TAIREN | 元祖!ジェイク鈴木回想録

元祖!ジェイク鈴木回想録

私の記憶や記録とともに〝あの頃〟にレイドバックしてみませんか?

 
 
 正式名称はたぶん、多摩美術大学学友会体育連合会とか何とかっちゅうんだろうけど、その機能や目的にもっとも相応しい名称は、多摩美術大学学友会芸術祭終夜営業自治警備隊だろう。

 少なくても、私が高校3年生の時に下見に出掛けた1979年から、在学していた1981~1985年はもちろん、OBバンドとして最後に屋外中央ステージに上がった1993年までの計15年間で15回の芸術祭では、最終日の前日から最終日にかけて〝オールナイト・ロック・フェスティヴァル〟が催行されていた。

 それは現役のプロ・ミュージシャンを呼んで『ぴあ』に情報を掲載して、〝チケットぴあ〟でチケットを販売して一般の観客を呼ぶ学友会主催のイヴェントで、憶えている限りのメイン・アクトは1979年のCREATION、1980年と81年のRC SUCCESSION・・、子供ばんど、SHEENA & THE ROCKETS、ARB、ザ・ロッカーズ、PLASTICS辺りも毎年のように来てくれていたよーな・・。
トリは毎年毎年まあJohnny、Lewis & CharだかPINK CROUDで、出番は毎年毎年まあ大体午前3時頃だから毎年毎年まあ多くても15人くらいの観客しか〝起きて〟いなくて、それもまた毎年毎年Charが「こんだけしかいないのかよ-、まあ、いっか。」なんて云いながら演奏を始めていたもんだった。(笑)

 だが、その実現には地元、八王子警察との〝約束〟があったことを当時の一般学生は元より、その自治警備隊に参加していた連中でさえ案外、知らないまま現在に至っているのが歯痒くて仕方がない。

 芸術祭の最終日は大抵日曜日なんで、オールナイトは大抵土曜日の晩に開催される。
八王子警察の管轄区域には国道16号があって、土曜日の晩となりゃあ当時はまだAlley CatsだとかRoute 16だとかSpecterだとかが全盛期だったんだからね。
美術大学の学園祭なんぞにまで手が廻るはずもナイ・・。
それ故の自治警備っちゅう、如何にも自発的な意志を尊ぶ美術なんちゅう学問を志す学生に相応しい快挙であり、体連たあ、それを対外的に具現化していた組織なのだ。

 ふだんの放課後に何かスポーツに興じていたり、スポーツはタテマエで実態は単なる合コン・クラブに過ぎなかったとしても、ンなこたあどーだっていーの。
また、RC SUCCESSIONや子供ばんどやSHEENA & THE ROCKETSやJohnny、Lewis & CharだかPINK CROUDに興味がなくてもあっても、ンなことも関係ねーの。
要は、年に1度、全学が一致団結して〝オールナイト・ロック・フェスティヴァル〟を開催する!
 ンなことが実現出来ていた美術大学は多摩美術大学だけだったんだぜ?

 1~2回生の時に何度か私もその最前線に突っ立っている。

 八王子方面からだったら、国道16号の御殿山交差点を左折して校舎の正門まで約1kmほどの公道上に確か200m間隔で1人ずつ・・、全部で4~5人の1~2回生が歩哨として立つんだけど、拳闘部員だった私はそのもっとも大学から離れた最前線・・、つまり国道16号にもっとも近い真っ暗闇にただ1人。
暴走族の皆様に何事もなく通り過ぎて戴ければ、手にしている懐中電灯で「行っちゃいましたあ」のサインを隣り・・、っちゅうても200mくらい先の歩哨に送る。
そうそう!その隣り・・、っちゅうても200mくらい先に現在、広告デザイン界で大活躍している川口 清勝君が突っ立っていたこともあったけど、やつはラグビー部員だったから2番目で、拳闘部員は常に最前線。
 拳闘部の先輩達もやっぱし、その1年前、2年前に最前線。

「ヤラれたら必ず俺らがヤリ返してやるからよ。」
「あのー・・、それじゃあヤクザの鉄砲玉・・、或いは暴走族の特攻隊じゃあ?」
「そーだよ、誰にも出来ないことをやれるのが拳闘部!」

 私がヤラれたら、隣り・・、っちゅうても200mくらい先の川口君がその隣り・・、っちゅうても200mくらい先のやつに懐中電灯で報せてくれて、その次のやつはそのまた次のやつに・・、で、大学正門から警備本部に伝わって救援部隊が到着する頃にはたぶん、私は既にボッコボコなんでねーの?(笑)

「そのために普段から鍛えておくんだろ。」

 拳闘部は学内で唯一の〝体育会系〟で、毎年5~6月には渋谷の岸記念体育館で開催されていた関東大学ボクシング・リーグ(・・だったかな?)にも出場していた。

 そんな危険な任務なんだから、大学の敷地内に帰還した際には拳闘部や他の体連各部の先輩、OBは元より、文連や一般学生の皆様からも「ご苦労様!」とか「ありがとう!」とか「まあ飲んでってくれよ!」みたいな、もったいないくらいの歓待を受けまくる。
その頃はまだ体連が身体を張っている・・、うんにゃ、全学が一致団結して芸術祭を遂行出来ている喜びが全学に浸透していて、私もまた、その一員だったことが何よりも嬉しかったもんだった。

 ところが、それから僅か数年後・・、たぶん外敵からの脅威が薄れてきたからなんだろう。
自治警備体制はそのままだったけど、特に大きなモメ事もなかったもんだから、体制そのものでさえ軽く観られるようになってきてしまった。
無論、予期せぬ災禍に直面していたり、地元警察との約束、さらに他の皆んなと同じように楽しめなかったこともまったく変わっていなかったのに・・、

「何で、体連の連中に酒を振る舞わなきゃいけねーんだよ?」

 ボッコボコにしちゃっていい?(笑)
皆んなが皆んな、当たり前のように楽しく酒を飲んでいる最中にも国道16号の手前には誰か体連の後輩・・、うんにゃ、学友が1人で突っ立っているんだぜ?
 ンなことも思いやれねーやつなんざ人間じゃねー!

 情けねーことに、現在はオールナイトは開催されていないらしい・・、さもありなん。


※文中敬称入り

★次号予告:2011年11月11日(金)午前00:00〝を目標〟に・・、おおおおおっ!
 トリプル・ダブル・エースを記念して〝あの話し〟をリメイクさせて頂きやしょう・・。
 お楽しみに!