紀田順一郎 「神保町の怪人」(創元推理文庫)

 

百貨店で「古書販売催事会」がそこかしこで開催される様になってきた昭和42年の春

詩集のコレクターである大沢の収集の極意は『殺意』であると聞かされ、実際に入札会場に彼が現れると、ナンのかのと言いつつ『借りパク』をし平然としている面の皮の厚さにたじろぐが、ある展覧会で稀覯本が突如会場から消え失せてしまい・・・魂が抜ける

古書交換会を主催する歌人にして収集家でもある高野に、二度三度と目の前で煮え湯を飲まされたが、遂に探求本を手中にしたかと思えた瞬間、まるで煙の様に消えてしまったッムキー

近頃はインターネットの普及により、実店舗よりも目録商売の方が隆盛の兆しを見せているが、そんな中大手古書店からと数百点モノ書籍が盗難されるという事件が起き、近くの大学の図書室で司書が殺害され、やはりと本が盗まれる事件が発生した

<古本探偵>の異名を持つ・古書愛好家の喜多の名推理が冴える、短編3作を収録した古本ミステリ本

 

 

書籍化されたのは’20なのだが、長~い年月を経て遂に初文庫化されたのが今作

作者の紀田は純作家ではなく、基本は研究の人で近現代文学をメインにしているのだが、ミステリもその範疇の中で、こ~したミステリを書いてもいるし、収集・研究・分類などをしている「歩く文学目録」という御仁

なので純粋なエンタメ作は少なく、↓でUpするのを含めて僅か数作しかない

そしてソレは全て「古本」が題材となっていて、ソコには古本を愛する・収集する・そして偏愛する人々が登場する為、私の様なトーシロで半端ではあってもマニアックな嗜好を持つ者には堪らない魅力があるのだ花火

今作では、時代が移り変わっていて高度成長期の頃のお話しもあれば、最近(とは言ってもギリ20世紀なのだが)のネットを活用しネタとなっているエピも入っている

また中で語られる稀覯本・珍本・希少本自体が面白いし興味を惹かれる

私如きだとほぼほぼ知らない作家・作品・ジャンルなのだが、ソレでもただの「本好き」としては、ソレだけでも嬉しいのだにやり

そして・・・知ってるノが出てきたりしたら、ナンか私でも「イッパシ」の様な気になったりするのもまた・ネ

この様なエンタメ作に登場する<古本探偵・喜多>は、そのまま作者の紀田の分身で、作中に登場するキャラも殆どにモデルがいるとのコトで、収集→研究→分類と言った固い仕事の中で、きっとコレらの作品は楽しみながら気楽に描いていたのだろうと思うとナンか微笑ましくなってくる目がハート

も~年齢が年齢なので新しいのは期待できないかもしれないが・・・でもせめても~1冊は出して欲しいなぁ~爆笑

 

 

「古書収集十番勝負」(創元推理文庫)

徳永直「赤い恋以上」・湯浅良幸「日本史阿波年表」・福永武彦「ある青春」・鈴木正「狩野享吉の研究」・川上澄夫「ゑげれすいろは静物」・「有明堂対訳評解漢文業書」・菊池寛「真珠夫人」・川口松太郎「鶴八鶴次郎」・夢野久作「白髪小僧」・海野十三「十八時の音楽浴」の計10点

跡継ぎはこの中からタイムリミットまでにより多く集めた者とするッびっくり

神保町に居を構える村雲書店の店主は余命いくばくもなく、娘二人のそれぞれの婿にこの様な『遺言』を与えた

熾烈を極める獲得競争に、更にココに古書マニアの大学教授とそのライバルの塾経営者までが加わった為、一層事態は複雑化し紛糾し、虚々実々のバトルが開始された波

当代きっての<古本探偵>が、ソノ持てる知識を総動員したビブリオバトルミステリ

 

さて・・・皆さんは↑に掲げた10作品をご存知でしょうかはてなマーク

私は・・・・・・作品名は1つも知りません! 名前を知ってはいる作家が何人か?? で、名前は知ってるけど、その作者の作品で持っているのは0ですガーン

まぁ~そもそもが稀覯本を集めろ・という遺言・というか指令に血眼になってくんずほぐれつのレースを繰り広げるというストーリーなので、お題の本が近所の均一台に並んでる・なんてコトはあり得ない訳で、ソコが展開を面白くさせてくれる擽りポイント音譜

まぁ~菊池の「真珠夫人」ならばベストセラーだったし、まだソレ程時間も経っていないのでアレかもだけど・・・他のときたら、そりゃ~も~ネ

だからこそ『書痴』達の阿鼻叫喚の様が描かれ、読み手のコチラ側としては面白くなり、そして・・・自分の身に置き換えて一抹の不安というか恐怖を覚える訳ですウインク

 

今年の3月にBryan AdamsのLiveに参戦した翌日、神保町を巡りましたが・・・

いやぁ~ホンと実店舗が減ってしまっている 原因は多分皆さんが思っている通りのようで、悲しく寂しいのだがコレも致し方ないのかもしれない

今までに通っていた店も次々と閉店しており、ウインドー(イヤ、棚かウインク)ショッピングすら出来なくなってきてるのは・・・ショボーン