月村了衛 「白日」(角川文庫)
老舗大手の千日出版の教育部門で課長を務める秋吉は、梶原局長の元、『引きこもり・不登校』対策を重視した新しい学校の形態の設立の為、進学ゼミやIT系企業ら他業種とも連携し、プロジェクトを推進しており、契約もほぼまとまり形がハッキリと見え始めていた
所が、局長の中3の長男が廃ビルの屋上から転落しするという事故が発生ッ
事件とも事故とも、自殺とも判別がつかずプロジェクトは一時中止となる
騒動と動揺は、自社内だけでなく関係各所にも広がり、遂には自殺ではとの噂が広がり、収集が付かなくなる事態に・・・
秋吉は、個人的にも息子の幹夫君との繋がりもあり、独自に調査を始めるが、会社上層部や人事課長で同期の【ゲシュタポ】の異名を取る飴家が露骨に介入してくる
進退窮まった会社の倫理に翻弄される秋吉が選んだ選択とはッ
会社組織の歯車として、一生懸命に生きるミドルエイジを描いた企業ミステリ
月村の作品は、ソレ程数多く読んでいる訳ではないが(通算コレが3作目)、コレまで描いてきたジャンルとは変わって、ごく普通の会社員が巻き込まれた騒動についての作品で、企業モノでありミステリの風味を含んだ、ある意味「ごく普通の」エンターテインメントとなっている
幾ら大手で老舗とは言え、昨今の出版不況は深刻で今作内でもソレは同じで、主人公の秋吉は新しい形態の学校設立の為、社の本筋からは離れて・外されて、出向の様な形でプロジェクトを進めている
その為、今後のサラリーマン人生に於いて決してしくじる訳にはいかないのだ
更に現在中1の娘は、過去に壮絶なイジメに遭い体調を悪化させたコトがある
ソノ窮地を救ってくれたのが、上司でプロジェクトの主導者である梶原局長の息子である幹夫という存在で、彼こそが絶望の淵に沈む秋吉一家に光を照らしてくれたのだ
そんな彼が謎の急死をしたことで、物語は始まり進行していく
頓挫するプロジェクト・一向に埒が明かない死の真相・秘密警察よろしく社内に監視網を引く同期・不満を爆発させ反抗する部下達・・・
悩みは尽きない中間管理職の生態と思考が描かれており、コノ辺りの心情はよく分かる方は大勢いるのではないだろうか
個人的にはVolが少なく、300pチョッとと短い作品で、も少し秋吉の心情や周りの部下・上層部たちの右往左往・朝令暮改・蝙蝠っぷりを「嫌味」に書いた方が盛り上がったと思うのだが・・・
ミステリとしての要素も充分だったし、Edのカタルシスもあり、短いながらも堪能出来た作品だった
高杉良 「広報室沈黙す」(講談社文庫・上下)
損保業界の名門である世紀火災海上保険は、突如予期せぬ嵐が吹きつけ、大揺れに揺れていた
経済誌「中央経済」に、一年前の大蔵省による監査に絡む社内での恥部が、デカデカと掲載されたからであったッ
『何の為の広報課だッ』上層部からの叱責と理不尽な圧力に、広報課長の木戸徹太郎の苦悩は深まるばかりだった
大手名門の誇りだけを胸に遮二無二に権力に執着し続ける会長・ソノ会長の懐刀を鮮明にしながらも排除できないモノか企む社長・そんな社長を無視し独断専行で奔る常務に、面子を潰されたと異常にプライドを気にして報復の監査を実施する専務などの上層部・・・
表に裏にと、対立抗争し続ける上層部に翻弄されるミドルの哀悼と戦いを描いた企業エンタメ
所謂「企業モノ・経済モノ」とくれば、コレはも~高杉の出番でしょう
って、まぁ~コレは単に私が高杉が好きなんで、仕方ないですワ だって本編でも関連でもUpし切れない程持っているんで、少しでも「消化」していかないと
で今作は、だいぶ古い初期の作品で初版は’87のバブル華やかなど真ん中の時期で、↑のは11刷目となる’93のモノ
確か、コノ頃に高杉に出会って一気にハマって次々と未読作を購入していた時期で、11刷目のコレも書店で新刊で購入している
コノ頃は私もサラリーマンで、シゾーカでは有名な某企業に勤めていた
とは言え、こんな激しい社内の競争社会は起きておらず、上司には確かに「コイツっ 大丈夫かぁ~ッ」というのもいたが、大抵は気のいい奴らばかりで同期とも部下とも良好な関係を気付いていた・と思う・・・
なので一応サラリーマンとはいえ、のんびりしたモノだった為、逆にこ~した熾烈で過酷な会社組織のレース模様が面白く思えたのだったし、ある意味「他人事・別世界のフィクション」の様な感じで楽しんでいた
高杉作品は・特にフィクションモノだと、登場する主人公はミドルエイジが多く、概して出木杉君的なキャラ多い
とは言え、エリートコースに乗った今風な言い方だと「イケオジ」でも失敗はするし、上司に怒られるし、ナンなら失脚させられそうになったり、家庭内不和が巻き起こったり(でも原因は自分の浮気だったりする)、と騒動が襲い掛かって来る
まぁ~現実で言えばこ~まではないだろうが、ソノ辺りはフィクションの・ドラマの世界と言うコトで、コレらがなければ盛り上がらないだろうしネ
描かれている世界は現実的ではあったが、あくまでコチラはエンタメの世界として楽しんでいた
そんな高杉との付き合い()も、既に30年を超えているし、ココで数年何作が読了しUpしているので、高杉もかなりの高齢となったがまだまだ続きそうだ