呉勝浩 「おれたちの歌をうたえ」(文春文庫)

 

元警視庁刑事の河辺に掛かってきた見覚えのない電話番号は、20年以上も音信不通だった幼馴染の佐登志からのものだった

正確には、死亡した彼から頼まれた地元のチンピラからだったのだが・・・

遺されたのは、暗号めいた謎の詩と隠された金塊コイン

忌まわしき記憶と体験から逃れる様に、郷里の長野を飛び出して封印していた過去が今、甦り、河辺は悩み苦しみながらも帰郷し、佐登志の伝言を追い始めるが・・・DASH!

幼馴染の5人組と過ごした土地の、想いでと悔恨は、呪縛の様に今も彼らを苦しめていたメラメラ

そして追われ逃げる様にして都会へと飛び出した彼らの人生とは一体ナンだったのか

かつての悲劇の真相と、ソレに捉われた者達の哀しみの人生を描く大河ミステリ波

 

 

↑のカバージャケからして、とても重く苦しそうな印象を与えるが、実はその通りの内容で、無邪気にはしゃいでいたひょんなコトから子供たちが背負ってしまった悲しみと、長じて大人になってからもソノ宿命というか運命から逃れられずに泥濘を歩き続けなければならなかった、地元では「栄光の5人組」と呼ばれた幼馴染らの人生をミステリとして仕上げている

その為、作中では40年以上もの年月を章ごとに行き来して振り返りつつ進み、遂にソノ結末を迎えるまでを描いた、非常に重いテーマを背負った作品となっている

が、ミステリとしての仕掛け・仕上げもキッチリとされており、彼らを宿痾へと押しやった悲しい事件と、残された遺言の謎もしっかりと解き明かされる

作者の呉は乱歩賞出身者で、受賞後もコンスタントにハイレベルな作品を刊行し続けていおり、近年の受賞者の中では成功者の一人と言ってもイイ存在乙女のトキメキ

受賞作からしてもそ~なのだが重めのテーマの作品が多く、普通の(ウインク)ミステリも書いているのだが、作者の心の奥底にあるのは、こういった鉛の様な沈殿した暗さだと思う

決してこのような重めのストーリーは一般受けはしないのだが、ソレこそが作者の本領なのだと思われるし、今後もある種ジャンル・というかテーマを平行しながら書き続けていくのではないだろうか 

そしてソレはとても今後も楽しみだ・と言うコトだ拍手

 

 

土屋隆夫 「人形が死んだ夜」(光文社文庫)

小学生ながら天才的な絵の才能を持つ俊は、ソノ日も独り石仏をスケッチする為に出かけるが、轢き逃げされ死亡してしまう

姪の紗江は、最期を看取ってくれた目撃者の話しを訊く内に疑惑を募らせてゆく・・・

そして榊祭りの夜、群衆の中で惨劇が起きたッガーン

「名もなき探偵」を描く、ミステリに美学を追求した著者の、最期の・最高の到達点とも言える傑作長編推理小説キラキラ

 

土屋と言えば、戦後間もない昭和20年代にデビューして以降、寡作ながらも精力的に魅力的な推理小説を書き続けてきた職人的な作家

例えば同時期の清張の様に、派手に取り上げられるコトは少なかったものの、けっしてクオリティでは劣らなかった方で、特に代表作となる『千草検事シリーズ』は、やはりコレまた派手なトリックとか仕掛けではなかったが、コチラを唸らせ満足させる作品郡だった

そんな土屋が最晩年の88歳(!)になってから、ある決意の元に書き始めた作品で、90歳(!!)なってから完成させ、書き下ろされたのがコチラ

今作も他の作品と同様に郷里の長野が舞台となっており、そんな地元の山・空・雲・川・雪などの空気感が感じられるし、モチロン作中のトリックも充分に堪能できる

↑のは光文社が乱歩や清張・鮎川など共に全集・又はコレクションとして復刻させたシリーズのモノ

特に鮎川やこの土屋などを知らなかった私としては、とても重宝している刊行本の1つお願い

 

今回は呉については彼の作品は(多分)全部Upしてしまったので関連を悩んだのだが・・・

同じ『長野モノ』というコトで土屋にした

また土屋の他の・特に千草検事シリーズは、他の関連と言うコトでUpしているので、最も長野しているコチラの作品をChoiceしたお願い