初めての路上教習が真っ暗の夜なんて聞いていませんでした。
しかも、山形の夜です。
山形の皆さんごめんなさい、山形の夜は暗いです!!
なぜか時間割がそうなっていたからとしか言いようがないのですが、生まれて初めて路上に出たのは、仮免試験を受けたその日最後のコマでした。もうとっぷり日は暮れています。
路上でエンストしたらどうしよう。
どこかにぶつかるのでは。
という不安でいっぱいの私の隣に座ってくれたのは、若くて自信たっぷりの女の先生。
「大丈夫ですよ」
「もっとスピード出しましょう」
「ギアチェンジしましょう」
「アクセル踏みましょう」
「どんどんいきましょう」
真っ暗の、街灯の少ない道を60キロ出して走るのは恐ろしすぎました。
この時初めて3速以上を使いました。(教習所内は狭いから2速までしか出したことがない)
ギアがうまく入らず走りながらニュートラルになったり(怖)、
信号待ちで発進しようとして、何でもないところでエンストしました(これは卒業まで結構あった)。
どこへ向かっているのか、どれだけ走ったのか、わかりません。
数秒前に言われた「次、右折です」が覚えられなくて、何度も聞き返します。
ウインカーをつけて交差点に入ったのに曲がるのを忘れ、直進しようとします。
教習が終わった時、私の手は震えていました。
宿舎に帰ってもしばらく動悸がしていました。
暗い。速い。
見えない。気がする。
こわい!
これまで37年間、歩行者しかやったことがなかったので知りませんでしたが、
歩行者って暗いんです。
心根の問題ではありません。物理的に暗いんです。何度「歩行者に電気がついてればいいのに」って思ったことか。
さらに根本的な問題なのですが、運転席から見た風景って、運転に慣れればどうってことないんでしょうけど、これまでの私の動物的な感覚からすると、ものすごく、見える部分が小さくて、まるで穴から外を覗きながら、高速で移動しているみたいなんです。
窓だって小さいし、窓枠の部分や、ルームミラーが邪魔で外が見えないし!
ボンネットが長いから目の前も見えないし!後ろなんか、振り返っても全然見えないし。
(今更苦情)
そんなこともあって、いつのまにか、ハンドルを手で握るというよりは、身体でハンドルを抱えて、身を乗り出してきょろきょろするようになりました。これ。これですよ。運転席に座った時にみんなが当たり前にする動作。これの感覚が、やっと分かったんです。(←演劇の人)
さらにマニュアル車だと、どうしても発進停止で必ずクラッチを使うので、その時にハンドルを身体ごと持つようにすると、安定感が出るような気がしてきました。
やっぱり「ハンドルを握っているフリ」っていうのはどこまでいっても「フリ」であって、目的が「フリ」にあるわけだから自然にはならないんです。運転している人は、運転姿勢をとることが目的ではなくて、できるだけ安全にクルマという機械を操ることが目的なわけだから。
話は逸れましたが、仮免試験と初路上教習という長い長い一日が終わった時には、まるで別の人間になったような感覚がありました。
この日、9日ぶりにお酒を飲みました(笑)
(つづく)