真山仁 「ロッキード」(文春文庫)
前総理大臣の逮捕→起訴→という衝撃の展開・結末を見せた、昭和大疑獄犯罪の「田中角栄とロッキード事件」とは一体何だったのだろうか そしてソノ本当の真相と
未だに記憶に残るロッキード・丸紅・コーチャン・児玉&小佐野・・・そして「今太閤」・「コンピュータ付きブルドーザー」と呼ばれた庶民宰相・田中角栄
ソレらの事象を、事の始まりから結末・そして複雑怪奇な途中経過や怪しげな人間関係と人物相関図(チャート)などの、あまたを網羅なく取材し、魑魅魍魎が集う政官財の闇に迫り、膨大な残された資料や関係者などを訪ね尋ね、令和の今に灯りを充てる
経済モノの人気作家である真山が、自身の威信を賭けて取り組んだ渾身のノンフィクション
私らの世代(ミドフィフ)以上の年齢の方なら、記憶にも記録にも残り続ける昭和の大事件の1つで、結局は被告である田中自身が鬼籍に入ったコトで控訴棄却となり、灰色のまま幕を閉じてしまっている
尤も、ソレ迄の一審二審共に有罪判決が出ているので、限りなく黒に近いグレーなのではあるが・・・
そ~した記憶を頼りに読み進めると、当時の・そして以後の検察捜査の杜撰さや「結論ありき」の見込みなどに驚かされる
確かに当時の世論は「田中=金に汚い」イメージが強く、そして実際にそ~した面は多いに否めなかったのも事実なのだが、今回の「ロッキード事件」に関しては、かなり冤罪の可能性が高い様に思われるのに驚かせられる
冷静に考えれば、田中が『たかが5億円ぽっち()』で、収賄に手を染める筈がなく、ましてはいくら総理とは言え『職務権限』に照らして言っても、検察の主張にはかなりの無理がある
また当時の「東京地検特捜部」の置かれた立場にも言及されており、勘考するとソノ無理を強引の押し通したかった理由もはっきりと分かってくるというモノだ
数々の流行語までも産み出した「ロッキード事件」というモノを、昭和という時代と共に再検証するにはピッタリの1冊で、600POverのVolながらあっさりと面白く読み切れた
清水一行 「砂防会館3F」(角川文庫)
東京都心の一等地にあるビル・砂防会館の3階にはアノ国会議員の事務所があった
尋常小学校卒の田舎の土建屋の大将を自認し、学齢も学閥もないが抜群の知能と行動力で以って田中角栄は、遂に総理大臣の地位にまで昇り詰めた
「今太閤」と持て囃されたのも束の間、オイルショックによる狂乱物価と自身の背後関係と金銭問題により追い詰められかけていた
そんな彼の起死回生の1手が「日中国交正常化」であった
そんな田中の個人ブレーンである並川亨は、洋の東西を問わずに世界中を駆け巡っていたが、知り合いのジャーナリストから香港に呼び出された
落ち合う筈のホテルで待っていた謎の美女から「滞在韓国人に注意を」との伝言を受け取った後、彼女は毒殺されてしまう
そして不幸にもソノ指摘は的中してしまい、更にはアノ疑獄事件の容疑者に据えられる
「ロッキード」・「金大中」2つの国際的事件の核心に迫る迫真のサスペンスドラマ
コレまた懐かしいWordが1つ ソレがタイトルの「砂防会館3F」
まぁ~田中角栄の事務所があったビルの名称で、収賄現場の1つともされてきた場所
ソコを題材にして、政財界モノには定評のある清水が仕上げた1冊
あくまでコレはノンフィクションなのだが、題材が題材だし、取材は念がいってるし、事実が所々含まれるので、読んでいたドコまでが本当なのかと惑わされてしまう
おまけにミステリも絡むし、サスペンスな展開をNon Stopだし、と、やはり流行売れっ子作家の筆はサスガと唸らせてくれる
また今作では「金大中事件」も絡ませてるトコがニクいネ
コノ闇深い事件についても、他の人が詳細に書いてる作品があるのでいつの日にか・とも思う
以前の記事で↓のを関連でUpした
父娘と・・・そしてオヤジと! | みかんjamのブログ (ameblo.jp)
田中の筆頭秘書を長年務めた早坂氏のエッセイで、当時は大臣であろうとも一介の秘書に過ぎない氏が叱り飛ばしたコトもあったという
そ~ゆ~点からも、真山のと併せて読むと興味が増すと思うし、出来れば↓の漫画も是非
だけど、人気がなかったのだし、古いので入手は難しいかもしれないが、今になって大人になってから読むと、非常に面白く興味を惹かれるのは間違いないと思う