずに何本もの・いや、何十・何百本ものバスが乗り入れを繰り返し、人々を向かい入れ送り出している・・・

地方から上京してくる者・夢を抱き破れ地方へ向かう者・状況や心情は様々だが、様々な人生と思いが交錯している

ソコで起きた小さな事件・とも言えないような事件を切っ掛けに、繋がる筈のなかった人達の人生が鮮やかにゆっくりと・でもしっかりと交わっていく

そしてソノ果てに待っていた、奇跡の様な出会いと出来事は、人生の岐路に悩むそれぞれにしっかりと道標を照らしていった虹

作者ならではの暖かい眼差しが、心を癒すラブラブハートフルな連作短編ミステリ

 

 

タイトルとなっている場所だが、モチロンお分かりだとは思うが、新宿に新たに造られた巨大なターミナル「バスタ新宿」がモデルで、全国各地へ人々を送り出し、また全国各地から運んでくるのだが・・・私は未だに未体験で、というかソレ程東京に用事がなく、行く時も未だに「東名バス」を利用しているので、専ら終着&始発は東京駅となっている

だが、話題にもなったし、特集なども組まれているし、ナニよりソノ料金が安いのが魅力で、特に深夜便だと寝ている間に目的地に到着している・というのがチョキ

座席も指定でゆったりしてるし、プライバシーも保全されてるのもまたグッ

地方民としては、非常に使い勝手がE~のだ

そんな巨大ターミナルを舞台にした、大崎ならではのウォーミングな謎を凝らした連作短編集で、全5話が収められているが、特に最後で全ての謎が集結して解かれるのがナンともラブラブ

チョッとした縁・所縁が徐々に広がって、知りもしない他人同士がゆるやかに・でもしっかりと繋がっていく様には微笑みが思わず零れてくる・・・ニコニコ

実際に「バス旅のお供」にピッタリの作品だと思うOK

 

 

「サイン会はいかが? 成風堂事件メモ」(創元推理文庫)

のっけから訳の分からない要求 「ファンの正体を見破れる書店員がいる店舗でサイン会を行いたい」との若手ミステリ作家の要望に、颯爽と(おいで)名乗りを挙げた成風堂だが・・・

同一の書籍に4件の取り寄せ依頼が入るが、各自に確認をするとそんな注文はしていないと言われてしまい・・・ガーン

駅ビルの6階にテナントしている書店の成風堂には、しっかり者の杏子と、本大好きで勘と推理が鋭いが、実際の業務はテンデ・・・の多絵が、日常の営業時間内に起きるチョッと不思議な謎を解く、書店ミステリシリーズの連作短編集のシリーズ3音譜

 

先ずはいつもの様に、単行本は’07で文庫化は’10の作品で、作者の大崎にとっては3作目にあたり、デビューからいきなりシリーズ化した「成風堂」の3作目となる

デビュー作はコチラと同じ連作短編形式で、2作目は番外編的な長編となったのだが、こ~して本来の形へと戻って来た

普通の書店で起きる、チョッとした謎であったり、あるいは妨害工作(いやがらせ)であったり、困った問い合わせなどを描いており、ミステリではあるのだが「書店でのお仕事小説」の面もある

コレは、本好きな者にとっては堪らない仕様で、同時に一遍に2度美味しい作品で、特に書店という場所は、図書館と並んで大好きな・大切にしたい場所であって、その醍醐味を味わえるとあって、以来大崎の作品は全部ではないにしろ読んできている

*サスガにかなりファンタジックな作品もあり、ソレらはミドフィフオヤジには辛いモノがあったりするんですワえーん

ただ、残念なことにこのシリーズは現在ココで止まってしまっている

サスガにネタが苦しいと言うコトなのだろうか・・・だとしたら悲しいが、いつかまた続きを発表してもらいたいと切に願っているベル

 

作者の大崎の元職は書店員

コレは読んでいるコチラ側としても、ナンとも夢と希望をもたらせてくれる

特に「いつか私も・・・」と夢抱いている方には、大きな支えであり目標となるのではないだろうかキラキラ