白蔵盈太 「義経じゃないほうの源平合戦」(文芸社文庫)

 

蒲御厨(浜松)で、ひっそりと・でもソレなりに充足した生活を送っていた範頼だったが、兄で一族の領袖である頼朝の挙兵・驕れる平家との富士川の合戦と、周囲は騒がしくなってきた

ホンとは領地を護り、のんびりと過ごしていきたかったのだが、「源氏の(正統な)血筋」がソレを許してくれないのだッ泣くうさぎ

慌てて「いざ鎌倉ッDASH!」と馳せ参じたが、待っていたのは怒れる兄さまの形相と、無茶な沙汰だった

しかし弟の義経の助け舟もあり、最悪の事態は逃れたモノの・・・何故か打倒平家の総大将に任命されてしまうびっくり

知略の天才・頼朝と合戦の天才・義経に挟まれた凡人の、苦悩と悲哀をユーモラスに描いた歴史エンタメ

 

 

私らの頃は「1192作ろう鎌倉幕府」と習ったモノだが、現在では研究が進み年代が少し前倒しされているという・・・その前の『源平合戦』の物語なのだが、スポットライトが当てられているのは6男の源範頼

一応、教科書に記述もされてはいるものの、ナンなら傍流の木曾(源)義仲の方が有名だったりする、チョッと残念な悲しい武将汗うさぎ

確かに彼がメインの物語も日記もなく記憶にも乏しい人物なのだが、ソレも仕方なく源平=義経と言うイメージだし、その後の悲劇も相まってアレだけのヒーローが真横にいたら光らないのも頷けるのだが、そもそも本人自体が特筆すべきモノがないというのが全て

無茶なノルマを課す陰湿な部長と、でも何故か非凡な着眼点と発想で以って軽々と達成してしまう係長に挟まれた、予算管理や残務処理に汲々とする課長と言うのがコノ範頼ゲッソリ

つまり・・・1000年近く経っても人間の所業ってそんなに変わらないのネ・と言うのが面白いし、余り知られていない武将の本音は姿を改めて知られたのは非常に為になった

この白蔵は「お初」な作家だが、目の付け所がとても面白くて興味を惹かれる存在となったキラキラ

 

 

高木彬光 「成吉思汗の秘密」(角川文庫)

旅行中の推理作家・松下研三の元に入った妻からの電話は「神津恭介・入院す」という衝撃の内容だった病院

病状自体は急性盲腸炎と言うコトで大事には至らなかったが、ソコは「推理機械」とも称される名探偵のコト、術後は病床のベッドの上で暇を持てますコトとなった・・・

ソコで二人は、悲運の天才武将・源義経が兄・頼朝の追撃を躱し蝦夷地へと落ち延び、遂には蒙古の英雄・ジンギスカンとなった・という一人二役の大トリック『義経渡海伝説』の謎に取り組むコトになった波

コノ二人に共通する事柄は果たして単なる偶然なのかはてなマーク

あくまで資料のみから導き出されるベッドディテクティブの傑作第1弾乙女のトキメキ

 

というコトで、↑ではあくまで「脇役」となった義経の物語だが、余りにも有名な「義経=ジンギスカン説」を、≪日本三大名探偵 註1≫の1人である神津恭介が、入院中の徒然に謎を解くという趣向

本家にはのジョセフィン・ティの「時の娘」と言う作品があり、モチロン今作はソレの「本歌取り」となっている

あくまでコレは「エンターテインメント作品」で学術書ではないので、細かい些事なコトは置いといて、可能性を探るという感じで、実現度・実証するという意味合いでは決してない

ソノ辺りを理解せずにムキになって反論するのは野暮の極みってトコでしょう

決して荒唐無稽なファンタジーではなく、可能性を秘めたロマンを楽しむという姿勢で楽しんでもらいたいラブラブ

事実、好評を受けてシリーズ化されている *註2

 

 

 

*註1 明智小五郎・金田一耕助の二人は揺るがないが、3人目は神津恭介以外が選ばれるコトもある

*註2 シリーズの2作目は、個人的に「大傑作」と思っている